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あの小説に出てくる料理を完全再現…2万冊に囲まれた文学カフェ「BUNDAN」が凄い

  • 2022年5月18日
  • Business Journal

 たまに、仕事もプライベートの約束も全部忘れて、ひとりっきりの時間を過ごしたくなりませんか? スマホやパソコンは目のつかないところに隠して、できれば知り合いが誰もいない、自分だけの隠れ家のようなカフェで、のんびり過ごしたい。そんな現代の働く大人の心を癒やしてくれるのが、日本近代文学館の中にある文学カフェ「BUNDAN COFFEE & BEER」です。

2万冊以上の本を自由に読める文学カフェ

 日本近代文学館とは、東京都目黒区の駒場公園内に建つ文学館です。戦後、文学資料が散失しつつあることに危機感を抱いた文学者や研究者たちによって、文学資料の収集や保存を目的に建てられました。

 出版社や新聞社、文学者に研究者など、文学や書物を愛する多くの人々の支援を受けて、1967年に開館しました。現在は一部の資料を千葉県成田市の分館に移していますが、日本近代文学館に収蔵されている資料は、実に120万点。貴重な資料の閲覧ができるほか、文学にちなんだ展示イベントなども行っています。

 そんな文学書のためだけにつくられた日本近代文学館の1階に佇むのが、文学カフェ「BUNDAN COFFEE & BEER」です。

 店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、天井まで届く大きな本棚の壁。文学作品から漫画まで、幅広いジャンルの本がズラリと並んでいます。所蔵されている本は2万冊以上。カフェの利用者は、自由に好きな作品を読むことができます。

 こちらのカフェを手がけるのは、場づくりの会社「BAKERU」。同社執行役員の草彅洋平さんが、前身会社時代に立ち上げました。

「自分自身は昔から本が好きなんですが、それとは反対に、世間の人たちが少しずつ文学から離れていっていることに寂しさを感じていました。文学館は非常に高いポテンシャルを持っているので、この場所を、文学好きの人もそうでない人も集まる憩いの場にしたいと思ったんです」(草彅さん)

文学作品にちなんだフード&ドリンク

「文学」をテーマにまとめられたBUNDANは、立地・雰囲気・内装など、いたるところにこだわりが散りばめられています。特におもしろいのが、フードとドリンク。数々の文学作品にちなんだメニューが並んでいます。

 名物ともいえる「芥川 AKUTAGAWA」は、芥川龍之介にちなんで名づけられたコーヒー。芥川をはじめとする文豪たちから愛された銀座の喫茶店「カフェーパウリスタ」で、彼らが生きた大正期に提供されていたブラジルコーヒーを再現したものです。ピールのような酸味とナッツのような甘さが特徴。

 他にも、寺山修司にちなんだ「寺山 TERAYAMA」(エチオピア)、森鷗外から名づけられた「鷗外 OUGAI」(マンデリン)、中島敦にちなんだ「敦 ATSUSHI」(モカジャバ)など、個性的なコーヒーが楽しめます。

 もちろん、フードも文学作品にちなんでいて、BUNDANでしか食べられないメニューばかりです。

 9時半のオープンからいただけるのは、「シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイ」。アーサー・コナン・ドイルの小説「シャーロック・ホームズ」シリーズの中で、ホームズたちを魅了したハドスン夫人の特製料理です。

 ハドスン夫人とは、ホームズとワトスンが住むベーカー街の下宿先の女主人。気難しいホームズを根気強く世話し、ときには事件解決につながる重要な役割を果たす、頼れる味方です。

 脂の乗ったサーモンとほうれん草のパイ、ドイツの伝統的な朝食のビールスープとサラダがセットになっています。一口食べれば、ホームズたちが笑顔で料理をほおばっているシーンが思い浮かんでくるはず。

 ちょっと珍しい「レバーパテトーストサンドイッチ」は、谷崎潤一郎の小説『蓼食う虫』の中に出てくるメニュー。互いに別に恋人を持ち、冷めきった夫婦関係にあった妻の美佐子が、夫と子どもを置いて家を出るシーンで作ったものです。

 この作品は、谷崎自身の私生活を表しているのではないかともいわれた問題作としても有名。妻の千代を詩人で作家の佐藤春夫へ譲ったとして世間を騒がせた「細君譲渡事件」がモデルだといわれています。

 このように、BUNDANのメニューには、それぞれのテーマになっている文学作品の説明や調理法が書かれていて、文学にあまり詳しくない人でも興味をそそられます。

 この他にも、宇野千代が『私の作ったお惣菜』の中で紹介した「新機軸のカレー」を再現した「そぼろカレー」(ランチタイム)、梶井基次郎の『檸檬』にちなんだ「檸檬パフェ」など、一度は食べてみたいメニューばかり。

 特にこれからの暑い時期は、レモンピールにレモンジュレなど、レモンづくしのサッパリパフェがピッタリです。

 BUNDANを訪れるなら、ランチタイム以外がオススメ。じっくり本と向き合いたいときはもちろん、散歩の休憩所としてコーヒーを飲みに寄ったり、テラス席でぼーっと考え事をするのもいいでしょう。

 普段の喧騒を忘れて、のんびりと贅沢なひと時を楽しんでみてください。

(文=安倍川モチ子/フリーライター)

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