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雪国まいたけ、創業者追放&外資系ファンドによる買収に加担した「第四銀行」の信義違反

  • 2020年9月4日
  • Business Journal

 きのこの生産や販売を手がける雪国まいたけは9月17日、東京証券取引所に再上場する。8月14日に上場承認を得た。市場は1部または2部。同社株を51%保有する米投資ファンドのベインキャピタルが保有株を売り出す。株式の一部は現在49%の株式を保有するコメ卸大手、神明ホールディングスが引き受ける。雪国まいたけは神明の連結子会社となる。

 2000年3月、東証2部に上場。過去の不適切会計や創業家と経営陣との対立で経営が混乱し、15年、ベインがTOB(株式公開買い付け)を実施し、15年6月に上場廃止になった。16年3月期の売上高にあたる売上収益は265億円だった。上場は、およそ5年ぶりとなる。

 ベインと、17年に株式を49%取得した神明のもとでキノコの生産・販売を拡大してきた。20年3月期の売上収益は345億円。まいたけ事業が198億円を占める。同社によると、まいたけの生産量は業界首位だという。再上場後の初の決算となる21年3月期の連結決算は、売上収益が前期比3.2%増の356億円、営業利益は24.4%増の83億円、純利益は17.3%増の50億円を見込む。

 健康志向の高まりもあり、まいたけ事業を中心にきのこの販売を強化。神明のネットワークを活用し西日本での販路拡大に取り組み、海外への本格輸出にも力を入れる。23年3月期までの中期経営計画では、営業利益で年平均7%前後の成長を目指している。とはいえ、上場廃止時に、あれだけのドタバタ劇を演じた会社を、ファンドの出口戦略だけで再上場させていいものなのか。

 雪国まいたけのTOB騒動を振り返ってみよう。

経営陣と取引銀行が仕組んだ奇々怪々なTOB

 創業者である大平喜信氏は6畳一間で起業し、希少価値から「幻のキノコ」と呼ばれていたまいたけの人工栽培、量産化に成功したベンチャー起業家である。不正会計問題で創業社長の大平氏が13年11月5日に辞任して以来、経営の混乱が続いた。

 14年6月27日の株主総会で、会長兼社長に元ホンダ専務の鈴木克郎氏が就任。東亜燃料工業(現・ENEOS)社長、日本銀行政策委員会審議委員、金融庁顧問を務めた中原伸之氏、人工雪のベンチャー企業、スノーヴァ(現・GNU)の元社長の大塚政尚氏と弁護士の荒木和男氏が社外取締役に就いた。

 のちに大平氏は「私は鈴木氏を知らなかった。経営陣に入ってもらおうと考えていた20年来の知人の元大学教授から日銀の審議委員を紹介され、その人物が連れてきた。信頼して取締役に選んだが、社長就任は想定外だった」と語っている。創業者側と鈴木社長が対立。大平氏の親族は、15年3月末までに臨時株主総会の開催を請求した。創業家の意向をくむ取締役を増やして、鈴木社長らの影響力を抑える作戦だった。

 これを、創業者一族を“追放”する絶好のチャンスと捉えたのが鈴木社長などの経営側とメインバンクの第四銀行(本店長岡市、現第四北越フィナンシャルグループ)だった。「ホワイトナイト(白馬の騎士)」として米投資ファンド、ベインキャピタルを招いた。

 ベインは2月24日、雪国まいたけに対する株式公開買い付け(TOB)に踏み切った。買い付け総額は約95億円。創業家側が議決権のある株式の67.33%を所有しており、TOBが成立することは、まずあり得ない。

 そこで奇策に出る。第四銀行は2月23日、担保にとっていた筆頭株主である一族の資産管理会社大平商事と大平喜信氏名義の株式の担保権を行使して筆頭株主(39.23%を保有)に。取引行6行あわせて51.44%の株式を手にした。これで開催許可の出ていた臨時株主総会を無意味なものにした。

 次に銀行6行がTOBに応じ4月6日、TOBが成立。ベインは議決権総数の78%を握る断トツの筆頭株主になった。その後、残る株式もすべて取得した。5月15日開催の臨時株主総会でベイン日本法人の大和田正也副会長ら3人を社外取締役として迎えることを決定。6月16日、上場廃止になった。

「コンプライアンス(法令順守)に問題があるとし、創業者兼大株主を排除するために経営陣と取引銀行が仕組んだ茶番劇」(中堅証券会社)。

 社外取締役の役割や、株主主権とガバナンス(企業統治)の折り合いをどうつけるかなど、数々の課題を残した。

 大平氏は、「第四銀行が融資の担保として預かっていた雪国まいたけ株を売却したのは、信義則に違反し無効だ」として東京地裁に提訴したが、17年6月に棄却された。メインバンク、それも地方の銀行が創業者などの持ち株を担保にとって融資している案件は、数限りなくある。融資期限までに借金が返済されないことなど、現実には珍しくない。

 株主権を行使して、メインバンクが創業者など大株主の株式の名義を書き換えて、筆頭株主となり、しかもTOBに応じてその株式を売却するなどというのはレアケースである。「尋常ならざる事態」(メインバンクに持ち株を担保に入れて融資を受けている地方の企業のオーナー経営者)と受け取る向きは少なくないはずだ。

 ガバナンス上の汚点を残した雪国まいたけを、投資ファンドの出口戦略のためだけに再上場させる。「東京証券取引所の上場審査は、きちんと行われているのだろうか」と疑う声もある。

雪国まいたけを追われた大平氏は高級な黒マイタケの人工栽培に成功

 雪国まいたけを追われた大平氏のベンチャー精神はいささかも衰えていなかった。親族とともに15年6月、大平きのこ研究所(新潟県南魚沼市)を設立して会長に就任。希少で高級な黒マイタケの人工栽培技術を確立した。天然物に近い風味や食感が特徴の黒マイタケは茶色や白の一般的なマイタケの2倍の値段で売れ、関東地方の百貨店や高級スーパーの店頭に並んでいる。

 農林水産省が黒マイタケの人工栽培技術に着目した。大平きのこ研究所は21年までに埼玉県飯能市に面積2万平方メートルの工場を新設し、黒マイタケの年間生産量を2000トンに引き上げる。総投資額は40億円。官民ファンドの農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)が出資する。19年5月期の売上は1億2000万円にすぎないが、23年5月期には20億円を目指す。

 A−FIVEの後押しを得て、大平会長が社長を務めるカナダの現地法人「将軍まいたけカナダ」での大増産を計画している。40億円を投じ工場を拡張し、年間生産量を130トンから3100トンに増やす。カナダや米国の高級飲食店に販売する計画だ。創業した雪国まいたけを、石もて追われた大平氏は、高級黒マイタケを武器にA−FIVEが推進する「日本の食文化の海外輸出」の先兵として蘇ろうとしている。

(文=編集部)

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