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東芝、頼みは「エレベーター事業のみ」の悲劇的現状…展望なき聖域なきコストカット

  • 2018年7月5日
  • Business Journal

 原子力発電と半導体メモリ――。かつて「総合電機の雄」と呼ばれた東芝を象徴したこの2事業だが、原発事業は東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故で頓挫し、半導体メモリ事業は経営危機により売却することになった。2017年12月の6000億円の第三者割当増資と半導体メモリ事業売却で財務体質が改善したものの、小粒な事業しか残っていないのが実情。国内中心の地味な電機メーカーへの転身が求められている。

「今後の事業の柱をうかがいたい」

 6月27日、東芝が幕張メッセ(千葉市美浜区)で開いた株主総会では、今後の成長戦略への質問が相次いだ。

 東芝の売上高は2007年度には8兆円をうかがおうとしていたが、2018年度予想は3兆6000億円と最盛期の半分以下にまで落ち込む。かつては歯牙にもかけなかった三菱電機の背中は遠くなり、下をみればNEC、シャープしかいない状況だ。

 東芝にとって悲劇的なのは、中核事業の不在だ。野球でいえば3番、4番、5番のクリーンアップがいない状況ともいえる。医療機器事業や半導体メモリ事業がない現在、収益性の高さで目立つのはエレベーター事業というありさまだ。

「エレベーター事業は堅実だが成長力は大きくなく、全社をけん引する力はない。2番打者に4番を打たせるようなもの」(証券アナリスト)

 53年ぶりに外部から経営トップに就いた三井住友銀行出身の車谷暢昭会長兼CEO(最高経営責任者)は、4月の就任前から「リカーリングビジネス」の実現を目標に掲げてきた。リカーリングビジネスとは、ハードの売り切りではなく、売った後も保守などのサービスやソフトを提供することで同じ顧客から継続的に収益をあげるモデルだ。日立製作所や独シーメンスなどもリカーリングビジネスの構築に取り組んでおり、車谷会長もこれらの動きを意識している。

 ただ、具体的にどのような事業でそれを実現するかは、まったくもって見えてこない。総会でも株主から突っ込まれていたが、「時間がかかる」と述べるのが精一杯だった。

●リカーリングビジネスは「時間がかかる」

 実際、総会に参加した株主は筆者の取材に「構造変革プランは年内に発表予定というので策定中なのはわかるが、あまりにも漠然とし過ぎている。もう少し中長期戦略を示してほしかった」とこぼした。

 車谷会長が構造変革で鼻息が荒かったのは、固定費の低減についてだったという。原価率の高さを課題とし、経費の削減などを聖域を設けないかたちで進める方針を示した。電機業界の関係者は語る。

「銀行マンの車谷さんは良くも悪くも実業には疎い。『電機村のカルロス・ゴーン』とも囁かれており、本人もまんざらでもないとか。大胆なコストカットを打ち出すだろうし、逆にいえば手持ちのカードはそれしかないのではないか」

 東芝社内では現在、事業部長と車谷会長が面談を重ね、構造変革プランの策定の真っただ中だ。幹部のみならず、工場などの従業員とも対話を進めるが、東芝社員は「現場重視といえば聞こえはよいが、現場の声を取り入れるというより一から勉強している状態で、各事業部は車谷会長を取り込もうと躍起になっているのが実情」と語る。

●「売上を追わない」ではなく「追えない」状況

 車谷会長は就任に際して、「東芝のグローバル企業への復帰」を使命としてあげていたが、その道程は見えてこない。おそらく本人も想像以上に難しいと感じているだろう。手っ取り早い成長策として、M&A(買収・合併)に色気を見せていた時期もあったが、大株主である海外ファンドを中心に「そんなカネがあるならば株主還元しろ」と反対論が根強く、すでに半導体メモリ事業の売却益から7000億円規模の自社株買いを決めている。手元にある事業はインフラ関連が中心で決して海外での競争力は高くなく、手詰まり感は否めない。

「インフラ関連事業でのリカーリングを目指したところで日立やシーメンスの周回遅れ」(証券アナリスト)

 コストカットで一時的に収益性が高まっても、一定の成長がなければ、縮小均衡を避けられない。車谷会長は「売上を追わない」と繰り返してきたが「売上を追えない」のが正しいところだろう。パソコンや半導体メモリで世界を席巻した栄光の残像を捨てさり、過去という理想と決別できるかが問われることになる。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)

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