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東芝、1兆円追加損失リスク浮上…シャープ、鴻海が中国企業に“転売”観測

  • 2019年1月31日
  • Business Journal

 東芝は、2018年11月9日〜30日の期間に、東京証券取引所の立会外取引と通常の取引で総額6849万株、2576億円分の自己株式を取得。さらに12月、1カ月間で1076万4000株、368億円分を追加取得した。

 18年11月9日〜19年11月8日の間に最大2億6000万株、7000億円を上限に自社株を購入する計画。毎月末時点での取得状況を公表する。保有していた6600万株強の自己株を18年12月25日に消却した。発行済株式総数の10.1%に相当する。自社株買いした株式が再び市場に再放出される懸念を払拭するのが狙いで、今後も消却を続ける方針だ。

 取得した自己株式は12月末時点で、金額ベースで2944億円となり、7000億円の枠のうち57.9%が未消化となっている。

 17年末に6000億円の大型増資を引き受けた海外ファンドなどが、自社株買いに応募すると想定していたが、「株価はさらに上昇する」とみているファンド勢は応募しなかった。海外ファンドは、株価をもっと引き上げるよう要求する。東芝の経営陣は株高を続ける施策が強く求められている。

 自社株買いによって、うるさ型のファンドに退出してもらう腹づもりだったが、そう甘くはなかった。これからも、「物言う株主」との虚々実々の駆け引きが続くことになる。

●ファンドの圧力に屈した東芝

 そもそも東芝が自社株買いに踏み切ったのは、海外投資ファンドの圧力に屈したからだ。東芝は、米国の原発子会社ウエスチングハウスと同グループの再生手続きによる損失などで、17年3月期に5529億円の債務超過に陥った。債務超過を解消するため17年12月、6000億円の第三者割当増資を行った。

 第三者割当増資を引き受けた海外のヘッジファンドや物言う株主は、揃って巨額の株主還元を求めた。東芝は「東芝メモリ売却で危機を切り抜けた後に、株主に還元する」と公約した。

 だが、18年4月に就任した三井住友銀行元副頭取の車谷暢昭・会長兼最高経営責任者(CEO)は「M&A(合併・買収)が重要」と発言。これにファンド側が態度を硬化させ、株主総会で「車谷CEOの取締役選任議案に反対票を投じる」と東芝経営陣に圧力をかけた。

 香港を拠点とする投資ファンド、アーガイル・ストリート・マネジメント・リミテッド(キン・チャン最高投資責任者)は5月28日付で車谷氏に書簡を送り、株主総会前に「1兆1000億円の自己株式買い戻しの実施方針を示すよう」求めた。

 それを受けて東芝は6月13日午前に、7000億円の自社株買いを発表した。一度は債務超過に陥った会社が、ここまで巨額の自社株買いを行うのは極めて異例だ。株主総会で車谷氏の選任が否決されることを恐れた東芝は物言う株主の圧力に屈し、自社株買いを実施することにしたと噂された。

 東芝メモリの売却で1兆5000億円弱の手元資金が増えた。このうちの4分の3近くをファンド側に戻せとファンド側は迫った。だが1兆1000億円も吸い上げられたら、なんのために東芝メモリを売却したのかわからなくなる。「構造改革費用などを考慮して7000億円に決めた」と理解を求めた。

 東芝は最大1兆円の損失といわれた負の遺産、米国テキサス州の液化天然ガス(LNG)プロジェクト、フリーポートを中国の民間ガス大手、ENNグループ(新奥集団)に売却することで合意した。一時金をENNに支払い、米国子会社の株式を譲渡する。930億円の出血で抑えられたと東芝は説明したが、これで一件落着とはいきそうにはない。

 対米外国投資委員会(CFIUS)の承認が必要だからだ。米中貿易戦争の真っただ中にあって、CFIUSが中国企業への売却を認める可能性は極めて低い。

 なぜなら、LIXILグループがイタリアの建材子会社を中国企業に売却しようとしたところ、CFIUSが承認しなかった例があるからだ。ましてや、フリーポートは米国での事業だ。CFIUSが承認する可能性は低い。そうなると、東芝は1兆円の損失が見込まれる事業を抱え続けることになる。

 外国人株主比率は72.32%(18年3月期末)に上り、圧倒的なパワーを持つ。東芝経営陣は戦々恐々だ。今後も物言う株主に翻弄されることになるとみられる。そのため「車谷会長では、物言う株主に対処できない」(東芝の元役員)として、社内で交代論が浮上しているという。

●鴻海精密工業がシャープを手放す?

 シャープは、三重県・亀山工場で製造していた米アップルのiPhone用センサー部品を、親会社である鴻海精密工業(ホンハイ)の中国拠点に移した。これが3000人規模の期間工の雇い止めという社会問題を引き起こすことになった。

 かつて亀山工場でつくった液晶テレビは、「世界の亀山ブランド」として一時代を築いた。 2016年、ホンハイ傘下入り後、減少が続いていた売り上げの反転を目指して、スマートフォン向けのカメラ部品やセンサー部品といった電子デバイスに注力した。

 亀山工場では18年夏までに3000人以上減らした。この労働者は、国内で就業資格を持つ外国人で、日系人が大半を占めていた。

 外国人材受け入れ議論が国会で進むなかで、亀山工場での外国人従業員の大量の雇い止めが発覚。期間工が調整弁として使われていた実態を改めて見せつけた。

 ここにきて、「ホンハイがシャープを売却するのではないか」との観測が高まりつつある。

 ホンハイはパソコン、スマートフォン、ゲーム機などをEMS(受託生産)する世界最大のメーカーで、アップルを中心に世界に多数の顧客を持っている。顧客企業がシャープとライバルとなるケースも少なくない。ホンハイは顧客となるメーカーの数を増やし、受託製品の幅を広げたい。中国の有力企業にシャープを売却するのがベストという読みだ。

 一時期、中国ハイセンス・グループ(海信集団)を最有力候補と取り沙汰されていた。だが、米中貿易戦争の激化を受けてシナリオ通りにはいかなくなった。シャープが台湾から中国企業に転売され、再度“漂流”することになるのだろうか。
(文=編集部)

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