前回の「Vol.10 マナビノスイッチ」を書いた数日後、Vol.4〜7で紹介した台湾でのグリーフキャンプに参加したTくんの学校の先生からお電話をいただきました。どうしてもTくんが参加したキャンプのお礼を言いたかったとのことでした。その先生は、何度も何度も、時には少し涙声になりながら、彼がキャンプに参加したことが本当によかったと言ってくださいました。
先生の話によると、Tくんはキャンプから帰ってくるとまるで人が変わったように明るく、元気になり、成績もグンとアップしたのだそうです。Tくんは、いっしょにキャンプに参加していた小学校2〜3年生の女の子たちに対して、「(同じように両親を亡くした)彼女たちは元気いっぱいにしているのに、自分はなにをしているんだろうと思った」そうで、これをきっかけに自分を変えるマナビノスイッチを入れました。
前回紹介した『You Never Know』という詩の通り、彼女たちは彼女らなりに楽しんでいただけで、自分たちが高校生のお兄さんの「ロールモデル(お手本)」になっていようとは、夢にも思わないでしょう。でも、勇気を出して日常の枠を超えてみる(Tくんの場合は、このグリーフキャンプへの参加)と、思いがけない形でロールモデルに出会えるものです。
学校の成績は直接的な幸せの指標にはなりませんが、成績が上がるというのはよい兆しだと思います。それは学ぶ意欲を反映していて、その「もっと新しいことを知りたい」という意欲は、「明日も生きていたい」という欲求にほかならないからです。マナビノスイッチが入って、「お、これはおもしろいぞ。もっと知りたいな」ということが増えていけば、同時に明日を生きる生命のサイクルも回り続けます。
Tくんには、次のキャンプにもぜひ来てほしいなと思います。台湾のキャンプでどんな心の動きが生じていたのか話を聞きたいですし、キャンプの中でまた何か新しい発見をしてもらえるとうれしいなと思います。