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秘境・祖谷の地域問題の解決策!? 〈フォレストアドベンチャー・祖谷〉がオープン

  • 2017年9月15日
  • コロカル
祖谷の自然と戯れる、新たな観光スポット誕生

日本有数の激流、吉野川の上流に位置する徳島県三好市の祖谷(いや)地区。昨今、祖谷への外国人観光客は2014年から1万人ずつ増えているという。シラクチカズラでつくったかずら橋が有名だが、四国一の名峰、剣山や世界的に有名なラフティングの聖地、吉野川もある。日本らしい原風景の残る秘境を求めて国内外から多くの観光客がやってくる、それが現在の祖谷の姿だ。

吉野川の渓流で行われるラフティング。今秋には世界大会も行われる。(写真提供:馬場秀司さん)

アウトドア好きが高じて吉野川に魅了され、この地に移住をした馬場秀司さんは、祖谷でラフティング会社〈ゴーゴーアドベンチャー〉を営んでいる。クオリティの高いフィールド、そして安全性を求めて世界中からゲストがやってくるため、山城地区に彼らを受け入れるゲストハウス〈モモンガビレッジ〉までつくってしまった。それだけでは飽き足らず、祖谷の自然を山から谷まで遊び尽くす自然共生型アウトドアパーク〈フォレストアドベンチャー〉を誘致、この夏、7月29日にオープンさせたのだ。三好市山間部の魅力を知り尽くす馬場さんが始めた施設とのこと、ここでしかできないようなおもしろい体験ができるに違いない。

ちなみに祖谷は、徳島空港、高知空港、高松空港からのいずれからも車で1時間半ほどの移動でアクセスできるという非常にアクセスがよい場所だ。〈フォレストアドベンチャー・祖谷〉はミュシュラングリーンガイド2つ星で紹介されている祖谷街道(県道32号線)沿い、祖谷ふれあい公園内にあった。

まずは、大きなログハウスにある案内所で受付をし、トレーニングを受けたスタッフに安全器具を装着してもらう。スリル満点のコースだけに安全第一。山の向こうの手前に祖谷川を渡る橋がある。

森の中にあるアスレチックコースは5つ。すべてのコースを回って、速い人でおよそ2時間かかる。スケールや難易度も含め、いったいどんなものかわからないまま祖谷川を渡ってフィールドに向かうのは、ミステリーツアーに参加する気分だ。傾斜のある深い谷ならではの自然の地形を生かした本格的なアスレチックコースは四国では初めてだとか。期待に胸は高まる!

祖谷川向こうの山の中は秘密基地のようになっていた。木と木を渡す間にあるプラットフォームと呼ばれる足場は、高いところで約15メートルの高さにある。こ、こわい!

すべてのコースでハーネスといわれる安全ベルトを装着するので、ご安心を。ハーネスは、足を踏み外しても落下しないように守ってくれる命綱のようなもの。

まずは体に装着した安全器具とハーネスの使い方、急な傾斜地を降りたときの降り方などを教わる。安全器具はあくまでも補助。あとは自分の体と気持ちの勝負ということか。まずは木の上にあるプラットフォームを綱渡りしながら往来し、高さに慣れていく。すべてのプラットフォーム同士を強度のあるロープで結んでいるので安心してコースを進んでいくことができる。

ここでの最大の見せ場は、長さ365メートルの祖谷川をロープで結んだだけのジップラインだ。川面からの高さは約60メートル。時速は最大で20キロも出る。スタッフの合図で次々と滑り降りていく人たちのあとに筆者も続くつもりだったが、直前で下を向いてしまったため高さに恐怖心が出てしまった。5分ほど飛び降りられず、しどろもどろ。プールの飛び込み台で躊躇する人の心境をこのとき初めて理解できた気がした。心配してレスキューに来てくれたスタッフのアドバイスで、ロープとハーネスに身を任せると恐怖心がやわらいだ。プラットフォームから離れてすぐに味わう、渓谷を吹き抜ける風の爽快感と浮遊感。エメラルドグリーンの川と渓谷のパノラマへと飛び込んだのは30秒ちょっとだったが、いっとき空を飛ぶ鳥のような気持ちになった。

アドベンチャーワールドを誘致した理由とオープンまで

移住してからラフティング会社とゲストハウスを経営している馬場さんは、冬は林業の仕事をやっていた。ここではひとつの仕事だけではなく、いろんな仕事をする必要がある。「3年前までは冬は毎日のように山に入っていました。間伐という木を伐り倒す仕事をしていたんですけど、いつも伐り倒した森林がもったいないと思っていましたね。山に入っているうちにツリーイングという木登りも始めて山遊びが楽しくなって。そんなとき、ゲストハウスのフランス人スタッフに、フランスには山で遊べる場所があるんだぞと教えてもらったんです。それがきっかけで何かできないかと調べ始め、フォレストアドベンチャーを知りました」

