富士山という山は不思議な存在です。よく晴れた朝、多摩川を越える通勤電車の窓から頭の部分がすこ〜し見えただけで、「アッ、フジサンダ!!」と小さく驚いている自分に気づき、笑ってしまいます。だから富士山を間近で見ると、一日に何度だって「アッ、フジサンダ!!」と思うのです。
9月半ばの三連休に、富士山の西麓にある朝霧高原でキャンプをしました。いっしょにキャンプをしたのは、東日本大震災で大切な人を亡くした子どもたち17人。台湾キャンプに続く、2回目のグリーフキャンプです。
やわらかな光を浴びて、朝のつどいをしました。
新富士駅を降りてバスに乗り換えたとき、富士山は完全に雲に覆われていました。「富士山、どこ〜?」と子どもたちに何度も聞かれるのですが、「ん〜、あの辺かなぁ」とぼんやりした返事しかできません。
しかし、その声が届いたのか(なにしろ、うるさいのです)、車が富士山に近づくにつれて雲が頂上に向かって動いていき、やがて全体が見えてきました。
西日本で育った私にとって、富士山は身近な山ではありません。東北で育った子どもたちにとっても、同じです。そして、同じように「アッ、フジサンダ!!」と声を上げて喜んでいる。なんだかうれしくて、ニヤリとしてしまいます。
富士山の向こうから太陽が昇ってきた!
キャンプ中は曇りがちで、ザーザーと大雨になったこともありましたが、富士山は何度か姿を見せてくれました。
あるグループは富士山の後ろから太陽が昇るのを見ようと見晴らしのいい場所に出かけたけれど、早すぎて出直したのだそうです。「どんだけ見たいねん!」とつっこみのひとつも入れたくなりますが、2度目に行ったときには、太陽がちょうど山頂に乗っかるように輝くのを見ることができました。
それは心がスーッとするような光景です。富士山に向かって、緑のにおいのする空気をいっぱい吸い込むと、なんだかうれしくなってきます。このうれしさが、自然の中で行うキャンプがグリーフケアにふさわしい理由のひとつです。今回から何度か、このグリーフキャンプの様子を紹介します。
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