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楽天の携帯電話参入は、勝算がまったく見当たらない…既存3社並み通信はほぼ不可能

  • 2018年4月29日
  • Business Journal

 昨年12月、楽天が携帯電話事業への新規参入を表明した。

 もともと楽天はMVNO(仮想移動体通信事業者)である「楽天モバイル」を運営しており、NTTドコモから回線を借りてサービスを提供していたが、今回は自前の回線を構築しようとしているのだ。これに成功すればNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクという大手3社に続く“第4のキャリア”となるわけで、世間の関心は高い。

 楽天は総務省が今年1月から2月にかけて募集していた携帯電話システム用周波数の追加割り当てに申し込み、4月6日に開かれた電波監理審議会にて1.7GHz帯の免許を獲得。2019年10月のサービス開始を目指し、いよいよ本格的に動き出すこととなった。

 総務省発表の資料によれば、楽天は今回のサービスを「現在のMVNO(=楽天モバイル)で提供中の料金プランで提供予定」とのこと。楽天モバイルは、いわゆる“格安スマホ”として支持されており、プラン次第では月額1980円(税抜、楽天会員の1年目料金)から使用可能だ。この料金がそのまま適用されるとなれば、大手3社を巻き込んだ価格競争に発展する可能性もある。

 携帯電話料金の引き下げを望むユーザーたちにとっては歓迎すべき流れが生まれそうだが、果たして楽天の挑戦は成功するのだろうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温氏に話を聞いた。

●“楽天経済圏”をもってしても携帯電話事業は前途多難

「楽天モバイルは現在、NTTドコモのネットワークを借りているため、他の格安スマホと差別化を図るのが難しい部分がありました。しかし、今回の新規参入によって独自のネットワークを整備すれば、今まで以上に多様な料金プランを用意できるようになるのです。

 また、楽天はネット通販の会員や、『楽天カード』のユーザーを大量に抱えています。ユーザーが楽天で買い物をし、楽天カードで支払うことで楽天ポイントを貯め、再び買い物をするという“楽天経済圏”が成り立っていますから、そこに携帯電話を組み合わせ、経済圏をさらに拡大しようというのが今回の狙いなのでしょう。楽天の携帯電話を使えばポイントが貯まり、そのポイントで料金を支払えるというのは、ユーザーにとって魅力的なはずです。

 とはいえ、そのようなメリットはすでに楽天モバイルで提供されていますので、新たに携帯電話事業を始めたからといって、ユーザーが加速度的に増えるのかどうかは怪しいところです」(石川氏)

 振り返ると、日本の携帯電話事業における新規参入は、2005年のイー・モバイル以来13年ぶりだ。それでも石川氏は、大手3社による寡占状態を楽天が崩すのは容易ではないと推察する。

「大手3社が、いきなり楽天の影響を受けることはないと思います。13年前にイー・モバイルが参入したときも第4のキャリアという立ち位置で、業界に価格競争を起こし、各社の料金プランが安くなるのではと期待されていました。しかしイー・モバイルは結局、他の3社に肩を並べるほどの成果を残せず、2013年にソフトバンクに買収されてしまったのです。

 イー・モバイルが存在した頃は、これから携帯電話やスマートフォンの産業が伸び、どんどんユーザーが増えてくるというタイミングでした。それにもかかわらず、イー・モバイルは会社として消滅する結果になりましたし、今では大手3社の競争も終わっているようなもの。今後、携帯電話市場が成長する見込みがあるかというとそうではなく、13年前と同様、楽天は苦戦を強いられるのではないでしょうか」(同)

 ほかにも、楽天の戦略を疑問視する意見は多い。楽天は2025年までの7年間に、6000億円の設備投資を計画しているそうだが、これは他のキャリアが1年間に費やす金額と大差ないのだ。他社の7分の1ともいえる低コストを、石川氏はどうとらえるのか。

「地図を示して『このエリアは電波をカバーしています』と見せるのは簡単かもしれませんが、それは地上に限った話。大手3社は今、地下鉄に乗っていても通信が途切れなかったり、離島や洞窟の中でも回線がつながったりするくらい、あちらこちらで電波を発しています。楽天がそこまで徹底しようとすれば、6000億円あっても全然足りないというのが私の考えです。

 また、サービス開始までの準備期間の短さも懸念材料。一番重要なのは基地局ネットワークの問題で、東京都内にはもう、アンテナを置ける場所がほとんど残っていません。楽天は東京電力グループと組み、その設備を利用すると言っていますが、それでカバーできるのは郊外だけです。都心部でのネットワーク構築にはまだ手がついていないでしょうし、この先の約1年半でビルのオーナーに交渉して、そこの屋上に基地局を建てるというのは、時間的に厳しいでしょう」(同)

●楽天が“安かろう悪かろう”に陥るリスクは高い?

 なお、先述した電波監理審議会では各キャリアに対し、周波数の割り当てに関する6つの条件が与えられたのだが、楽天にだけは4つの追加条件があった。

 そのうち1つは「他の既存事業者のネットワークを利用する場合においても、携帯電話事業者は自らネットワークを構築して事業展開を図るという原則に留意すること」であり、石川氏は次のように解説する。

「これは電波監理審議会が、『ひとまず電波の取得は認めるけれども、NTTドコモに甘えることなく、ちゃんと自分でネットワークをつくりなさい』と、楽天に釘を刺しているかたちですね。

 楽天が今回取得した1.7GHzという周波数帯は、世界的に見ると標準的ではあるものの、大手3社が持っている700〜900MHzの“プラチナバンド”と比較すれば、電波の浸透率で劣ります。一方、大手3社は東日本大震災を経験しており、有事の際に備えたノウハウを充分に蓄積していますが、楽天の場合にはそれが一切ありません。いざというとき本当に回線がつながるのか、楽天はユーザーの不安を払拭する必要があります。

 繰り返しになりますが、一般常識からしても、今から新しい基地局をつくっていくというのは相当難しいことなのです。しかも楽天は、大手3社よりも安い料金プランを提供しようとしているわけですから、それでサービスをうまく回せるのかどうか。日本人は携帯電話がどこでもサクサクつながる状況に慣れてしまっているので、いくら安くても回線が不安定ならば、ユーザーは他社から乗り換えてきてくれないでしょう」

 そんな楽天が携帯電話事業を軌道に乗せるためには、何が求められるのだろうか。

「楽天は、ある程度ネットワークを広げたうえで、じっくりとユーザーを増やしていくべきです。なぜなら、サービス開始直後は楽天の使えるエリアが限定されそうですし、最初からユーザーを一気に獲得しても、『ネットワークが狭いから』と、すぐに逃げられてしまいかねません。

 もっとも個人的な意見としては、6000億円の資金調達が可能なら、今の楽天モバイルをもっと強化すればいいのではないか、というのが正直なところではあります。低価格の携帯電話事業で攻めても、あまりお金を払いたくないユーザーばかり集まるため、のちのち低利益体質でビジネス的に苦しくなってくることは想像にかたくありません。率直に言って、どこに楽天の勝算があるのかわからないというのが、業界内の共通した認識ではないでしょうか」(同)

 今回の新規参入が見切り発車ではないことを楽天はどのように証明するつもりなのか、楽天社長・三木谷浩史氏には誰も予想しえない一発逆転の秘策があるのだろうか、その動向に注目していきたい。
(文=A4studio)

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