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メルカリ、7期連続赤字で黄色信号…業績“非開示尽くし”&撤退ラッシュに失望広まる

  • 2019年11月13日
  • Business Journal

 フリマアプリのメルカリは9月27日、東京ミッドタウンで定時株主総会を開き、創業者の山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)の社長復帰を決めた。山田氏が社長に復帰するのは2017年以来2年ぶり。スマートフォン決済「メルペイ」の展開や課題の米国事業の立て直しを図る。小泉文明社長兼最高執行責任者(COO)は取締役President(会長)に就いた。小泉氏は7月に買収を決めたサッカーJ1の鹿島アントラーズの経営や経団連など財界の活動に専念する。

 株主の評価は厳しいものだった。総会後に公開された臨時報告書によれば、山田氏の再任の賛成率は70.97%、小泉氏は76.80%にとどまった。東証マザーズに上場して初の総会となった18年の株主総会では、2人とも88.37%の賛成があった。1年間で山田氏は17.41ポイント、小泉氏は11.57ポイント支持率を落とした。山田氏はメルカリを24.67%保有(自己株式を控除後)する筆頭株主。同氏を除く株主の4割近くが反対票を投じた計算になる。

 メルカリは企業価値が10億ドル(1000億円強)を超える「ユニコーン」として注目を集め、18年6月19日に新規株式公開(IPO)し、約600億円の資金を調達した。高い成長性を期待した個人投資家の資金が流入。5000円の初値をつけ、公開価格3000円を2000円(67%)上回った。取引時間中に値幅制限幅の上限(ストップ高)となる6000円まで上昇。これが上場来の高値である。

 だが、上場半年後の18年12月26日、株価は上場来安値となる1704円に沈んだ。きっかけは米国と並ぶ海外事業の柱と位置付けてきた英国事業からの撤退だった。創業者の山田CEOは、「(英国の)利用者が保守的で、なかなかインストールしてくれなかった」と撤退の理由を語った。

 メルカリは米アマゾン・ドット・コムのようなプラットフォーマーを目指して新事業を次々と立ち上げたが、ことごとく失敗。この1年で撤退を表明したのは、即時買い取りの「メルカリNOW」、旅行ブログの「メルトリップ」、シェア自転車の「メルチャリ」など。山田氏は「2020年6月期は日米フリマとスマートフォン決済のメルペイの3本柱に集中する」と、方針を転換した。

情報開示されないメルペイ

 19年6月期連結決算の売上高は前期比45%増の516億円、最終損益は137億円の赤字(18年同期は70億円の赤字)となった。13年の創業以来、7期連続の赤字である。8月8日開かれた決算説明会は、フリマアプリ「メルカリ」の利益のほとんどを注ぎ込んで立ち上げたメルペイについて、山田CEOが何を語るかに関心が集まった。ところが、メルペイに関して開示されたデータは、2月のサービス開始から4カ月間で登録者が200万人を超えたということだけ。1カ月に延べ1350万人が利用するメルカリを引き合いに「200万人は通過点」(小泉COO)とアピールしたものの、決済サービス、メルペイの利用者数や取扱金額は明らかにしなかった。

 スマホ決済市場は、消費増税によるポイント還元が始まった10月にシェア争いの最初の山場を迎えた。そこに向けて各社は大々的なキャンペーンを繰り広げてきた。メルカリがメルペイに関して、情報をまったく開示しなかったことに、出席したアナリストたちの間に失望が広がった。なぜなら、7月24日に19年1〜6月期決算を発表したLINEは、スマホ決済「LINEペイ」の詳細を開示していたからだ。LINEはLINEペイのキャンペーン費用が重荷となり、連結最終損益が266億円の赤字だったが、LINEペイの国内利用者数について初めて「月間490万人」と開示。継続利用率は8割を超えたと明らかにした。「先行投資は4〜6月期がピーク」(出澤剛社長)との説明も買い材料になり、株価は翌日から2日間で15%上昇した。