母体は1997年にフランス・アヌシー郊外でアルタス社が始めたアウトドアパークの〈La foret de l’aventure(ラ・フォレッ・ドゥ・ラヴォンチュール)〉。冒険の森と名付けられた自然共生型アウトドアパークは日本のパシフィックネットワーク社と業務提携を結び、日本でもそのノウハウを生かして展開されている。

いざ、山を遊ぶ施設をつくろうにも、土地を持っているわけでもない移住者の馬場さんには高いハードルだった。誘致から事業化までの道のりのなかで、馬場さんは用地を確保するのにとても苦労をしたという。「まず、土地の所有者を探すのが大変でした。近所に所有者がいなかったので地元の人に聞き込みをし、京都や徳島市内などに出かけてやっと探し当てて連絡をとり、そこから交渉が始まりました。そのあたりは、これまでやってきた事業の経験を生かして、周囲に配慮しながら慎重に進めました」土地を使って仕事を始めるには、地元の方にも許可をもらわなくてはいけない。そのあたりは周囲が協力的だったことが幸いした。

ラフティング、ゲストハウスともに、働く人が定着した流れもあり、馬場さんはフォレストアドベンチャーに集中できた。「夏で1年の半分以上の収益をあげるラフティング事業は、それだけでは天候などに左右され、リスクがあります。事業で雇用を生み、働く人の安定収入にもつながるものになればさらに山間部にも住みやすくなります。また、四季を通して自然を体感できる祖谷に、夏だけではなくほかの季節にも足を運んでもらいたいという思いがありました」結果、ふれあい公園内の事業とすることで河川の占有許可もクリアした。河川の上にジップラインを渡すのには公的な許可がいるのだ。3年半の時を経て、オープンにこぎつけた馬場さん。ラフティングの会社を10年以上やってきただけあり、スタッフのトレーニングなど万全の態勢で臨んでいる。

ふと、パーク内の高いスギ林の強度が気になった。しっかりとロープで固定されて結ばれているとはいえ、折れたりしないのだろうか?「1プラットフォームあたり3名までと決まりを決めています。また、設計に関しては、専門家に強度計算書をつくって内容を考えました。地形に合わせて木を利用するなど安全性を考えて設計されているので、強度は問題ありません」馬場さんは自信を持って答えた。また、ロープの上を滑らせるハーネスはしっかりと固定されているので外れることはない。高所作業や検査、チェックは日本にまだ検査機関がないのでフランスから専門家が派遣された。土の上には25トンのウッドチップが敷き詰められ、雨が降っても泥まみれにならないよう配慮されていた。何よりも、歩くのが心地いい。

これから、天候も安定し、体を動かして遊ぶのに最高の季節を迎える。この秋は、初めてラフティングの世界選手権が開催されるため世界中からいろんな人がやってくる。まるでそれに合わせるかのようにオープンのタイミングが叶った。「ここの一番の魅力は、自然の豊かさ。夏は碧色の透明度の高い川が気持ちよく、秋から冬にかけては紅葉の季節を迎えます。美しい祖谷の自然を体感してもらえたらうれしいですね」自然と寄り添いながら営みを重ねてきた馬場さんの新しいチャレンジは、限界集落の消滅が課題となっている祖谷を含めた三好市山間部に光をもたらすのだろうか。いま、馬場さんの周囲には、アウトドアで生業を志す若者が集まってきている。祖谷の自然を愛する人たちが、生活ができるようにと馬場さんは環境を整えていく。三好市もお試し住居の実施や、休廃校の貸し出しなどでバックアップをし、働く人をハード面でも支援していく構えだ。結果的に、働く人の充足感は、観光客にもサービスや安全性としてフィードバックされていくだろう。

information

フォレストアドベンチャー・祖谷

住所:徳島県三好市西祖谷山村尾井ノ内379

営業期間:通年(積雪の際は休み)

営業時間:9:00〜15:00

料金:大人(18歳以上)4000円 小人(10〜17歳)3000円

Web:http://fa-iya.foret-aventure.jp/

information

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writer profile

Chizuru Asahina

朝比奈千鶴

あさひな・ちづる●トラベルライター。“暮らしの延長線の旅”をテーマに、食の生産地、ハーブ、おいしい民宿、エコツーリズム、コミュニティなどを多角的に取材。ふだんの暮らしに新しい扉が開くような、わくわくする場所や事柄に出会う旅のかたちに興味があります。 『Holistic Travel』

photographer profile

Tetsuka Tsurusaki

津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。東京での仕事を続けながら、移住先探しの旅に出る日々。自身のコロカルでの連載『暮らしを考える旅 わが家の移住について』『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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