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経済低迷の北海道に地価上昇率が全国1位の街…ニセコ、世界的リゾート地の内実

  • 2018年10月25日
  • Business Journal

 人口減、経済低迷が続く北海道に、1カ所だけ突出した地域がある。

 それは札幌でも小樽でもない。ニセコ連峰の麓に広がる「ニセコエリア」である。国土交通省が9月18日に発表した、平成30年度の基準地価で、北海道内の商業地は27年ぶりにプラスに転じた。外国人観光客の増加や新幹線の札幌延伸に向けた札幌市内の土地需要の高まりが背景にある。

 そうしたなか、商業地の上昇率が45.2%と全国トップになったのが、ニセコエリアの一角、倶知安町北1条西2丁目。倶知安町は住宅地でも樺山地区が13.3%上昇し、全国トップの上昇率となった。

 相続税や贈与税の算定基準となる路線価(平成30年1月1日時点=国税庁)でも、倶知安町山田の道道ニセコ高原比羅夫線通りが前年比88.2%の急上昇で4年連続の上昇率トップを記録している(7月発表)。

 基準地価の全国平均は、全用途が前年比0.1%プラスで27年ぶりの上昇、商業地は1.1%の上昇、住宅地は0.3%の下落だった。倶知安町の地価上昇は、まさにバブルとしか言いようがない。

●超高級コンドミニアムが立ち並ぶ、世界が注目するリゾートタウン

 いまや、世界が注目するスキーリゾート地となったニセコエリア。ニセコアンヌプリ(標高1308メートル)をはじめとするニセコ連峰を取り巻く5つの町(岩内町、共和町、倶知安町、ニセコ町、蘭越町)からなる山岳丘陵地帯で、リゾート地の中心となっているのは倶知安町とニセコ町だ。

 8月下旬、開発が進むこのリゾート地を訪れた。ニセコ駅の建物はスイスのロッジを彷彿させる“お瀟洒”なつくり。ホームからはアンヌプリの美しい山容を望むことができる。このあたりは、観光客の姿は少ない。駅前の観光ガイド板に紹介されていた「ダチョウ牧場」(第二有島だちょう牧場)に向かう。クルマで15分ほどで、羊蹄山を望む牧場に牛の一群とともにダチョウの群れが放し飼いにされていた。100円で餌を販売しており、つかの間の触れ合いを楽しめる。アジア系の観光客カップルが羊蹄山とダチョウをバックに記念撮影していた。

 リゾートの中心地区倶知安町のひらふ(比羅夫)エリアは、もはや外国のような街並みだ。ひらふ十字街からスキー場「ニセコグラン・ヒラフ」へと続く、ひらふ坂一帯にはリゾートホテルや超高級コンドミニアムが立ち並ぶ。建設中の建物もある。

 この界隈は冬になると外国人の街となる。コンドミニアムに住んでいる人も、スノーリゾートを楽しむ客も、ホテルやカフェで働く従業員も外国人だらけだという。通りに面した飲食店やショップの看板や表示は英語が多い。道の駅においてあったフリー雑誌も、内容の大半が英語だった。外国のリゾートに来たのかと錯覚してしまうほどだ。

 夏場は冬に比べて観光客、滞在客が少なく、マウンテンバイクを楽しんだり、犬を連れて散歩している欧米系の観光客・滞在客を見かけた程度だった。もっとも、日中なので外国人観光客らは尻別川でのラフティングやSUP(スタンドアップパドル)、ニセコの山々でのトレッキングを楽しんでいたのかもしれない。夏場はコンドミニアムに1カ月程度長期滞在する日本人も増えているそうだ。エリアマップには「ゴルフ・温泉・登山など充実した高原ライフを堪能!」とうたった長期滞在プランが掲載されていた。2LDKで15泊19万8450円〜、30泊26万8200円〜となっている。

●外国人富裕層と労働者が混在する街

 ニセコが外国人に注目され始めたのは、2000年以降のことだ。「9.11」米国同時多発テロを境に、北米のスキーリゾートを訪れていたオーストラリア人が、ニセコの良質なパウダースノーを求めて訪れるようになってからだ。その後、リゾート地の開発が進み、最近はオーストラリア人が所有していた別荘やコンドミニアムを、中国人やアジア系の富裕層が投資目的に高値で購入し、バブルが発生しているのである。

 長期滞在する外国人は住民登録の必要があるため、倶知安町の外国人人口は年々増え続けている。平成30年1月の町の人口1万6492人のうち、外国人の登録者は1648人と全人口の1割(8月の登録者数は629人)。平成15年1月はわずか60人だったから15年間で27倍に膨張した。

 一方、外国人宿泊者数は平成13年度の1012人が、平成28年度には11万6179人へと115倍に激増している。「外国人の街」とのイメージが強いのも当然だ。

 滞在、宿泊の外国人が増え続けた結果、昭和40年代の1万9000人台をピークに減り続けてきた町の人口は、ここ10年は1万5000人台で横ばい。大幅な人口減を食い止めている。財政面も平成27年度予算で20億6600万円だった町税が、平成29年度は23億5500万円へと増加している。外国人の増加、外国資本の投下は町に恩恵をもたらしているわけだ。

 しかし、過剰開発による環境への影響、増え続ける外国人居住者、観光客との共存など、課題も多い。ニセコひらふ地域の有志が昨年、「一般社団法人ニセコひらふエリアマネジメント」を設立し、外国資本との協業など新たな街づくりのための取り組みを進めており、担当者はこう説明する。

「活況を呈する街がより良く発展するよう、外国人と日本人がより一層共生できるよう、幅広い課題を扱っていく団体として活動をしてまいります。ゴミの分別処分の徹底、防犯灯の維持管理など日常の課題解決にあたる一方、観光や街づくりにおける提言、そして将来の新幹線延伸などに向けた街づくりの将来像の作成など、活動の幅を広げて行きたいと考えております」

 一方、町は来年11月からは2%の宿泊税を導入し、渋滞対策や交通網の整備に充てるという。

 外資や外国人居住者、観光客との共生・共存は可能なのか。北の高級リゾート地の変貌と進化を注視したい。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

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