キャンプは「自然に対するStewardship」を高める活動だと言われます。わかりにくい表現ですが、ごく簡単に言うと「地球に住む者として自然を大切にしたいと思う責任感」といったことになるでしょう。自然の中での活動を通じて、自然の雄大さや心地よさを感じ、それをほかのキャンパーと分かちあうことで、このような気持ちが芽生えるということです。
分かちあいを促進する道具として、キャンプでは「お話」が使われることがあります。たとえばこんなお話です。
・ある国に望んだものがなんでも出てくるガラスでできたタンスがあった
・王様はタンスを国民に開放し、好きなものを取り出してよいと言っていた
・ただし、何かを取り出したら、代わりに何かを入れるようにと指示していた
・ある日、泥棒がタンスを盗み出し、金や宝石などを取り出して積み上げた
・泥棒は欲張りすぎて、金や宝石の山から転げ落ちて死んでしまった
・その勢いでタンスも壊れてしまったが、王様は修理させた
・そのタンスは今も存在しており、「地球」と呼ばれている
地球はガラスのようにもろく、欲張って資源を無駄遣いしたら大変なことになってしまう。あらすじだけを読むと、鼻白んでしまいます。
しかし、このお話を実際に聞いたときの印象はまったく異なりました。話をしてくれたのは、カナダにあるCamp Tawingoのジョギーさん、30年以上もキャンプに携わるプロ中のプロです。30人ほどの講習会参加者とゲームを楽しみ、ぐぐっとお互いの距離感が近づいてからこの話を聞くと、「ふむふむ、そうだね」と会場全体が同意しているように感じられました。もしこのお話をキャンプ中に、月明かりの下や、川のせせらぎが聞こえる場所で聞いたとしたら、印象はもっと異なるでしょう。
キャンプというのは、「百聞は一見にしかず」そのものの活動なのだと思います。日常とは違う、少し不便な自然の中で共同生活をしていると、ちょっと大変だけれども、「これでもなんとか暮らしていけるんだな」と気づきます。そんなときにこのお話を聞けば、資源を無駄遣いしない暮らしについて、真剣に考えてみる気分になれそうです。