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キャンプの恵み

Vol.43 Barretstownが与えてくれる勇気

  • 2013年10月24日


古い邸宅の建物が、クラフトルームやボランティアの宿舎に改装されています。
 10月なかばの2週間、私はアメリカ、アイルランド、オーストラリアと大きな移動をしていました。今回はアイルランドでの出来事を書こうと思います。

 滞在中の一日、ダブリン市街から車で1時間ほどのところにあるキャンプ場を訪ねました。アイルランドは「エメラルドの島」とも呼ばれますが、その名の通り緑に輝くなだらかな牧草地の先に、Barretstownはありました。ここは重篤な病気の子どもたちを主な対象としたSeriousFun Children’s Networkのキャンプ場のひとつです。また、子どもを失った家族などを対象としたグリーフキャンプも盛んに行っています。

 そこはため息の出るような場所でした。かつて大地主の邸宅だった敷地は見渡す限りに広がり、遠くで羊や馬が草を食んでいます。かつての馬小屋は、医療センターや体調を崩した子どもが寝泊まりする部屋などに改築されています。まっさらの建物は、事務所とウォールクライミングの設備を備えた体育館です。土地はほとんどタダのような金額で借りているとのことでしたが、建物と牧草地のメンテナンスだけでも大変な労力です。

 フルタイムのスタッフは約30人。キャンプが行われるのは3月から11月の9ヶ月間ですが、どんなリクエストにも応えてくれるシェフも“フルタイム”なのだそうです。さらに、医療スタッフも含めて多くのボランティアも必要ですから、人にかかわる経費だけでも膨大な金額になります。

 けれど、子どもたちのキャンプ参加費は無料です。つまり運営費は寄付などの形で集めなければなりません。だから、スタッフのうちの9人はファンドレイジングの専門家なのだそうです。


ヨーロッパ各国からボランティアの医師や看護師が参加します。キャンプだから、病院っぽさは極力排除。
 このような運営形態は、アメリカであれば取り立ててめずらしいものではありません。しかし、ヨーロッパでは「キャンプは子どもの成長に欠かせない」という認識はないに等しく、小児がんなどの重い病気の子どもたちのキャンプというアイデアに理解を得るのは大変な作業だったと、容易に想像できます。しかし、20年の年月をかけて、これだけのものがつくられたのです。

 日本でも、キャンプの有用性に対する理解はまだまだ十分とは言えません。その上、ファンドレイジングはよちよち歩きの状態です。けれど、ヨーロッパの小さな国のBarretstownという偉大な達成を見て、少し勇気をもらった気がします。


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