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政府、国費投入で国産ドローン開発プロジェクト始動…自動車業界「空飛ぶクルマ」開発競争

  • 2021年7月25日
  • Business Journal

 世界中でドローンの国産化の動きが加速している。産業用ドローンの製造は現在、中国のDJIの独壇場となっている。ドローン・インダストリー・インサイツの調査によると、DJIが世界のシェアの76.1%(2021年3月時点)を占めるという。

 こうした状況のなかで米国防省は20年1月、サイバーセキュリティーの観点から500台以上のDJI製ドローンを一時的に運用停止。さらに海外からのドローン購入を禁止。DJIは米国から中国企業への技術移転を制限するエンティティリストに登録された。

 日本では国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が20年、国産ドローンの基盤を開発するプロジェクトを始動させた。

「国内に小型ドローンを製造し海外のメーカーとも伍して戦えるようなプレーヤーがいなかったので、それを育成するためにプロジェクトを始めました」(NEDO関係者)

 1月27日に公募を開始し、4月27日に実施企業5社を発表した。プロジェクトは「委託事業」と「助成事業」に分かれ、前者は自律制御システム研究所(ACSL)、ヤマハ発動機、NTTドコモが、後者はACSL、ヤマハ発動機、ザクティ、先端力学シュミレーション研究所が選ばれた。

「委託事業」では、高い飛行性能や操作性、セキュリティーを実現するドローンの標準機体・設計・開発、および機体を制御する“心臓部”であるフライトコントローラーの標準基盤・設計を対象とし、「助成事業」では委託事業で研究・開発される標準仕様と合致するドローンの機体や主要部品の量産・供給体制・保守体制の構築を支援している。

 さらに日本政府は安全保障の観点から外国製のドローンに依存することを問題視し、20年11月には官公庁が保有している計1000機のドローンを国産の機種に切り替える方針を固め、ACSL、ヤマハ発動機、NTTドコモなど5社連合に開発を委託した。しかも新規でドローンを調達する際には内閣官房に事前相談し、リスク評価を受けることを義務化し、製造過程で不正プログラムなどが製造過程で仕込まれる「サプライチェーンリスク」が疑われる機種は調達から除外される。

 今年4月にNEDOが会見を開き、「安全安心なドローンの基盤技術開発」の成果を発表し、7月末までに最終的な開発を完了させてから11月末までにドローンの量産体制を確立し、21年度末までには政府に納入を果たしたいという。

 では産業用ドローンの開発は今、どのような状況にあるのか。前回に引き続き一般社団法人日本UAS産業振興協議会(略称JUIDA:Japan UAS Industrial Development Association)理事長で東京大学未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二氏に国産ドローン開発の最新事情について話を聞いた。

加速する国産ドローン開発

――「ジャパンドローン2021」でも紹介されたソニー以外にもドローン開発に参入している大手企業は、どのようなところがあるのでしょうか。

鈴木 ヤマハ発動機は農薬散布ヘリをやっていて、ドローンにも参入しています。デンソー、ヤマハ発動機、ヤンマー、そして今回参入したソニーあたりが有力な国産開発大手メーカーだということができます。もちろん多くのベンチャー企業が活躍しています。

――中国製のドローンの官公庁での使用が禁止され、昨年からドローンの国産化の動きが加速しています。

鈴木 そうですね。ドローンはインターネットでつないだ状態で保守点検、ソフトウェアのアップデートが行われ、ドローン内に記録されているフライトログなどが海外に流出してしまう恐れがあります。それを米国が最初に問題視するようになり、公的機関で中国製のドローンの使用を禁止しました。日本国内でもそれに刺激されて、セキュリティー機能をきちんとチェックしないと使用してはいけないということになりました。ただ中国製のドローンがダメだというわけではないのです。これをきっかけにセキュリティーのしっかりした国産のドローン開発に力を入れるようになりました。

――フライトログなどが流出されると、どのような問題が起こるのでしょうか。

鈴木 ドローンを使って高圧送電線の点検などに使うことが可能なのですが、その位置データが流出してしまい攻撃されてしまうと大都市が停電したりしますので、高圧送電線がどこに通っているのか、公開されていないのです。ほかにも原子力発電所や石油の備蓄タンクなどの警備に使われたときのデータの流出なども大きな問題となります。

