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ランチビュッフェで客は“元が取れない”カラクリ…「元を取りたい」が大きな損を生む

  • 2019年6月12日
  • Business Journal

 長期休暇にあちこちに出かける人も多いでしょうが、旅行とまではいかなくても一家で外食に出かけるという人も多いと思います。そんな外食のなかでも、ランチビュッフェというのは多くの人に人気があります。その理由は、

(1)決まった料金で好きなだけ食べられるからお得感がある
(2)自分の好きな物が好きなだけ食べられる
(3)料理の種類がたくさんあるので楽しめる

といったところにあるのでしょう。確かに目の前にごちそうが並んでいると、あれもこれも食べたくなるという気持ちはよくわかります。たとえば料金が2,000円だったら、絶対2,000円以上食べて元をとってやろうという気持ちにもなりがちです。ところがランチビュッフェではまずほとんどの場合、元を取ることはできません。その理由はどうしてなのでしょうか。

 いくら食べ放題とはいっても、相手も商売ですから当然、自分のところが損になるような価格設定にはしていないはずです。たとえば、もっともシンプルでわかりやすいのは「ドリンクバー」です。通常、ファミリーレストランなどではドリンクバーはだいたい200円〜300円ぐらいの価格ですが、原価はせいぜい5円〜15円程度だそうです。これで元を取ろうと思ったら20杯も30杯も飲まなければならないわけで、これはどう考えても無理です。ランチビュッフェの場合は、これに加えていくら大食いの人がたくさん食べても絶対に元は取れない価格構造になっているのです。

 そもそも飲食店のコスト構造は固定費と変動費から成り立っています。店を開けたことで、お客が1人もこなくてもかかるのが固定費(家賃や光熱費、人件費等)、来た人数分に比例してかかるのが変動費(食材費等)です。したがってお客が1人も来なければ固定費分がまるまる赤字です。お客が1人来れば(1人当たりの料金−変動費)だけ赤字が減ります。したがって、たくさん来れば来るほど儲けは多くなります。

●普通の定食以上に儲かるような構造

 たとえば、あるレストランで普通の定食の値段が1,000円だとします。この場合の変動費、すなわち食材費が200円だとすると、このお店では1人のお客が来るたびに800円の粗利益が出ます。もしこのお店の固定費が月間30万円だとすると、1カ月で375人のお客が来ればトントンとなり、それ以上増えるごとに利益になります(800円×375人=30万円)。

 一方、このお店が価格を2,000円とした食べ放題ランチビュッフェをやったとすれば、どうなるでしょう。仮に来たお客が3人前食べたとしても変動費は200円×3=600円ですから、このお客から上がる利益は1,400円となります。つまりお客が絶対元を取ってやろうと思って大食漢の人ばかりで行って、3人前ずつ食べたとしても、店にとっては普通の定食以上に儲かるような構造になっているということなのです。

 また、別のコスト要因も考えてみましょう。料理というものは1人前つくろうが、100人前つくろうが、投入する食材の量が増えるだけで手間が100倍かかるわけではありません。それにビュッフェだと、料理を盛り付けて、一人ひとりの客席まで運ばなくてもいいわけですから、多くの人を配置しなくてもいい分、人件費は減るでしょう。さらに、一品料理の場合、いったいどれくらい注文が入るのかわからないのに対して、ビュッフェスタイルの場合は、店側で用意していればいいわけですから、食材自体の仕入れコストも安くすることができるでしょう。

 それに食べ盛りの中学生や高校生ならともかく、ある程度の年齢の大人であれば、食べ過ぎは何も体に良いことがありません。元を取ってやろうと張り切ったために食べ過ぎてその日一日気分が悪かったり、場合によっては次の日まで胃がもたれてしまったりすることはよくあることです。

●サンクコスト

 このように“元をとりたい”という気持ちが往々にしてさらに大きな損を呼び込んでしまうということには、注意しなければなりません。経済学ではこのようにすでに使ってしまっていて戻ってこないお金のことを埋没費用(=サンクコスト)といい、この場合、ランチビュッフェの料金がそれにあたります。サンクコストにこだわり過ぎると損をしてしまうということになりがちです。本来、サンクコストはもう戻ってこないお金ですから、考えてもしょうがないのです。考えるのであればランチビュッフェを選ぶかどうかという時点で考えなければなりません。

 とはいえ、外食に行く時に損得だけで考える必要はありません。自分の食べたいものが満足の行くように食べられるのが楽しいということなら、ランチビュッフェで何も問題はありません。ただ、なんとか元を取りたいと思って無理する必要はないということです。大切なことは、すでに使ってしまったお金のことはできるだけ考えないようにすることです。常にゼロクリアで考え、「ここからどういう判断と行動をすれば最も得になるのか」ということを考えるべきでしょう。
(文=大江英樹/経済コラムニスト)

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