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リアルちゃぶ台返し&バットで物を破壊できる“ストレス発散系施設”が大人気の裏側

  • 2022年5月1日
  • Business Journal

 イライラしたとき、ふと何かを破壊したい衝動に駆られた経験がある人は多いだろう。さらに、旅行や外食などの気分転換がままならず、ストレスが溜まりやすいコロナ禍の現在は、そんな気持ちに拍車がかかっているという人もいるのではないだろうか。

 しかし、日常生活において一切の遠慮なしに物を壊せる機会というのは、そうそうない。そんな隠れたニーズをつかみ取り、人々が気兼ねなくストレスをぶつけられるアミューズメント施設が、全国各地に登場してきている。

客数の増加はコロナ禍でのストレスとは無関係

 日本国内で本格的な感染拡大が起きてから2年以上、私たちの日常は大きく変わった。生活の変化にも慣れてきてはいるものの、いまだに不便さや面倒臭さを感じてしまう場面も少なくない。そんなストレス過多になりがちなコロナ禍で、「ストレス発散系アミューズメント施設」が話題になっている。

 そもそもの起源は、アメリカの女性起業家が2008年に発案した「ANGER ROOM(アンガールーム)」といわれている。アンガールームは部屋に置かれた家具や家電、食器類などを怒りにまかせて破壊できる施設で、大きな話題になったという。

 そんな「物が壊せるサービス」が日本に初上陸したのは19年。株式会社BrickWallが東京・浅草に「REEASTROOM」をオープンして以降、全国各地で「破壊」が楽しめるアミューズメント施設が増えている。今回、筆者が確認できた範囲では、東京、大阪、愛知、仙台、和歌山に、こうしたアミューズメント施設がオープンしているようだ(22年3月31日現在)。

 その中で、19年9月に大阪・難波にオープンした「U2 unusual underground」の代表・白山敦司氏に、今ストレス発散系アミューズメント施設が注目を集める理由を聞いた。

「学生でも社会人でも、人間関係で悩んだり、嫌な思いをしたりしますよね。ストレス社会だからこそ、こういう施設は多くの人から求められると思い、19年に出店しました。その読み通り、客数は年々増加しています」(白山氏)

 同店がオープンした19年はコロナ禍前だが、翌年から制限の多い生活が求められるようになり、ストレスを感じている人も増えている。やはり、コロナ前後で客入りに変化はあるのだろうか。

「コロナ禍以降にお客様は増えていますが、これは単純に店の知名度が上がったおかげだと思います。『新しい生活様式でストレスが溜まったから』という理由でお客様が増えている感じは、あまりしないですね」(同)

TikTokで“ちゃぶ台返し”動画が大反響

 同店を訪れる客は20代半ば〜30代の若い社会人世代がメインで、白山氏いわく「仕事関係のストレスを抱えている人が多い印象を受けます」とのこと。とはいえ、「物を壊してストレス解消したい」と思い詰めているような客は、案外少ないそうだ。

「あくまで『アミューズメント施設』なので、『思う存分遊びたい』『特別な体験をしてみたい』という動機で来店されるお客様がほとんどです。中には、レジャー気分で来店されたものの、終わった後は『やってみたら自分が意外とストレスを抱えていたことに気付き、とてもスッキリした』とおっしゃる人もいます。ストレスは、思いきり笑ったり無我夢中で遊んだりすることでも減っていきますからね。エンタメとして楽しんでもらいつつ、潜在的なストレスの緩和にもつながっているのだと思います」(同)

 非日常的な体験を楽しむつもりが、知らぬ間にストレスも解消できるとなれば、レジャーとしてかなり満足度が高いだろう。

「当店では、物が壊せる『破壊エンタメ』の他に、マシンガンで標的を破壊する『エアガン』、アニメや漫画で目にするような『ちゃぶ台返し』と、さまざまな非日常体験プランを用意しています。どのプランにも言えますが、“動画映え”するという点も、ご支持をいただいている理由のひとつなのではないかと思います」(同)

 実際、とある有名インフルエンサーが同店で行ったちゃぶ台返しの様子をTikTokに投稿したところ、3日間で100万回再生されるほどの話題になったという。“映え”の効果は申し分ないだろう。

「写真や動画の撮影も許可しているので、壊す時間以上に撮影を楽しんでいるお客様も多いです。防具として貸し出しているツナギや破壊する際に使う釘バットなど、珍しいアイテムが多いのも“映え”の要素になっているのではないでしょうか。SNSに投稿していただければ店の宣伝にもなりますし、我々も意識して映えるものを店内外に置いています」(同)

 令和のアミューズメント施設には“SNS映え”が欠かせないというわけだ。

壊すための家具や割れ物はどう調達?

 非日常体験、ストレス発散、SNS映えと、現代の若者のニーズに非常にマッチしているストレス発散系アミューズメント施設だが、ここで気になるのが「壊れ物の仕入れ」についてだ。いったい、どのように調達しているのか。

「廃品処理業者や遺品整理業者と提携し、使えなくなった家具や家電を譲ってもらっています。ビンなどの割れ物は、酒屋からいただくことが多いですね」(同)

 同店のように破壊系レジャーを提供している店舗は、こうした業者から仕入れているケースがほとんどだという。店で破壊した後も、然るべき処理をしてくれる産業廃棄物専門業者に回収を依頼し、リサイクルを行っている。環境面への配慮も十分だ。

「当店では1回の利用で壊せる物の上限は定めていませんが(70kgセット以上は事前の連絡が必須)、1人10kgほどが平均的です。物の仕入れは予約の状況を見ながら、飛び込み客にも対応できるように調整して行っています。それでも、昨年末から年明けにかけては物が足りなくなり、かなり慌てました」(同)

 オープン1年目の19年末〜20年始は知名度が低く、20年末〜21年始にかけてはコロナ禍真っ只中で客足が伸びなかった。そのため、年末年始シーズンの仕入れ量のデータも取れておらず、前年度ベースで用意したところ、読み間違えてしまったという。

「慌てて物を調達しようにも、仕入れ先の業者や酒屋が仕事を納めていたので、在庫だけで乗り切るしかありませんでした。幸い、予約をいただいていたお客様は問題なくご案内できましたが、こうしたイレギュラーな事態への対応は難しいなと感じましたね。ご予約のお客様が優先になるので、もし土日祝に来店を考えられている場合は、事前に予約していらしてくださるとありがたいです(笑)」(同)

 課題を口にしつつも、最近は安定した客入りになってきて「2店舗目を出店する構想も練り始めました」と語る白山氏。ストレス発散系アミューズメント業界の成長を確信しているということだろうか。

「誰もが心に負担を抱えやすいストレス社会が続く限り、当店のような施設の需要は大きいと思います。ストレスの捌け口があることで、もしかしたら暴力事件を未然に防いでいる効果もあるかもしれません。今後は、大きな都市には1店舗ずつ、気軽にストレスを発散できる店が出てくる未来もあり得るのでは、と考えています」(同)

 全国的に見ると、斧投げができる店、瓦を割れる店など、「破壊」のバリエーションは多岐にわたるようだ。今後はよりいっそう、楽しみながらストレスを発散できるユニークな店が全国各地に増えていくに違いない。

(文=鶉野珠子/清談社)

●清談社
せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。http://seidansha.com

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