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「脱ガソリン車」で菅首相の“盟友”日本電産・永守会長、EV用モーターに1兆円投資

  • 2021年1月7日
  • Business Journal

 2020年12月23日、菅義偉首相は自民党の木村弥生衆院議員、日本電産の永守重信会長と会食した。木村議員は日本看護協会政策秘書室長を務めた看護師。17年の衆院選で、選挙区を鞍替えして京都3区から立候補したが、落選し、比例区で復活当選した。菅氏を支援する無所属議員の集まり「令和の会」のメンバー。菅政権の誕生により、20年10月、自由民主党副幹事長に就任した。永守会長は木村議員の支援者である。

 菅首相と永守会長は脱炭素で歩調を合わせている。菅首相は10月26日の所信表明演説で「経済と環境の好循環」を成長戦略の柱に掲げた。温暖化対策として50年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指すと述べた。これを受けて経済産業省は30年代半ばに、国内の新車販売は電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などガソリン車以外にする目標の設定に向けた議論を始めた。

 次世代車の導入では英国が2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売の禁止を決めるなど欧州が先行。中国や米カリフォルニア州も35年までにガソリン車の新車販売を全廃する方針を打ち出している。欧州委員会は30年の温室効果ガス排出削減目標を1990年比で55%とする計画。カリフォルニア州はすべての新車を排ガスを出さない「ゼロエミッション車」にする。

EV用駆動モーターに1兆円投資

 世界的な脱炭素の機運の高まりを追い風に、日本電産は車載事業で攻勢を強め、EV用駆動モーターに最大1兆円規模の投資を行う。永守会長は20年10月26日、オンライン決算説明会で「この事業は50年計画。シェア45%。1兆円の利益を出すような事業」と強調した。

 駆動モーターはガソリン車のエンジンにあたるEVの基幹部品だ。日本電産はモーターとギア、インバータなどを組み合わせたシステム製品「E-Axle(イーアクスル)」を開発し、19年から量産を始めた。これまでに中国の広州汽車集団や吉利汽車系の大手自動車メーカーに採用された。

 攻めの経営を打ち出せるのは業績が急速に回復してきたからだ。日本電産はコロナ禍で稼ぐ力を高めた。20年4〜6月期の連結決算(国際会計基準)の売上高は前年同期比7%減の3368億円だった。新車販売台数が低迷したため、車載部品が567億円と25%減少した。ハードディスクドライブ用モーターなど精密小型モーター事業も1044億円で3%減だった。搬送用ロボットなど機器装置事業は6%減の357億円。新型コロナの感染拡大に伴う設備投資の減退の影響を受けた。

 こうした最中でも、本業の儲けを示す営業利益は2%増の281億円だった。営業増益を確保できたのは、新型コロナを契機に構造改革に取り組んでいるからだ。世界の生産拠点で部品の内製化や共通購買の推進、生産ラインの統合などの合理化を進めてコスト削減に努めた。

「連結売上高がピーク時から半減しても営業の黒字化を死守する」「連結売上高がピーク時の75%でピーク時と同水準の営業利益率を確保する」を合言葉にしている。4〜6月期の売上高営業率は8.3%。コロナ前の前年同期の7.7%を上回った。20年7〜9月期の売り上げは同6%増の4149億円、営業利益は20%増の410億円。営業利益率は9.9%で前年同期の8.7%から1.2ポイント伸ばした。

 収益力が確実についたことで21年3月期の業績予想を上方修正した。売上高は従来予想(1兆5000億円)を500億円引き上げ1兆5500億円、営業利益は150億円上乗せして1400億円とした。営業利益率は9.0%だ。当期利益も従来予想(1000億円)から50億円増え1050億円となる。

 コスト削減で収益力を高めたことに自信を深め、EV用モーターの1兆円投資に挑む。新型コロナによる「巣ごもり消費」でデータセンター向けのHDD用モーターが好調。在宅勤務の拡大でノートパソコンなどに使う超小型モーターの出荷が過去最高となった。

 永守会長はEV用モーターの世界シェアを30年に40〜45%へ高める方針を表明。「過去の経済悪化と異なり市場が回復しても需要が元に戻ることはない」と指摘し、「これからは変化に追随できる企業だけが生き残る」と明言した。

経営トップのスカウトは今後も続くのか

 永守氏は後継者として、ライバル企業などから、さまざまな人物をスカウトしてきたが、お眼鏡に適わず、皆、辞めていった。20年4月、日産自動車の副最高執行責任者(COO)の関潤氏をヘッドハンティングして社長COOに就けた。「変化に追随できる」ことを期待してのトップ人事だった。

 関社長は20年12月23日付読売新聞のインタビューで、「23年までに従業員の年収を平均3割増やす」方針を明らかにした。世界的に脱炭素の機運が高まり、EV用モーターを中心に需要が見込まれるためで、待遇改善で優秀な人材を確保する狙いがある。関氏は企業の合併・買収(M&A)を積極的に進める意向を示し、候補は「20社程度ある」ことを明かした。自動車メーカーとの協業も広げる方針で、「将来的に自前でモーターを作る自動車メーカーはなくなる」とした。

 東京証券取引所の20年大納会(12月30日)の終値の時価総額ランキングで、日本電産(7兆7397億円)は9位につけ、初のベスト10入りを果たした。エレクトロニクス企業ではキーエンスが3位(14兆1060億円)、ソニーが4位(12兆9699億円)。日本電産はこれに続く。村田製作所(16位)、ファナック(24位)、自動車部品の最大手、デンソー(25位)を引き離している。

 自動車業界ではトヨタがダントツの1位(25兆9636億円)で、ホンダ(5兆2123億円、23位)が2番手である。日本電産はノーカーボン時代のEV関連銘柄として期待が高まっている。

(文=編集部)

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