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キャンプの恵み

Vol.16 「存在しないもの」とともに生きること El Tesoro de la Vida (4)

  • 2012年9月27日
このキャンプでは、亡くなった人のことを丁寧に思い出すことが大切にされます。
このキャンプでは、亡くなった人のことを丁寧に思い出すことが大切にされます。

 人間には「存在するもの」だけでなく、「存在しないもの」との関わりが不可欠です。今はもう存在しないものを丁寧に思い出したり、まだ存在しない将来の自分の姿を思い描いたりすることなしに生きていくのは難しいものです。El Tesoro de la Vidaは、この「存在しないもの」との関わり方を身につけるためのキャンプと言えるかもしれません。

 こう書くと小難しく思えるでしょうが、基本はとても楽しいキャンプです。ただ1日に1時間だけ、プロのセラピストの進行で亡くなった人のことや、自分の気持ち、自分の将来像などを話す時間を持つのですが、それは子どもたちにとって楽な作業ではありません。それでも、気持ちを表現し、その上で亡くなった人に対して「I love you」と言うことに意味があります。

 このキャンプに参加していると、こうした作業をする場として、キャンプほどふさわしい場所はないと思えます。


 子どもたちが話してくれる内容は、話す相手を間違えると、いじめなどを誘発しかねない重いものです。ですから、子どもたち自身が「ここなら話していい」と思える環境が不可欠です。この安心安全な環境を作る場面として、キャンプの共同生活は最良のところです。「守られている」と感じられる場所で、寝食をともにし、楽しい時間をともに過ごすことで、安心して気持ちを吐露できる雰囲気を育てます。

 そして、思いを言葉にして悲しくなったり、重苦しい気持ちになることがあっても、すぐに楽しい活動が待っています。この繰り返しが、思い出すことの怖さを少しずつ弱めてくれます。これは子どもたちが悲しい思い出を抱えながら生き延びていくために、とても大切なプロセスです。


セラピストはセッションの時間以外も、キャンパーの様子を見て、必要なサポートをしています。
セラピストはセッションの時間以外も、キャンパーの様子を見て、必要なサポートをしています。

 こうした効果を担保しているのが、セラピストのすごさです。自らもキャンプを楽しみ、キャンプにおけるグループの意義を十分に理解し、キャンプの力を信頼している。このようなセラピストが6人も参加しています。日本ではグループセラピーが一般的とは言えないので、現時点では、ひとつのキャンプにこれだけの人材を集めるのは難しいでしょう。しかし、大きな喪失を経験した子どもたちにとってのこのキャンプの意味を考えたとき、チャレンジする意義は大きいと考えています。


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