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ホワイト企業化したワタミに“性根がブラック経営者”の渡邉氏復帰…労働環境に懸念広まる

  • 2019年12月9日
  • Business Journal

 ワタミの創業者である渡邉美樹氏が10月、8年ぶりに同社の代表取締役会長に復帰した。ワタミは過酷な労働を強いる「ブラック企業」との批判を受け、一時は営業赤字に陥るなど不振に陥ったが、祖業ブランドの「和民」を鶏料理をメインに据えた居酒屋に転換し、業績は回復基調にある。

 そうしたなか、「ブラック企業経営者」のイメージが残る渡邉氏が再びワタミを率いることになった。同氏のもとで、はたしてワタミは完全復活できるのか。

 渡邉氏は1984年にワタミの前身を創業。2009年にワタミの代表取締役会長に就いたが、11年の東京都知事選に出馬するため退任。落選後の12年には常勤の取締役として復帰したが、参院選に立候補するため13年に退いた。参院議員の任期を終え、19年7月に取締役に就き経営に復帰。10月に代表取締役会長に復帰した。

 ワタミでは08年に、新入社員が過労自殺するという痛ましい事件が起きた。それが明らかになると、同社には批判が殺到。以降、同社の労働環境に対して厳しい目が向けられるようになった。13年にはブラック企業大賞企画委員会の「ブラック企業大賞」に選ばれるなどワタミ批判が吹き荒れた。

 こうした批判の影響もあり客足は遠のき、14年3月期と15年3月期に巨額の最終赤字を余儀なくされた。売上高は、渡邉氏が参議院議員になった14年3月期にピークに達し1631億円を計上。だが、以降は下降の一途をたどり、19年3月期には947億円まで低下した。この間に売上高は4割減った。

 だが、業績は底を打ちつつある。19年3月期は減収となったものの、前期からの減少率は1.8%と微減にとどまった。15年3月期と16年3月期に赤字だった営業損益は、19年3月期まで3年連続で黒字を確保し、営業増益が続いている。総合居酒屋「和民」「わたみん家」を、鶏料理メインの居酒屋「三代目鳥メロ」「ミライザカ」に転換するように進め、ブラック企業のイメージが強い“わたみ”の名を隠したことが奏功した。

「社員の幸せ日本一」を標榜

 こうした経緯を経て渡邉氏は復帰したわけだが、ワタミのあるべき姿として掲げている「社員の幸せ日本一」と、11月15日発表の「中期経営計画」に盛り込んだ「29年3月期に連結売上高2000億円、営業利益100億円」を実現できるかが焦点となる。

 はたして、渡邉氏のもとで「社員の幸せ日本一」は実現できるのか。渡邉氏が不在の間にワタミが「ホワイト企業」化したとの指摘がある。同社は労働環境の改善を目的に、14年に外部の有識者を交えた「コンプライアンス委員会」と「業務改善委員会」を設置。労働環境改善の取り組みを進めてきた。

 こうした機関を中心として、働き方改革を推進。メンタルヘルスについて相談できる窓口を設置したほか、店休日の設定や営業時間の短縮などを実施して従業員の負担を軽減したり、長時間労働を防ぐために勤務時間の管理を強化するなどし、対策を講じてきた。16年には、同社初となる労働組合が発足した。

 こうしたことが実を結び、労働環境は改善。17年3月期に7.9日だった月間の平均公休日数は、19年 4〜9月期には9.0日まで増大したという。また、17年3月期に36.4時間だった月間の平均残業時間は、19年4〜9月期には5時間強減って31.2時間になったという。

 こうした状況に鑑みると、ワタミはホワイト企業化したといっていいのかもしれない。ただ、これらは渡邉氏が経営の一線を退いた後に実現したことであり、渡邉氏の復帰とともに再びブラック企業化しないか、一抹の不安はある。

 渡邉氏は参議院議員だった昨年3月13日の参院予算委員会で、過労死遺族を前に「お話を聞いていると、週休7日が人間にとって幸せなのかと聞こえる」と発言し、遺族から抗議を受けて謝罪に追い込まれている。この発言から、渡邉氏の性根はブラック企業経営者のままだと指摘する向きもある。周囲は注意する必要がありそうだ。

売上高を10年で2倍にする目標

 渡邉氏のもとで打ち出した、今後10年で売上高を今の倍となる2000億円、営業利益を100億円にする目標の達成に向けた動向にも関心が集まる。達成に向けて、新規事業では特に、岩手県陸前高田市で計画している農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」が注目されている。有機・循環型社会をテーマとし、農場や食品加工施設、レストラン、物販施設などで構成する農業テーマパークになっている。東日本大震災から10年となる21年3月11日に開業予定だ。

 国内の外食事業ではフランチャイズチェーン(FC)展開の強化が目玉施策だ。これまでの店舗展開は直営店が中心だったが、今後はFC店の拡大を図っていくという。演出家のテリー伊藤氏と組んで昨年11月に1号店を出した新業態のから揚げ店「から揚げの天才」は、直営で店舗展開を始めたが、今後はFC展開を進める考えだ。「三代目鳥メロ」など複数の業態でも、FC展開を始めるという。

 調理済み商品を消費者に届ける宅食事業の強化も図る。同事業は高齢者が主要顧客で、高齢者以外は開拓が遅れていたが、今後はこうした層を積極的に開拓していく方針だ。また、法人向け宅配も強化していくという。

 こうした施策で目標の達成を狙う。だが、足元の業績は必ずしも思わしいものではなく、目標達成の出鼻をくじかれている。11月14日発表の19年4〜9月期連結決算は、売上高が前年同期比2.5%減の453億円、営業損益が2億9200万円の赤字(前年同期は4億400万円の赤字)と、苦戦を強いられた。

 国内の外食事業は、業態転換が奏功して既存店売上高が前年を上回るなどしたため、売上高は3.0%増の233億円と増収を達成した。ただ、営業損益は3200万円の赤字(前年同期は6700万円の赤字)で、前年同期から改善したものの黒字化には至らなかった。

 外食と並ぶ主力事業の宅食事業も冴えない。前年9月時点に比べ、平日1日当たりの宅配食数が8000食減って23万2000食になったことが響き、売上高は8.2%減と大きく落ち込んでしまった。営業利益は生産体制の見直しにより34.5%増の9億2100万円と好調だったが、大幅な売り上げ減のため、喜べないだろう。

 海外の外食事業が振るわなかったこともあり、19年4〜9月期の売上高と営業利益は、ともに従来予想を下回った。20年3月期通期の見通しは変えず、売上高は前期比1.6%増の963億円、営業利益は3.5%増の11億円を見込むも、達成が危ぶまれる。渡邉氏は労働環境と業績の両面で、あらためて手腕が問われている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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