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武蔵小杉人気の転換点に…タワマンの脆弱性露呈、11棟中2棟のみ停電&断水の原因

  • 2019年10月16日
  • Business Journal

 全国55河川で堤防が決壊し、74人が亡くなった(16日正午現在)台風19号。各地で被害の全容が明らかになる中、東急東横線武蔵小杉駅(川崎市中原区)近くのタワーマンションの惨状が注目を集めている。「サラリーマン憧れのタワーマンションは脆弱なのか」という疑問もインターネット上で指摘され始めた。住みたい街ランキングの上位を占め、都心への交通の便の良さや駅前の買い物環境、周辺の景観などで人気を博してきた街に何があったのか。16日、現地を取材した。

日常の街と非常事態のマンション

 今回の台風で甚大な被害を受けたタワーマンションは同地区に11棟あるうちの2棟。最も被害の大きかったのは47階建て、高さ161メートル、計643戸の物件だった。武蔵小杉駅から徒歩2分の好立地に建ち、中原区役所や東急スクエアなども近い。周辺の道路には浸水のなごりか、うっすらとカーキ色の泥の跡が残る。一方で、商店やホテルなどには多くの買い物客が訪れ、いつも通りの日常に戻りつつあった。

 そんな街の一角で、泥だらけの作業員らが復旧作業を行っていた。47階建てのタワーマンションは16日午前中も1階から24階部分で停電が続いていた。作業員らが地下駐車場からホースで水をくみ上げる作業を黙々と続ける。午後1時前、大きな機器を積んだトラックが地下駐車場に入った。電気設備か水道ポンプ関連の機器だろうか。

 駐車場の入り口は全開で、入れ代わり立ち代わりトラックやライトバンに乗ったさまざまな工事業者が出入りする。そんな作業員に交じって、玄関から大きなトートバックに生活用品や洋服を満杯にして向かいのホテルに向かう住民の姿も多くみられた。

 工事関係者によると24階まで停電し、エレベーターも動いていないという。雨水が地下駐車場から地下3階の配電設備に浸水してインフラがダウンした。マンションはオール電化施設だったため、水道ポンプへの配電も途絶し、全戸で断水したという。

 大きな荷物をトートバックに詰めて玄関から出てきた住民女性は「ちょうど真ん中より下の階に住んでいるので、避難先の向かいのホテルに洋服を運ぶために階段を何往復もしています。もう疲れました」とくたびれた表情で語った。

 同駅周辺では、マンホールや下水溝から下水が逆流し、道路が冠水したという。水は最大時で1.5メートルほどの高さまで水が上がったという。実際に浸水被害があったのはタワーマンション2棟とマンション街区北側にある昔からの住宅街だ。住宅街では床上浸水し、住民らが雨に濡れた家財道具の処分に追われていた。近くに住む男性は「水があがってくるまで10分くらいしかなかった。一瞬だった」と被害当時を振り返った。

 武蔵小杉の再開発の起点は2007年、現在タワーマンション街のある場所に立地していた工場の移転が契機になった。10年にJR横須賀線の駅が開き、開発が加速。そして現在の姿になった。

 これまで東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県や、西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市などを取材してきた。今回の武蔵小杉の状況を見て純粋に疑問に思ったのは、再開発地区全体のタワーマンションが被害にあうのではなく、なぜ一部のマンションのみで被害が発生したのかという点だ。被害のあった2棟と他9棟で、例えば土地の高低が目に見えて違うということはないように思えた。

なぜ被害は11棟中2棟だったのか

 日本全国に想定を超える被害をもたらした台風19号だったが、今後もゲリラ豪雨など突発的な災害は起こり得る。今回の被害をタワーマンションは防ぐことができなかったのか。また、台風は武蔵小杉という地域ブランドに対して深刻なダメージを与えたが、今後、影響はないのか。榊マンション市場研究所代表の榊淳司氏は次のように解説する。

「多くの方々が今回の問題に関心を寄せているのは、『もしかしてタワマンは災害に弱いのでは』という懸念があるからです。今回の件では同地区のタワーマンション11棟のうち9棟が無事という点に注目しています。

 建築基準法では、1時間50ミリ程度の雨量を排水できる能力をタワーマンションなどに求めています。今回の台風では、高さ1.5メートルまで水の高さがあったことを考えると基準を超える雨量ではあったとは思いますが、そう考えるとなぜ、ほかの9棟が無事だったのかという疑問が残ります。

 ここからは推測ですが被害の大きかった2棟では、台風当時、駐車場への雨水の流入阻止が十分にできていなかったのではないかと思います。その結果、地下の電気設備への浸水も許したということです。

 地下駐車場の入り口のシャッターを閉め、出入り口に土嚢を積むだけで今回の浸水は防げたはずです。電気設備を水密扉などで完全防水にするのは現実的ではありませんし、高さ1.5メートル程度の水量であれば通常のシャッターで一定時間以内なら防げます。被害のなかった9棟では、シャッターや土嚢などの対策が施されていたのではないかと推測しています。

 当時、多摩川周辺には避難勧告などが出ていました。仕事から帰ってくる人もいたでしょう。シャッターを閉めっぱなしにすることはできなかったのかもしれません。また、マンホールが跳ね上がるほどの急激な降水量の増加を考えれば、水嵩が増えるのはあっという間だったとも思われます。気が付いた時には手遅れという可能性もあります。

 地下駐車場は電気設備や水道関連設備が集中しているタワーマンションの心臓部に通じる重要な場所です。『警報が出たら駐車場の出入りを一切禁止にしてシャッターを閉じる』というような自治会ルールをつくったり、土嚢を出入口に積んだり、各種対策を練ったほうがいいでしょう。

 今回の一件で、武蔵小杉ブランドが被ったダメージは甚大だと思います。例えば、東日本大震災時に新浦安や海浜幕張で液状化現象が発生しました。震災全体の被害に比べれば、局地的なものでしたが、海浜幕張のマンションの坪単価は数年かけてじわじわと半分くらいまで下がりました。人は災害の記憶を忘れません。

 武蔵小杉駅は朝の通勤ラッシュの過酷さも近年問題視されていました。今回の被害が、『武蔵小杉人気』の転換点になってしまうかもしれません」

 武蔵小杉の件も含め、台風被害の全容はいまだにわかっていない。今回の台風で何があって、何ができなかったのか。全容解明と検証は必要だろう。

(文=編集部)

 

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