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UUUMから人気ユーチューバーが続々流出の裏事情…“再生回数”非依存型へ転換

  • 2020年5月16日
  • Business Journal

 今、YouTuber市場は大きな変化の時を迎えているようである。

 例えばお笑い芸人のフワちゃんは、YouTubeで名を上げたあとにテレビでもブレイクし、数々のバラエティ番組に出演するようになった。また、2人組YouTuberの水溜りボンドは、YouTuberとして初めてラジオ番組『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)のレギュラーパーソナリティに抜擢。このように、他メディアにも進出するYouTuberが目立ってきているのだ。

 その一方、国内トップクラスのYouTuberといっても過言ではないHIKAKINやはじめしゃちょーらが所属する大手YouTuber事務所「UUUM(ウーム)」では、人気YouTuberが他のYouTuber事務所や芸能事務所に移籍したり、あるいは独立したりといった事例が相次いでいる。昨年9月に太田プロダクションに移籍したヴァンゆん、今年2月にフリー転身を発表した木下ゆうからが代表的なところだろう。

 今回はITジャーナリストの高橋暁子氏に、こういったYouTuber市場の変化の理由や、各YouTuber事務所が取り組んでいる新たな試みについて話を聞いた。

広告収入徴収のビジネスモデルの限界

 そもそもYouTubeで収益を得る方法としては、動画の再生時に流れるCMの広告宣伝料、「スーパーチャット」と呼ばれる投げ銭機能、「チャンネルメンバーシップ」という月定額の会員制度、企業とのタイアップによる報酬という、主に4つのルートがある。さらに、事務所に所属しているYouTuberであれば、オリジナル商品の販売やイベントでも収入を得ることが可能だ。

 先述したUUUMでは契約を結んだYouTuberに対し、マネジメントや撮影・制作支援などのサポート、タイアップを獲得するための企業への営業活動などを行っている。UUUMが今のビジネスモデルを確立したのは、いつのことだったのだろうか。

「2013年に設立されたUUUMは、所属するYouTuberがすでにインフルエンサーとしての力を持っていたため、最初は通販で収益を得ようと考えていたようです。しかし想定よりも商品が売れず、YouTuberがタイアップする企業との法人契約で困っていたということもあって、設立から数カ月でマネジメント業務に特化していき、現在の形になりました」(高橋氏)

 そんなUUUMから所属YouTuberの離脱が続出している最大の要因は、手数料の高さにあるという。

「UUUMは基本的に広告料の2割を徴収しているのですが、自力でやっていくことができないわけではないので、多くのチャンネル登録者を集めているYouTuberにとっては、割高に感じられてしまいます。そういったYouTuberは、もっとサポート内容が充実しており、別の方法で収益を得ようとしている他事務所への移籍や独立を考え、UUUMを離れているわけです」(同)

 新興のYouTuber事務所ではどうやら、広告料をアテにしないビジネスモデルを探っているらしい。その背景には、YouTubeの一方的な規約変更による影響もあるそうだ。

「YouTubeの規約は、昨年だけでも30回くらい細々と変更が加えられていて、最近では、子ども向け動画へのターゲティング広告の掲載が停止されました。こうした規約変更はギリギリまで知らされないため、ある日突然広告が掲載できなくなる、収益が上がらなくなる、チャンネルが停止させられる……といった事態がしばしば発生します。そのあたりの事情や、UUUMのような大手事務所を打倒するための策として、投稿動画の再生回数に依存しない戦略を打ち出す事務所が増えているということですね」(同)

プラットフォームを使いこなす新ビジネスモデルの創出

 では具体的に、どんなYouTuber事務所が新しいビジネスモデルを生み出そうとしているのだろうか。

「一例として『Guild(ギルド)』という事務所は、広告料ではなく企業からのタイアップ広告費を収益源とし、撮影費等をそちらから出すという形を取っています。マネジメント料も、案件ごとに価格を定めたクリアな体制になっており、YouTuberとしては出費が固定で企業がタイアップ案件を取ってきてくれるので、基本的にはプラスになるのです。

 一方で『Zeppy(ゼッピー)』という事務所は、投資分野に特化しているため、ターゲティングの精度が高くなっています。また、購買力のあるユーザーに対して高額な商品の広告を掲載できるため、広告再生単価がアップ。そのためZeppyのビジネスモデルは、企業にとってはターゲットが明確なのでタイアップや広告の掲載がしやすく、事務所やYouTuberにとっても広告の再生単価が高いため、収益につながりやすい形態だといえるでしょう」(同)

 また、YouTuberの他メディアへの進出も、再生回数に左右されない生存戦略の一環なのだと高橋氏は語る。

「YouTuberの方々にお話を伺ったり、公開されている情報から調べたりしたのですが、多くのYouTuberは広告収入だけだと、大した収益を挙げることはできません。会場のレンタルや撮影機具の調達、人件費など、撮影に関わる費用もかなりかかるので、YouTube以外のSNSやテレビなど、多メディアにまたがって活躍することで収益の底上げを図るという考え方になったようです。

 逆にテレビや雑誌などのメディアにとっても、若いユーザーを呼び込むためにインターネットやインフルエンサーの力を活用したいという思惑があります。例えば『VAZ(バズ)』に所属しているねおさんは、YouTubeやTikTokでインフルエンサーとなっていたため、女性ファッション誌『Popteen』にスカウトされて読者モデルになりました。

 このように、広告収入だけに頼れないYouTuberと、縮小しつつあるメディアの考えは、ちょうど合致しています。それが理由で、YouTuberが他メディアで台頭する機会が増えてきているのではないでしょうか」(同)

 YouTuberや彼らの所属事務所が新たなビジネスモデルを創出し、すでにテレビなどで活躍している俳優・タレントがYouTubeに進出するなど、状況が変わってきている国内のYouTuber市場。最後に、その展望を高橋氏に占ってもらった。

「今のYouTubeは、検索市場の最大手であるGoogleのサービスであり、1兆6000億円以上の広告収益を挙げているので、よりサービスとして盤石になっています。つまりYouTubeには、今後もうまく利用していく価値がありますし、ビジネスの手段としてYouTuberに参入する方は増加していくことでしょう。

 また、新型コロナウイルスの流行に伴う休校やテレワークの影響で、YouTubeの視聴時間は非常に伸びています。テレビなどと違い、情勢に応じた新規コンテンツが出しやすいこともあって、現在のYouTubeはチャンスの場だといえるのです。これからは今までにない、新しい種類のコンテンツが生まれてくるかもしれないですね。一方で、この騒動で広告主が減少しているため、YouTuberの広告収入は減少傾向にあり、広告収入だけに頼る危うさが証明された形となっています」(同)

 かねてからの再生回数に依存しないビジネスモデルの模索、そして視聴時間の増加によって、まさに激動の渦にあるYouTube。世界のあり方すら変わりつつある昨今、そこから新たなビジネスやエンタメの可能性が開花することに期待したい。

(文=佐久間翔大/A4studio)

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