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東京ミッドタウン八重洲、半分が空室か…オフィス供給過多が深刻、テナント集まらず

  • 2022年8月11日
  • Business Journal

 三井不動産がデベロッパーを務める「東京ミッドタウン八重洲」は、2023年3月に東京都中央区八重洲でグランドオープン予定となっている注目のオフィス複合施設である。45階建ての超高層ビルとなっており、JRや地下鉄、バスなど多くのモビリティにコネクトできる立地のため、日本のビジネス中心街の八重洲の新たな拠点として期待されている。

 だが、肝心の企業の誘致状況は芳しくない模様なのだ。5月25日付東洋経済オンライン記事、7月11日付日本経済新聞記事によると、推定延べ床面積13万平方メートルもある当ビルのオフィスフロアは、まだ半分程度しか埋まっていないという。開業は来春とまだ先だが、これだけの一等地にもかかわらず半分も空室なのは驚きである。

 とはいえ、どうやらオフィスビルに企業が集まらないのは、この東京ミッドタウン八重洲や八重洲エリアだけの問題ではない。相次ぐ再開発の影響により23年の東京都心部では、オフィス供給量が128万平方メートルを超え、都心部全体でオフィス供給過多になるという“23年問題”が叫ばれているのだ。

 こうした都心部の状況を受けて、ネットでは「テレワークの普及でオフィスが必要じゃなくなった」「レンタルオフィスも増えている」とオフィスを構える必要性がないことについて言及する声が少なくない。また、「八重洲などのビジネス街では賃料が高いのにビルを増やしすぎ」「都内の高層ビルはもう飽和状態、採算は取れない」と近年のビル建設に疑問を投げかける声もある。

 テレワークやレンタルオフィスの需要が高まるなか、新規でビルを建設する必要はなくなっていくのかもしれない。そこで今回は賃貸、土地活用、不動産投資の分野に詳しい株式会社グロープロフィット代表取締役の竹内英二氏に、都心部の開発事情について話を聞いた。

コロナ禍だけではない八重洲エリア特有の問題…利益率は?

 竹内氏はまず、東京ミッドタウン八重洲を大企業向けのビルだと定義づけ、同ビルの誘致不調の原因は八重洲独自の問題も関係していると分析する。

「もともと八重洲エリアは小さなビルの多い地域でした。東京駅を境に西側に位置する丸の内は、伝統的に大企業向けの高層ビルが多かったのですが、東側の八重洲はどちらかといえば中小企業が入る小規模なビルが立ち並んでいたんです。ただ10年ほど前から中央区から再開発を促される傾向があり、八重洲でも大型ビルが建設されるようになりました。

 したがって、ここ10年で一気に中小企業の街から大企業の街へと変化した印象がありますね。そこで、近年のこうした八重洲の状況を踏まえて、東京ミッドタウン八重洲は、大企業をメインターゲット層とする大型ビルとして建設されたのでしょう。

 ですが、大企業の多くは、コロナ禍でテレワークを導入しているため、ビル側と企業側とで需給のミスマッチが起こっています。多くの方の予想どおり新型コロナウイルスの影響が、誘致が上手くいってない最も大きな原因ですね。もし八重洲が中小企業の街として今も残り続け、東京ミッドタウン八重洲も中小企業をターゲットに建設していたビルであったなら、空室は免れたかもしれません」(竹内氏)

 新型コロナウイルスの影響もあり、このままだと全フロアが埋まるのは厳しいということか。

「グランドオープンは半年以上先の来年3月なので、まだ三井不動産は焦って空室を埋めようとはしないでしょう。また、長期のフリーレントで最初の3〜6カ月の間は無料といった取り組みはするかもしれませんが、賃貸契約期間は長いため、賃料を下げるという施策は打たないだろうと思います。賃料単価を下げてしまうと単純に収益も減りますし、その後賃料を上げることが難しくなるので、三井不動産はワンフロアを広い状態で維持して、大企業の入居を待つ可能性が高いです」(同)

