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東芝、再び経営崩壊…外資系投資ファンドのみならず、国内機関投資家も現経営陣に“No”宣告

  • 2021年8月5日
  • Business Journal

 6月28日、東芝は25日に開いた定時株主総会の議決権行使結果を公表した。反対多数で否決された永山治前取締役会議長(中外製薬名誉会長)の選任議案への賛成比率は43.74%で、続投に必要な過半数を割り込んだ。永山氏は企業統治改革の手腕を期待され、昨夏の総会では97.70%の圧倒的な賛成率で社外取締役に選任されていた。

 再任された綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)の賛成率は77.39%。1年前の89.95%から大きく下がった。監査委員会の委員を務めていた小林伸行氏の賛成率は25.32%と極端に低かった。選任された9人も、このうち7人の賛成率が8割を下回った。2020年の株主総会の運営が「公正ではなかった」とする調査人の報告書が出されたこともあって、株主の不満が広がっていることが明らかになった。

 東芝が今年3月に開いた臨時株主総会で昨年7月の株主総会の運営をめぐって独立した調査を求めた筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントの議案が可決されるという異例な展開となっており、執行部に対する批判は最高潮に達していた。臨時総会に続き、定時総会でも経営陣は完敗した。

総会前に一部提案を取り下げ

「昨年7月の株主総会で海外投資家に不当な圧力をかけていた」とする外部の弁護士による調査報告を受け、東芝は臨時取締役会を開き、定時株主総会に諮る一部議案を変更した。監査委員会委員長の太田順司氏、委員の山内卓氏を除外することを決めた。しかし、指名委員会委員長の永山氏と監査委員会委員の小林氏は役員候補として残された。

 これに海外投資家が反発。東芝株7.2%を保有する第2の株主の3Dインベストメントは永山氏らの即時辞任を要求。米国の議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラス・ルイスは、永山氏らの取締役選任に反対を推奨した。

 永山氏の再任が承認されるか否かが定時総会の最大の焦点となった。東芝の社外取締役に就任したのは20年7月。永山氏を再任する理由は大きく分けて2つだ。永山氏が東芝に加わったのが海外株主への圧力問題が起きた後であることと、承認されなかった場合、この混乱を収拾できる人物がいなくなることへの懸念だった。

 東芝の株主構成は時々刻々、変化している。東証1部に復帰した東芝株が東証株価指数(TOPIX)に組み入れられた2月下旬以降、国内のインデックスファンドによる投資が増加した。インデックスファンドとは株価指数などの指標に連動した運用を目指す投資信託。3月の臨時総会で投票できなかった彼らが、定時総会では議決権を行使した。海外投資家の割合は18年3月末の72.3%をピークに年々減少しており、21年4月末時点で50.4%だった。

 ロイター(6月22日付)が、最新の海外投資家の投票動向をこう伝えた。

<投票記録によると、ノルウェー政府年金基金を運営するノルゲスバンクとフロリダ州公務員年金基金が、永山氏に反対票を投じた。……米公的年金基金のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、永山氏の再任に賛成。東芝株5%超を保有する米大手ブラックロックも賛成票を投じた>

 永山氏が僅差で再任される可能性が高いというのが大方の読みだったが、敗北した。蓋を開けてみると永山氏の賛成率は43.74%、反対率56.06%。僅差ではなかった。アクティビスト(物言う株主)以外にも、「指名委員会の委員長だった永山氏にも責任がある」と判断した株主が多かったということだ。

 機関投資家の行動指針を定める日本版スチュワードシップ・コードが導入され、議決権行使結果の開示が求められるようになってから、国内の資産運用会社も会社側の意向に沿う「物言わぬ株主」ではなくなりつつあることを、永山氏の再任否決が如実に示している。

【株主総会での賛成比率】

氏名      役職・出身母体            賛成比率        (前年の賛成比率)

<再任>

・綱川智     社長兼CEO               77.39%      (89.95%)

・永山治     取締役会議長、中外製薬名誉会長 43.74%(否決)   (97.70%)

・小林伸行    公認会計士             25.32%(否決)       (85.56%)

・ポール・ブロフ     会計事務所出身      88.22%          (76.60%)

・ワイズマン廣田綾子  投資会社出身        56.31%          (76.64%)

・ジェリー・ブラック  イオン顧問         78.05%          (76.63%)

・レイモンド・ゼイジ  投資ファンド出身        88.08%     (68.99%)

<新任>                      

・綿引万里子  元名古屋高裁長官           77.49%          (―)

・ジョージ・オルコット       投資銀行出身    67.96%(辞任)      (―)

