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「40代男、女性と店Aで昼食」渋谷100台AIカメラが物議、データを企業に提供

  • 2023年9月3日
  • Business Journal

渋谷100台AIカメラ設置プロジェクトの告知サイト(Intelligence DesignのHPより)

 7月に始動した、一般社団法人渋谷再開発協会などが参画する「渋谷100台AIカメラ設置プロジェクト」が議論を呼んでいる。東京・渋谷駅周辺に100台のエッジAIカメラを設置し、人流データの取得・解析結果を渋滞や混雑時の防犯における警備員配置の最適化、一般事業者のマーケティングなどに活用するという同プロジェクト。AIを「まちづくり」に活用するというものだが、公式サイト上に掲載されたデータ収集事例には、男性の顔写真とともに、

・40代/男性
・同席者有り(30代/女性)
・ブランドAを着用/所持
・休日12時より渋谷に銀座線で到着
・ヒカリエでランチ
・明治通りを通り、宮下パークへ低速で移動(ショッピング目的を想定)
・月3回目(前回:休日〇曜日)
・今年10回目の渋谷、ヒカリエ来店数〇回、前回店舗A・Bにて購入を実施

との記載。さらに「通年の行動データがリアルタイムで蓄積」とも書かれており、事実上の個人を特定できる情報の収集ではないかという指摘が続出。それを受けてか、8月31日〜9月1日までに公式サイト上から上記のデータ収集事例や、一覧表「100台のエッジAIカメラでわかる顧客像」上の「通年データ保有」という表記が削除されたため、その理由をめぐってさまざまな声が寄せられている。

 同プロジェクトは、「安全安心に暮らせるまちづくりや次世代交通計画」などに活かす目的で、AIカメラを用いてリアルタイムで利用者の人流データを取得するというもので、AI関連のプロダクト開発・販売を手掛けるIntelligence Design株式会社、一般社団法人渋谷未来デザイン、渋谷再開発協会が協力して推進。取得・解析した人流データは個人を特定できる情報を含まないかたちでオープンデータ化し、各協賛事業者に提供。具体的には以下のことが実現できるとしている。

・商業施設
 顧客の属性・移動情報に合わせたプロモーションの実施

・小売店
 人流データに合わせた呼び込みやオフラインキャンペーン最適化

・ゲーム会社
 渋谷広域でのイベントやキャンペーン

・広告会社
 デジタルサイネージやその他広告手法との連携

収集データの幅の広さ

 議論を呼んでいるのは、収集データの幅の広さだ。「100台のエッジAIカメラでわかる顧客像」として、

・人物検知(性別、年代、服装、持ち物、動作)
・物体検知
・滞留検知
・動線検知
・広域検知
・追跡検知
・位置情報取得
・データ提供

と説明しており、SNS上では以下のような声が続出する事態となっている。

<渋谷を歩くと勝手に各所のカメラで行動追跡されてプロフィール特定されてどこかの企業のマーケティングだのに使われるの?個人情報も何もあったもんじゃない>


<どこまで個人が特定されてしまうか、そうした情報をこちらでコントロール(情報の確認から破棄まで)できるかが大事だと思うんですが、これが実現したら自分たちの知らないところで継続的にトレースされて、しかもそれに気づかないという。さすがに怖すぎですよね>

<規約を読ませませずリスクも説明せず、ただ渋谷に来た人すべてにカメラを向けるとなると、全員が否応なくシステムに巻き込まれる。またカメラで取得した画像が、そのまま属性説明に使われるように見える。このままでは完全に個人情報法違反になる>

<ガッチリ個人識別して追跡してる>

<年齢性別くらいならその瞬間のスナップショットだけど、移動経路や回数は、個人を特定した上で、継続的に追跡してるってことよね…?それはもう個人特定ではないの…?>

<これ系のAI企業でデータ取得同意取らないって法的に許されるのか?(初めて見た)>

<事前同意とかオプトアウトとかそういうのすらなくて 店の購買データとかと紐づけられちゃうとあっという間に個人特定できちゃうね>

<パブリックな空間なら個人が識別できるように紐づけて収集保管するのって承諾なしでも現行法でOKなんだっけ?>

企業倫理的な問題

 IT企業役員はいう。

「JRのSuicaや各種ポイントサービスのように、取得した利用者データを個人を特定できないかたちに加工して外部へ提供することは、一般的なビジネスとして広く行われている。今回の渋谷プロジェクトの運営サイドも、個人情報保護法など法律に抵触しないかどうかは事前にチェックしているだろうし、取得した画像データが直接的に個人の特定につながるわけでもないので、明確な法律違反というわけではないだろう。

 ただ、年代や性別、所持品、同伴者まで特定された上で、いつ、どこに行き、どれくらい滞在して、何をして、さらに、そこに行ったのが今年で何回目なのかという通年の累積データまで取得しているとなれば、取得された側が『これって、私だということがバレますよね』と感じるのは当然。『勝手に私の個人情報を取得するな』と異議を申し立てる権利は保障されるべきだろう。

 一企業が自社店舗前や店舗内の人流データを取得して、自社内でのみマーケティングなどに活用するのであれば問題ないが、今回の渋谷プロジェクトでは駅周辺の広いエリアに100台ものカメラを設置し、膨大な数の人のデータを取得して、当人の許可なく企業などにそれを提供するということなので、話の次元が違ってくる。法律的な問題もさることながら、広義の意味でのプライバシー侵害という問題は出てくるだろうし、いくら『まちづくり』を謳っていても、一企業が個人情報やプライバシーの保護という機微な問題に触れるかたちで、多くの一般人の気分を害する行為を行うことは企業倫理的な問題をはらんでいるともいえる」

 ITジャーナリストの山口健太氏はいう。

「近年、AIやIoT技術を都市で活用する『スマートシティ』の構想が進んでおり、AIカメラによる画像解析を事故防止や混雑緩和に役立てる事例が出てきています。通行人の数のように、個人を特定できる情報でなければ同意を取ることなく分析や活用ができると考えられます。

 このプロジェクトでは、個人を特定できる情報は含まないと発表していたにもかかわらず、当初のウェブサイトにはあたかも個人を特定して渋谷での行動データを蓄積していくかのような記載がありました。もしそうであれば個人情報に該当する可能性があり、個人情報保護法に従った取り扱いを求められます」

 渋谷プロジェクトでのデータ収集は、事実上の個人情報の収集・追跡に該当するのではないかという指摘や、もし仮に情報漏洩事故が生じた場合に、画像データを伴うかたちでの個人情報漏洩が起きる懸念があるとの指摘もみられるが、山口氏はいう。

「AIカメラのような技術はうまく使えば社会全体に有用ですが、プライバシー侵害などの懸念があります。そこで、どこまでならOKか、どこからがNGなのかルールを決めることで、個人情報を安心して活用できる環境を整備するのが個人情報保護の基本的な考え方といえます。

 そのルールの範囲内であれば、個人情報を営利目的で活用することに問題はありません。しかし、今回のように公共の場所で個人の顔を識別することについての社会的な合意は進んでおらず、過去に『炎上』を繰り返しています。このままでは渋谷という街全体のイメージダウンにもつながりかねません。

 公共の場所では『嫌なら来るな』というわけにもいきません。AIカメラで撮影していることや利用目的を分かりやすく周知すると同時に、撮られたくない人への配慮が行き届いているかどうかも重要と考えます」

 当サイトは本プロジェクトの問い合わせ窓口となっているIntelligence Design株式会社に見解を問い合わせ中であり、回答を入手次第、追記する。

(文=Business Journal編集部、協力=山口健太/ITジャーナリスト)

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