 では、東京ミッドタウン八重洲クラスの大規模ビルの場合、フロアの50%ほどしか埋まらなかった場合、100%埋まっている状態と比べると利益率にはどれほど差が出るものなのだろうか。

「家賃収入に対して固定資産税、損害保険料などの支出が2〜3割程度だということを踏まえると、フロアが100%埋まっていれば利益率は7割ほどありますが、50%しか埋まっていない状態だと利益率は2割ほどになってしまうのではないでしょうか。

 また、自己資金ではなく借入金でビルを運営する事業者だった場合は、借入分の返済もあるのでさらに利益率は下がる恐れがありますね。三井不動産は、企業全体で一斉に借入を行っているため、東京ミッドタウン八重洲が空室のままでもいきなり赤字にはならないでしょうが、そうではない事業者の場合だと、一気に経営状況が厳しくなる可能性はありますね」(同)

コロナ前のオフィス不要論、2020年のオリンピックが要因か

 東京ミッドタウン八重洲規模のビルの賃料相場はどれくらいなのか。

「八重洲エリアですと、一坪で月3万7000円〜4万円超で募集するのが相場ですね。東京駅に近いという利便性があるので高額になっています。とはいえ、東京駅の反対側である丸の内エリアは、一番高い頃は一坪で月8万円ぐらいという強気な価格設定をしていた時期もありましたので、それに比べるとリーズナブルだと考えることもできます」(同)

 仮に八重洲で1000坪ほどのオフィスフロアを借りると、月4000万円ほどの賃料がかかる見込みということになる。これを安いととらえるか高いととらえるかは企業によってまちまちなのだろうが、テレワークが広まった現在の状況を踏まえると、オフィスを構える必要性を感じないという企業は多そうだ。

「実はテレワーク以前からも、オフィスはいらないという風潮はありました。たとえば7、8年前に話題になった、就労人口の減少問題はいい例でしょう。当時は団塊の世代が大量に退職した時期でして、オフィスがいらなくなる、もしくは規模を縮小すべきという論説が目立ちました。女性の社会進出や高齢者の再雇用なども増えていますが、現在も就労人口は減少傾向です。また一時期注目を集めていたノマドワーカーのような特定の場所で働かなくても良い労働者の存在も、オフィス不要論に拍車をかけていましたね」(同)

 結局は新型コロナウイルスの影響が一番の要因でテレワークを選択する企業が増えたのだが、竹内氏によれば、テレワークの比重が増大したのは東京オリンピックの影響も大きいのだという。

「大企業では、20年に開催予定だった東京オリンピックの期間中に社員を出社させないため、19年頃からテレワークの準備が進められていたんです。都内の企業は、テレワークの準備が整っていた企業も多かったので、すんなりとテレワークに移行できた企業が多いイメージでした。そんななかコロナ禍になり、企業がどんどんテレワークを導入することになったのは周知のとおりです。しかし、もしコロナ禍になっていなかったとしても、東京オリンピック中のテレワークに利便性を感じた企業が多ければ、その後もテレワークを継続する企業は現れたかもしれませんね」(同)

 では今後、八重洲などのビジネス街はどうなっていくのだろうか。

「再開発の動きは鈍くなるのではないでしょうか。汐留、虎ノ門などのオフィス街も八重洲と同じで、テナントが集まらない状況が続いています。そうした空洞化したオフィス街では、タワーマンションの建設が増える傾向にあり、現に大阪や全国の政令指定都市では同様の現象が起きています。東京もそういう動きになってきそうですし、オフィスビルの建設は縮小していくかもしれません」(同)

 都心部全体の問題であるオフィス供給過多問題。東京ミッドタウン八重洲に限らず、空室が目立つビルは誘致対策が急務なのではないだろうか。

(取材・文=文月/A4studio)

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