・橋本勝則    元デュポン副社長           77.39%          (―)

・畠澤守     副社長             66.26%      (―)

投資ファンド出身のレイモンド・ゼイジ氏が指名委員会委員長

 総会後、永山氏が務めていた取締役会議長に綱川社長が就いた。東芝は取締役会議長を原則として社外取締役が務めると定めているが、暫定的に綱川氏がなった。綱川氏の後任については、「早急に社内外の候補者の検討を行う」とした。

 各委員会の委員長の顔触れを見ておこう。監査委員会委員長に元デュポン副社長で新任の橋本勝則氏、指名委員会委員長はレイモンド・ゼイジ氏、報酬委員会委員長はジェリー・ブラック氏。新設した戦略委員会委員長にはポール・ブロフ氏がなった。新任の社外取締役として承認を受けたジョージ・オルコット氏は「総会後の体制を踏まえた結果、取締役を辞任する」と、申し出て了承された。

 永山氏らの選任案が否決されるという事態を受け、新たに発足した指名委員会が追加の取締役の人選を進める。臨時株主総会を開いて株主の賛否を問うことになる。候補者選定は指名委が主導する。東芝はコーポレートガバナンス・ガイドラインで、「取締役の人数は11名程度」と定めている。現状は9人だから2人程度を補充することになろう。

 指名委は全員が社外取締役。委員長のレイモンド・ゼイジ氏は投資ファンド出身で、東芝の大株主の米資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネジメントのアジアの責任者を務めたことがある。

 委員5人のうちゼイジ氏を含む3人は19年の総会でアクティビストとの交渉を経て候補となった社外取締役である。ゼイジ氏の株主総会での賛成率は88.08%で、昨年の68.99%から大幅にアップした。追加される社外取締役の人事案が海外株主寄りでまとまるのは間違いないだろう。指名委の主な任務は、執行役の選任である。なかでも、代表執行役社長の人事は会社の命運を左右する。現在の代表執行役社長CEOは綱川氏。代表執行役副社長が畠澤氏である。

 畠澤氏は新任の社内取締役として選任されたが、賛成率は66.26%と新任の取締役のなかで最も低かった。畠澤氏は1959年4月、秋田県大館市生まれの62歳。82年、筑波大学第三学群基礎工学類を卒業して東芝に入社。原子力事業出身で、電力関連事業に携わり、2018年、東芝エネルギーシステムズの社長に就いた。

 脱炭素社会の実現に向け、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない洋上風力発電の市場は拡大する。風車の基幹部品製造を商機と捉え、他社と連携しながら「成長が見込める市場で一定の役割を担いたい」と、畠澤氏は意気込む。

 畠澤氏が“ポスト綱川”として浮上してきたのは、原子力出身で経済産業省とのパイプが太いからだという。経済産業省をうしろ立てにして、「物言う株主」と対峙することを期待する向きがあるからだ。しかし、畠澤氏は根っからの技術屋で「物言う株主」との接点はない。交渉役は海外投資家を招き入れた綱川社長に頼るしかない、という見立てをする若手社員もいる。

 東芝のトップ人事は西室泰三氏以降、失敗の歴史である。彼らの多くは今日の混迷、迷走をもたらした。レイモンド・ゼイジ指名委員会委員長は“ポスト綱川”をどう判断するだろうか。

【東芝歴代社長】(1996年以降)

・西室泰三    1996年6月〜2000年6月

・岡村正      00年6月〜05年6月

・西田厚聡     05年6月〜09年6月

・佐々木則夫    09年6月〜13年

・田中久雄     13年〜15年7月

・室町正志     15年7月〜16年6月

・綱川智      16年6月〜20年3月

・車谷暢昭     20年4月〜21年4月

・綱川智(再任)  21年4月〜

後継者選びのため外部のコンサル2社を選定

 東芝の取締役会は7月30日、“ポスト綱川”を社内外から選ぶため、外部の幹部人材会社2社を選定したと発表した。「取締役会議長の候補者は、社外から探す」とした。社長候補の選定には時間がかかるとの見方が大勢で、まず新たな取締役候補選びを進める。

 東芝の首脳が経済産業省と連携し、投資ファンドに対して株主総会への提案取り下げなどの圧力をかけたと指摘された問題の究明と再発防止を図るための「ガバナンス強化委員会」(仮称)の設置もあわせて検討していることを明らかにした。

 中核事業と非中核事業の区分についても、これまでの方針を見直し、新たな区分を示し、非中核事業は売却する。

(文=編集部)

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