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三菱重工業、「飛鳥Ⅱ」後継船建造の受注逃す、独企業が受注…“造船王国・日本”の没落

  • 2021年5月7日
  • Business Journal

 日本郵船のグループ会社、郵船クルーズ(横浜市西区)は2020年11月、「飛鳥II」(5万444トン)の運航を再開した。20年2月、横浜港を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で712人の新型コロナウイルスの集団感染が発生して以降、クルーズ船の運航停止は8カ月にも及んだ。

 横浜発着3泊のクルーズに330名で乗船。運航再開にあたり横浜港大さん橋国際客船ターミナル内「アスカラウンジ」で開いた会見で、中野裕也横浜市港湾局長は「郵船クルーズと連携して二人三脚でこの日を迎え、感無量だ。神奈川県が開発した検査法『スマート・アップ法』を郵船クルーズが採用してくれた。英断だ。クルーズ再開はコロナからの復活の象徴でもある」と挨拶した。

 坂本深・郵船クルーズ社長は「安全に対する懸念は徹底的に解決しなければならない。万が一、船内感染が出たとしても、ダイヤモンド・プリンセスのような感染拡大が起こらないという自信を持つまで、対策を重ねた」と述べた。

 同社は日本外航客船協会(JOPA)のガイドラインをもとに独自の感染症対策プランを策定。日本海事協会の認証を取得した。全乗客への乗船前PCR検査の実施や、船内検査室で1時間で検査結果を出す体制づくりなど、JOPAのガイドラインを上回る感染症対策を実施し、当面、乗客数を定員の半分程度に抑える。

「飛鳥II」でコロナ感染

 郵船クルーズは「飛鳥II」で桜前線を追いかけるゴールデンウィーク青森・北海道クルーズ7日間を催行した。4月29日午後5時、横浜港を出港。5月1日、青森では弘前公園の桜を愛でる。5月2日は函館で五稜郭の桜を、5月3日は桜前線の最後を飾る釧路の桜を見る。5月4日は総料理長のおもてなしの集大成ともいえるアニバーサリーディナーが開かれる。5月5日午前9時に横浜港に入港するスケジュールになっていた。

 横浜港を出港し、青森を目指し宮城県沖を航行している飛鳥IIで4月30日、乗客の1人が新型コロナ感染していることが判明した。クルーズは急遽中止。飛鳥IIは5月1日午前、横浜港に帰港した。

 郵船クルーズによると飛鳥IIの乗客乗員は720人(うち乗客302人)。乗客は全員、出港の1週間前に検査キットを使用したPCR検査を受けており陰性だった。30日午後に乗船直前に実施した検査の結果が出て、東京都在住の60代の男性の陽性が判明した。男性は乗船後、喉に違和感があったという。男性と濃厚接触者の妻は別々の隔離専用室で待機し、妻は船内の検査で陰性と確認された。ほかの乗客らは症状がなく順次下船した。

 同社によると、船内では手すりの消毒や食事中を除くマスクの着用など常に対策を取っていたという。郵船クルーズの坂本深社長は「このような形でクルーズが休止となり、楽しみにしていた方には申し訳ない」と陳謝した。

 クルーズ運航の再開に水を差したが、コロナ感染に万全の対策を取って臨んだため、現時点ではダイヤモンド・プリンセス号のような集団感染は免れたといえる。

飛鳥IIの後継船はドイツのマイヤーベルフトが建造

 日本郵船は3月31日、「飛鳥II」の後継船を新造し、2025年に就航させると発表した。後継船は高級路線をさらに進化させる。全長は229mでほぼ同規模だが、船の大きさの目安となる総トン数は5万444トンから5万1950トンにアップ。日本船籍の客船としては最大となる。喫水も7.8mから6.7mと浅くなることで停泊可能な港が増え、これまでにないコースを設定できるという。

 乗客定員は872人から約740人に絞る。これにより乗客1人当たりのスペースは世界でもトップクラスの広さを確保した。一方、接客や運航を担う乗組員は約470人と微減にとどめ、乗客1人当たりの接客を手厚くする。「飛鳥II」はツインルーム以上しかなかったが、後継船はシングルルームを設け料金の下限を下げる。全客室にバルコニーを配するほか、船内レストランやカフェ、バーは15カ所以上。船首に向いた展望露天風呂も備える。Wi-Fiも充実させワーケーション需要にも応える。

 新船は環境対策に力を入れる。重油に比べ二酸化炭素(CO2)排出量の少ない液化天然ガス(LNG)を燃料として使えるエンジンを搭載。港によっては停泊中に船内発電機を使わず、陸上電源を利用できる仕様にする。

 乗客の不安を和らげるため新型コロナの感染症対策を徹底する。船内の換気システムを100%外気取り込み方式にし、高性能フィルター、タッチレス操作対応エレベーターの設置を考えている。「飛鳥」と「飛鳥II」はいずれも同じ三菱グループの三菱重工が建造したが、後継船はクルーズ船の建造で定評のあるドイツのマイヤーベルフトと造船契約を締結した。

 三菱重工は2011年、大型客船2隻を1000億円で受注した。大型客船は11年ぶりの受注だったため建造のノウハウが足りず、無線LANの整備や欧米人好みの装飾などの点でつくり直しが相次いだ。納期が約1年遅れた結果、累計で2540億円の特別損失を計上する破目に陥った。三菱重工の宮永俊一社長(当時)は16年10月、10万トンを超える大型客船の建造から撤退すると表明した。

 日本に三菱重工以外に大型客船を建造できる造船所はない。マイヤーベルフトでの建造は“造船王国ニッポン”の落日を象徴する出来事となった。

30以上の地方銀行が船舶投資ファンドに出資

 建造費は非公表だが500億〜600億円とみられる。日本における船舶投資の先駆けである独立系ファンド、アンカー・シップ・パートナーズ(東京・中央区)の船舶投資ファンドで資金を調達する。国内30以上の地方銀行が船舶投資ファンドに資金を出した。アンカー・シップ・パートナーズは郵船クルーズ株の50%を持っている。

 アンカー・シップ・パートナーズの篠田哲郎社長は旧日本興業銀行を母体とする、みずほコーポレート銀行出身。みずほ証券に転出し船舶投資部門を担当してきた。「クルーズ船は日本各地から、乗客を地元の港に連れてきてくれるだけでなく、そこから地元ツアーを楽しんでもらったり、食材を味わってもらったりと、付随的な効果もさまざまある。コロナによって人の移動が制限され、短期的な不確実性が高まるなかでも、『飛鳥』の実績と将来性から、各地の地方銀行に力強くサポートをいただいた」と篠田社長は語っている。

 30以上の地銀が船舶投資ファンドの出資に応じたことは、地方創生の取り組みとして大型クルーズ客船の寄港に期待する声が非常に大きいことを示している。各自治体は下船した乗客の旺盛な消費を期待し、国内外のクルーズ船の招致に力を入れている。

(文=編集部)

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