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大間の本マグロ、ブランド価値失墜…組織ぐるみの不正か、国際的な漁業規制が骨抜き

  • 2022年3月31日
  • Business Journal

 高級マグロの代名詞といえる青森県大間産の本マグロ。そんな大間産は大量の漁獲未報告という不正が明るみとなり、ブランド価値の低下が避けられない。本マグロにとどまらず、アサリやワカメの産地偽装などが相次いでおり、水産業界のモラルが厳しく問われている。

正月の風物詩

 年明けの初競りで大手寿司チェーン同士がしのぎを削って大間産本マグロを高値で競り落とす様子は、正月の風物詩となっている。過去には一本3億円を上回ったこともあった。大間産は銀座の高級寿司店で重宝されるなど、人気の高さが不正に発展したというのが業界の見方だ。

 では、どういう不正だったのか振り返りたい。太平洋に生息する本マグロは、過去の乱獲で激減した資源量を回復させるため、国際的な漁業規制が導入されている。日本の2021年の漁獲枠は、大型魚が4882トン、小型魚が4007トン。国際約束である以上、上限の超過は一切許されない。

 にもかかわらず、青森・大間で昨年4〜9月の半年間だけで、大型マグロ14.3トンのヤミ漁獲があったことが明らかになった。一本当たり100キログラムと仮定すると、実に140本超のマグロが未報告だった計算になる。こうした不正が積み重なれば、上限を上回り、規制そのものが意味を成さなくなる由々しき事態といえる。

 日本や米国などは昨年12月、22年以降の大型マグロの漁獲枠を増やすことで正式に合意した。長年の資源管理の努力が認められたことが理由というが、こうした不正を目の当たりにすると、何とも後味が悪い。

組織ぐるみで不正か

 関係者によると、不正は長年行われていた。地元紙が昨年11月に不正の事実を報道したが、それもごく一部分を説明したにすぎないという。

 大間では、漁協に割り当てられた漁獲枠を各漁業者に配分している。一人当たりが年間に釣れる量は決して多くないため、漁業者の経営状況は厳しくフラストレーションが溜まっている。市場価格が安い夏にヤミ漁獲に手を染め、相場の高い冬に不正に捻出した枠を利用することが常態化していたとの見立てもある。組織ぐるみで不正を働いて隠ぺいし続けてきた疑いもあり、未報告量はさらに膨らみそうだ。

 地元漁協を通じて出荷された大間産マグロには、重量や水揚げした船の名称などを記載した管理番号入りのタグが付けられる。偽物を市場から排除し、ブランド価値を守るためだ。しかし、今回不正が発覚したマグロについては、漁協を介さず仲卸業者と直接取引していたため、タグは添付されていない。ちなみに漁協を通さないことに違法性はなく、報告を怠ったことが糾弾されるべきなのだ。

管理はザル

 マグロにとどまらず、なぜ違法操業や産地偽装が起きるのか。漁獲量や流通量を正確に把握するシステムが日本には存在せず、管理がザルだからだ。漁獲量は漁業者に基づいて集計される。嘘をつかれてしまえば、正確な数量の把握はできない。

 甘い罰則も不正を誘発している可能性がある。漁業法では、今回のような未報告事案は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。関係者は「甘い罰則だから危険を犯して不正に手を染める漁業者もいる」と嘆く。

 最近では、中国や韓国などから持ってきたアサリを熊本県産と偽った事例が話題になった。熊本県産アサリの年間出荷量が20トンなのに対し、昨年10〜12月に小売店での販売量は推計で2000トン超と100倍の開きがある。食に対する消費者の信頼を失墜させる許しがたい行為だ。熊本県は実態把握を進めるため、アサリの出荷を2カ月間停止する措置を講じた。

 また、中国産ワカメを鳴門産と偽って販売したとして、水産会社の社長らが逮捕される事案もあった。ある関係者は「水産業界は腐りきっている」と怒りをあらわにする。

 消費者の水産物に対する信頼回復を急ぐためにも、正確な流通量や漁獲量を把握できるシステムを導入すべきだ。ただ、こうした仕組みを取り入れることはコスト増につながるとして、業界団体が抵抗し、話が進まないのがいつものパターン。これでは消費者の魚離れは一層深刻なものとなりそうだ。

(文=Business Journal編集部)

 

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