――国産化の流れは具体的にはどこまで進んでいるのでしょうか。

鈴木 NEDOが国産ドローンを支援するということで、国産メーカーと通信関係、さらにメーカーはベンチャーが多いので製造ラインをもっているところが少なく、そうした製造ラインをもっていてきちんと製造できるところも入っています。今年の初めぐらいに公開実験をやり、5月頃に公表されました。それは国費が投入されていますので、そこで開発されたドローンの新しい技術でオープンにできるものはオープンにされています。特にセキュリティーの技術は公開されていくんじゃないかと思います。

ドローンのマーケット規模

――ドローンのサービス事業では、どのようなところが活躍しているのでしょうか。テラドローンが世界第1位になっているという話も大きな話題になっていますが。

鈴木 サービス展開ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど通信系の会社は無線を使いますから、深く関係してきています。

――ドローンを製造するための部品などは、かなり日本の企業がかかわっていると思いますが。

鈴木 日本製のものもかなり使われています。特にバッテリーなどは日本が強いですから、信頼性のあるものを搭載しようとすると、日本製になります。今の主流はリチウムイオン電池ですが、今後は燃料電池に注目が集まっています。燃料電池はまだ国産でいいものができていませんから、今は海外のものを買ってきて使っています。

 ただ、市場があるということがわかれば、いいものができてくると思います。バッテリーもドローン用のバッテリーはあるのですが、自動車用のバッテリーと比べると市場規模が全然違います。ドローンのバッテリー開発はマクセルがやっていたのですが、21年4月1日から積層ラミネート型リチウムイオン電池の企画・開発・販売事業は古河電池に事業承継されました。

――ドローンのマーケット規模は。

鈴木 ドローン自体よりもサービス事業のほうが数倍大きいと思います。

――ドローン事業もかなり認知されてきましたよね。

鈴木 ようやく市民権を得てきました。機体を登録することになりました。ナンバープレートのようなものをつけるんですが、ドローン自体は小さいですし、上空を飛んでいると目視ではナンバープレートは見えませんから、ドローンから電波を出してスマートフォンなどでそれを見ることのできるリモートIDを付けることを義務付けることが今年中にスタートすることが決まりました。機体認証も本格化しまして、先の国会で機体ごとに認証を受ける制度が航空法改正で決まりました。操縦免許の交付も今までは民間でやっていましたが、国の免許制度に変わることが同じく航空法の改正で決まりました。そういう意味では自動車と同じような形で市民権を得つつあります。

「空飛ぶクルマ」

――自動車メーカーや三菱重工、川崎重工などが本格的に国産ドローンの開発に参入していく可能性はどうでしょうか。

鈴木 ドローンというよりは、もっと大きな「空飛ぶクルマ」の開発に力を入れていると思います。ドローンも大きくなれば人を乗せることができるようになります。それが「空飛ぶクルマ」なんですが、トヨタ自動車は米国のジョビー・アビエーションに数百億円の投資をしていますし、ホンダ技研は独自で開発を進めてるといわれています。海外では米国のGMやドイツのアウディ、英国のジャガー、イタリアのメーカーなども力を入れています。

 世界的に自動車メーカーが「空飛ぶクルマ」に力を入れています。もちろん、航空機メーカーも注目しています。米ボーイングや欧州エアバスも自分たちで開発するというより、スタートアップ企業を買収して開発させています。人が乗って飛ぶということになると、航空の専門的な知識が必要ですから、航空機メーカーのように事情をわかっていないと認可が下りません。そのため航空機メーカー、自動車会社、インテルなどのIT系企業が参入してきています。開発競争は世界中で起こっています。

――物流ドローンは今どのような状況なのでしょうか。以前幕張で物流ドローンの実証実験が行われましたが、これは今どのような形で反映されているのでしょうか。

鈴木 物流ドローンは今、離島などでの物流でその可能性が期待され、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)などが力を入れ、将来の物流事業を無人機で実施したいという期待があるようです。1時間程度飛べるヤマハ発動機の小型ヘリなどを使って20kgぐらいのものを運ぶ実証実験が行われています。ただ、もっと重いものを運ぶためには「空飛ぶクルマ」のトラック版のようなものが必要になっていくのですが、それも開発されつつあります。日本のスカイドライブという会社が今開発に力を入れています。海外ではドイツのボロコプターという会社が100kgのものを運べる「ボロドローン」をつくり、実証実験をやろうとしていてJALが出資しています。JALと一緒に奄美群島で実証実験を計画しています。

(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

●松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には『ロッテを創った男 重光武雄論』(ダイヤモンド社)、『堤清二と昭和の大物』(光文社)、『東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。

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