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盗難や災害にあったら、払う税金を安くできる!

  • 2018年10月11日
  • Business Journal

 今回は雑損控除について、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が解説していきます。

亮子「そういえば先日、知人から『昔、電車で寝ている間にバッグを盗まれた』という話を聞いたのだけど、盗難って実は身近にありうる話だよね」

啓子「はい。そして盗難にあった場合には雑損控除によって税金を軽減できる可能性があります」

亮子「実際には、なかなか冷静に『税金を軽減しよう』という気になれないのだろうけれど、そうした制度を利用して、少しでも負担が軽くなるといいね」

啓子「知っておいて損はありませんから、整理してみます!」

●もしも500万円、盗難にあったら……

 不幸にも空き巣やひったくりなどの盗難にあった場合に、被害者が負担する税金を軽減する方法があります。それが「雑損控除」という制度で所得控除の一種です。お金が盗まれたら、所得が減ることになるので、その部分は税金負担を軽減するために調整しましょうという趣旨です。所得金額から盗難による損失額を差し引くことで負担する税金が軽減されます。

 それでは、どれぐらい税金負担が軽減されるのでしょうか?

 たとえば年収450万円の会社員が現金500万円の盗難にあった場合で試算をすると、所得税・住民税あわせて約30万円の税金が軽減されます。具体的には次のように計算をしていきます。

・雑損控除を適用しない場合の税金(概算)

総所得金額等:年収450万円 − 給与所得控除144万円 = 306万円
所得控除:社会保険料67.5万円 + 基礎控除38万円 = 105.5万円
所得:総所得金額等306万円 − 所得控除105.5万円=200.5万円
税金:所得200.5万円× 税率20% −控除額9.75万円 =30.35万円

※雑損控除以外の所得控除は、社会保険料(収入×15%で計算)、基礎控除38万円のみを想定しています。個々の事情によって計算結果が異なりますのでご留意ください。
※所得税率10%、住民税率10%あわせて20%で計算をしています。
※説明を簡略化するため、住民税は厳密な計算方法と異なります。

・雑損控除を適用

雑損控除:1.と2.の大きいほう
1.損失金額500万円 − 総所得金額等306万円×10%=469.4万円
2.災害関連支出(原状回復のための費用など)の金額0円 − 5万円=△5万円

今回は災害関連支出がないので2.はマイナスとなり、1.を採用することになる。

所得控除:105.5万円(社会保険料+基礎控除)+469.4万円(雑損控除)=574.9万円
所得:総所得金額等306万円 − 所得控除574.9万円 =△268.9万円
税金:所得がマイナスのため0円

 雑損控除を適用すると所得がマイナスになるので、雑損控除を適用しない場合に負担するはずだった約30万円の税金負担がなくなります。また、所得金額から差し引きしきれない損失がある場合には、その金額を翌年以後3年間繰り越すことができます。つまり、損失を使い切るまで今年を含め4回、雑損控除を適用し、税金の負担を軽減することができるということです。

 なお、このケースは災害関連支出がない場合の計算結果です。震災や台風、雪の被害などによって災害関連の支出がある場合には計算方法が異なります。災害時の雑損控除については次回詳しく説明します。

●振込詐欺には適用できない

 そもそも雑損控除とはどのようなときに適用できる制度なのでしょうか。

 雑損控除は災害・盗難・横領という大きく3つの発生原因によって被害を受け、損失を被った場合に適用することができます。振込詐欺のような詐欺や脅迫といった発生原因による損失は、雑損控除の適用対象となりませんので注意してください。また、災害についてなんでもかんでも損害として認められているというわけではありません。適用対象となる災害を整理すると以下のようになります。

 雑損控除を受けるためには、確定申告が必要です。確定申告書にはその年の給料や支払った社会保険料などの金額を会社から交付される源泉徴収票をもとに記入し、雑損控除の欄に控除額を記入して最終的な税金を計算します。

 また、確定申告書を提出する際には、源泉徴収票、災害を受けた資産の明細書、災害関連支出の領収書、災害・盗難・横領にあったことの証明書(消防署や警察署から交付されたもの)などを一緒に提出する必要があります。

 なお、確定申告をして雑損控除を受けていれば、住民税も自動的に軽減される仕組みとなっています。

●「損害」と「損失」の額はこう決まる

 先ほどの例は損失500万円として計算しましたが、実は被害にあったあらゆるものが対象となるわけではなく、損失の範囲はあらかじめ決められています。

 まず、雑損控除の対象となる資産の範囲は、原則として被害にあった納税者本人もしくは生計をともにする総所得38万円以下の家族が持っている「生活に必要と認められる資産」に限られます。そのため、趣味娯楽で保有する別荘などの不動産は雑損控除の対象とはなりません。また、ひとつ30万円を超える貴金属や絵画、骨董品といったものも認められていません。

 次に損害の金額ですが、「現金を500万円盗まれた」ということであればその被害にあった金額である500万円が損害金額となります。しかしながら、住宅や家財などの資産については計算が少し複雑です。住宅、家財などの資産については、(1)損害発生直前の資産の時価、または、(2)資産の簿価(取得してから通常使用して価値が減ったあとの金額)のいずれかを選択し、損害発生直後の資産の時価と比較をして損害金額を計算します。

 たとえば(1)の時価を選択した場合、その資産の損害発生直前の時価が1000万円、損害発生直後の時価が600万円だとした場合、損害金額は400万円(1000万円−600万円)となります。

 そして、実際に税金を計算するための「損失」の金額は、「損失=損害金額+災害時に関連したやむを得ない支出の金額−保険金などにより補てんされる金額」と計算します。

 つまり、災害により損壊した住宅の修繕などで支出した金額も損失金額に加えることができますので、修繕にかかった費用の領収書などは捨てずに取っておきましょう。災害のやんだ日の翌日から1年以内に支払った原状回復費用や、損壊した自宅の除去費用などの費用も、災害関連支出として損失金額に含めることができます。

 一方、火災保険などに加入していて保険金による補てんがある場合には、損害金額からその保険金の額を差し引いて損失金額を計算しますので注意してください。

●あとからでもあきらめないで!

 盗難にあってから何年もたってしまった……。そんなときにも諦めないで申告について検討してみてください。確定申告は5年以内であれば遡ってすることができます。会社員の場合は年末調整で一度税金を計算して納めているので、税金を還付してもらうために確定申告をすることになります。盗難にあった年にはそれどころではなかったという場合でも、5年以内であれば確定申告が可能です。

亮子「こうした救済措置があるということ。あらためて勉強になりました」

啓子「実際に被害にあったら、確定申告どころじゃないかもしれないですけれど……」

亮子「5年以内に今回の話を思い出してもらえたら嬉しいですね」

啓子「はい。それから、災害の場合には、災害減免法による所得税の軽減免除という制度もあって、今回説明した雑損控除と有利な方を選択できます」

亮子「では、その点は次回に!」
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)

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