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西武グループ、解体的再建へ…主力事業プリンスホテルが多額赤字、ファンドに売却

  • 2022年3月3日
  • Business Journal

 西武ホールディングス(HD)がコロナ後を見据え資産売却を進めている。プリンスホテルやレジャー施設など国内の31施設をシンガポール政府系投資ファンドのGICに売却する。売却額は1500億円規模となる見通しで、800億円の売却益を見込む。資産の譲渡は22年9月に完了する予定だ。

 GICに売り渡すのは、ザ・プリンスパークタワー東京(東京・港区)や札幌プリンスホテル(札幌市)、グランドプリンスホテル広島(広島市)のホテルのほか、新潟県湯沢町の苗場プリンスホテルと苗場スキー場、岩手県雫石町、群馬県の万座温泉、長野県の志賀高原にあるホテルとスキー場だ。当初は全体で40件程度の売却を検討していたが、一部は保有することに方針を変更した。売却後もホテルの運営は続ける。不動産の保有と運営を分離することでコストを抑制し、収益力を高める。

 西武HDは子会社のプリンスホテルが49のホテルを展開し、このうち41ホテルを保有・運営している。資産効率を高めるため、22年9月をめどに運営と資産の保有を分ける。運営は新会社の西武・プリンスホテルズワールドワイド(東京・豊島区)が担い、プリンスホテルのブランドでサービスの提供を続ける。

 西武HDが21年5月に発表した21〜23年度の中期経営計画で、ホテルなどを売却する方針を示した。21年内に完了させる計画だったが、売却物件の選定と公表がずれ込んだ。「物件数、確認事項が多く、想定よりリストアップに時間がかかった」と説明した。西武HDは新型コロナウイルスの影響を最も受けた私鉄の一つだ。21年3月期の連結最終損益は723億円の赤字(前期は46億円の黒字)。私鉄15社のなかで最大の赤字を計上した。

 他の大手私鉄は22年3月期の業績予想で最終損益が黒字転換するとの見通しを示しているが、西武HDの22年3月期の最終損益は140億円の赤字の見込み。赤字幅は従来予想より90億円膨らみ、2期連続の赤字となるとしてきた。売上高にあたる営業収益は前期比21%増の4070億円にとどまる見通しで、従来予想から490億円引き下げた。相次ぐ緊急事態宣言で鉄道やホテルの回復が遅れている。

ホテル・レジャー事業が売上高の4割

 西武HDはレジャー施設やホテルへの依存度が高い。コロナの影響のなかった19年3月期を見るとホテル・レジャー事業が売上高の4割を占め、鉄道などの運輸事業よりも大きかった。コロナ禍で訪日外国人や国内の旅客の宿泊需要が消失したのが痛手となった。

 21年3月期の連結営業損益は515億円の赤字を計上したが、ホテル・レジャー事業の赤字は534億円にのぼり、西武HDの赤字の最大の要因となった。ホテル・レジャー事業の失速で事業計画が狂った。コロナ禍で紀尾井町の不動産施設、東京ガーデンテラス紀尾井町(東京・千代田区)は当初予定を下回っており、980億円の建設費が重荷だ。旧赤プリ(グランドプリンスホテル赤坂)の跡地に建設され、16年7月にオープンした。

 昭和レトロに大改装して21年5月に新装オープンした西武園ゆうえんちの償却負担も重く、としまえんは閉園。跡地に「ハリー・ポッター」のテーマパークを23年にオープンする。21年5月に聖域なき資産売却を打ち出した中期経営計画を発表し、ホテルやレジャー事業を方向転換することにした。

黒字の西武建設も売却

 系列子会社にもメスを入れる。傘下の西武建設(埼玉県所沢市)を電気通信工事3位のミライト・ホールディングス(東証1部)に売却する。ミライトHDが620億円で西武建設株式の95%を取得する。

 西武建設は西武鉄道の100%子会社(西武HDから見ると孫会社)で駅舎や西武グループの関連事業の施設の建設や沿線の戸建住宅を手掛けている。21年3月期の売上高は686億円、純利益は24億円。しっかりと黒字を確保しているが、それでも売却の対象となった。

 西武建設株は3月31日に譲渡される予定。西武HDは西武建設の株式売却益380億円を特別利益として計上する。22年3月期連結業績予想については最終損益の140億円の赤字予想が西武建設株の売却により90億円の黒字になると業績を上方修正した。

後藤社長の長期政権

 西武HD社長の後藤高志氏は2005年5月、西武鉄道の社長に就いた。06年、持ち株会社西武HDの社長に就任した。西武グループのメインバンク、みずほフィナンシャルグループ(FG)の出身で西武グループの経営再建のために派遣された。

 その西武に支援の手を差しのべたのが米投資ファンド、サーベラスだった。06年、1000億円を出資、株式の30%を保有する大株主となった。当初はホテル事業の支援など経営面で協力していたが、再上場のやり方をめぐってズレが違いが生じた。

 13年、サーベラスが西武HDに対しTOB(株式公開買い付け)を実施、保有比率は35.45%に高まった。サーベラスはプロ野球球団の売却やローカル線の廃線を求めた。14年、西武HDは再上場を果たす。17年、サーベラスは西武HDの株式をすべて売却して日本から撤退した。

 サーベラスの“桎梏”から脱け出した西武HDは2027年をメドに売上高にあたる営業収益を1兆円、営業利益を1500億円に引き上げる目標を掲げた。ホテルを中心に鉄道以外の事業の拡大がエンジン役となるはずだったが、新型コロナの感染拡大で観光レジャー需要が急減速したのが痛かった。

 そこで資産売却をテコにコロナ後を見据えることにした。ホテル・レジャー事業を身軽な経営へ転換することにした。手持ち資産を減らし、経営効率を高める。事業会社の売却益で西武HDの黒字化の定着を目指す。31施設の資産売却による利益は、譲渡日の関係もあって22年3月期決算には織り込んでいない。

 西武HDはウィズ・コロナ対応の遅れが目立つ、とアナリストから指摘されているが、後藤社長の長期政権の澱みが出ているとの見方もある。「本人が『辞める』と言わない限り、後藤社長体制が続くのではないか」(西武HDの関係者)といった冷めた声も挙がっている。後藤氏がみずほFGの頭取候補だっただけに、「現役のみずほの経営陣も後藤氏の首に鈴をつけられない」(金融担当のアナリスト)という見立てである。

(文=Business Journal編集部)

 

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