 一方、メルカリは赤字続きの米国事業の先行きもはっきりしない。20年6月までに月間流通総額1億ドル(約106億円)にする計画で、「達成できれば収益化のメドが立つ」としているが、具体的な数字は非開示だ。米国撤退を予想するアナリストもいる。失望売りが広がり、8月8日から2日間でメルカリの株価は22%下落した。

 創業者の山田氏が社長に復帰し、成長に挑むと宣言したが、株価上昇の起爆剤にならなかった。10月18日の株価の終値は2312円。公開価格割れに沈んだままだ。時価総額は3553億円。上場初日につけた8119億円と比較すると4割強の水準だ。

地域密着型のJ1鹿島アントラーズを運営

 メルカリにとって唯一のグッドニュースは、サッカーJ1の鹿島アントラーズの買収である。鹿島は旧新日本製鉄と統合した旧住友金属工業のサッカー部が母体。今年4月、新日鉄住金は日本製鉄に社名を変更し住金が消えた。このタイミングで鹿島アントラーズを売却したことになる。旧住金の鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)と地域一体のチームとして運営してきた時代は終わった。

 鹿島の運営会社は日鉄が59%出資していたが、メルカリに大半を譲渡した。8月30日、メルカリは経営権を取得。取得額は約16億円だ。鹿島はJリーグに1993年の発足時から参加し、国内三大タイトル戦で最多19回の優勝回数を誇る強豪。メルカリの小泉社長(当時)は買収会見で、「フリマアプリは20代から30代女性の利用が多い。(鹿島買収は)男性にアプローチする上では大きい」と指摘。アントラーズファンのメルカリ利用に期待を寄せた。

 サッカーの運営は地域密着が基本だ。メルカリは日鉄同様「鹿島を活動拠点とするチーム」であることを条件に運営の切符を手に入れた。しかし、メルカリはフリマアプリで広く知られる消費者に近いネット企業。地域一体の運営ができるという保証はない。全国の不特定多数の消費者を対象にするネット企業に、地域に密着するノウハウはあるのか。「鹿島アントラーズの運営がうまくいかなくなったら、すぐに転売するのでは」(関係筋)という声も聞こえてくる。

 鹿島アントラーズの明日を予言するような“事件”が起きた。サッカーJ2のFC町田ゼルビアのサポーターミーティングが10月11日夜、開かれた。チームのオーナーになったサイバーエージェントの藤田晋社長が「早ければ来季にチーム名を『FC町田トウキョウ』と改称する」と語った。

 藤田社長は「サイバーエージェントは上場企業。大きな投資をする場合、(株主らに)合理的証明が必要だが、成長ストーリーを描くことで納得してもらえる」とし、「マーケット拡大と選手育成は急務。(人口43万人の)町田だけでやるのは難しい」と述べた。チーム名に首都の名前を入れ「町田を拠点に東京全域でマーケティングを展開し、東京ブランドを生かす」と強調した。優秀な外国人選手やスポンサー獲得にも有利になる、と利点について述べた。チームロゴやキャラクターの変更も伝えた。現在のキャラクター「ゼルビー」はスタジアムマスコットとして活用するという。

 ミーティングでは「サポーターの声を聞いてほしい」「(藤田社長の提案は)ダサイ」「名前とエンブレムを拠り所に応援してきた」などの異論が噴出。藤田氏は「決定を保留する」としたが、「もうすべてが決まっていて、セールス活動も動きだしている」(関係者)という情報もある。鹿島アントラーズで同じことが起こる可能性もある。

7〜9月期決算は最終71億円の赤字

 11月7日、メルカリは2019年7〜9月期の連結決算を発表した。最終損益は71億円の赤字(前年同期は28億円の赤字)。スマホ決済の「メルペイ」の新規利用者獲得のためのキャンペーン費用がかさんだ。売上高は前年同期比38%増の145億円。国内のフリマアプリの流通総額は同28%増の1268億円。伸び率は19年6月期(通期)の41%から鈍化した。営業損益は70億円の赤字(同25億円の赤字)。

 20年6月期の連結業績予想は、今回も公表していない。第1四半期決算の赤字幅拡大を受けて11月8日、メルカリの株価は一時、2035円(500円安)のストップ安となった。将来的な成長イメージに不透明感が増している。

(文=編集部)

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