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病気ではないが深刻?「恋愛依存症」の対処法

  • 2019年11月9日
  • All About

■恋愛依存症とは……正式な病名ではないが他の依存症との共通点も
「恋愛依存症」というものは、正式な精神疾患名ではありません。しかし、アルコール依存症やギャンブル依存症など、他の依存症と同様、日常生活がうまく回らなくなるほど恋愛に対する依存がひどくなり、深刻な状態になってしまうケースは実際にあるようです。

恋愛は誰にとっても心理的なアップダウンを伴いやすいものですが、一般的に「恋愛依存症」といわれるほど深刻な状態になってしまう原因は何でしょうか。病気でないので治療法というと語弊がありますが、克服法や対処法にあたるものはあるのでしょうか。

ここでは精神疾患である他の依存症と、いわゆる恋愛依存症との類似点・関連なども含め、恋愛依存による問題を深刻化させないためにおさえておきたいポイントや、考えられる原因、対処法などを、精神医学的な面から詳しく解説します。

■恋愛なくして生きていけないと感じる「恋愛依存」
「恋愛依存症」といわれるような状態になると、その恋愛が終わってしまえば、毎日の生活が成り立たなくなるばかりか、自分の人生も全て終わってしまうと強く思い込んでしまうほど、恋愛が自身にとって必要不可欠なものになっています。

恋愛をすること自体には、もちろん何も問題などなく、多くの人にとって恋愛はごく自然で大切なものです。そして実際に誰かを好きになったときには、相手のことが気になって仕方がなくなったり、目先のことが上の空になってしまったりと、気持ちの上で何かしらの影響が出てくることもまた自然なことです。

告白が成功したときも、交際中も、残念ながら失恋・破局してしまったようなときも、恋愛には大きな気持ちの動きが伴います。しかし嬉しいときでも大きなショックを受けたときでも、通常であれば、恋愛が原因で社会生活が成り立たないほど深刻な精神状態になってしまうことは、あまりないものです。

恋愛も他の依存症と同じく、一般的なレベルでは何の問題もないものですが、度が過ぎると適切な対処が必要になってしまう可能性もあります。

たとえば、恋愛中は気持ちが通常ではないほどに不安定になりがちで、交際相手に暴力をふるったり自傷行為をしたりといった過激な形で気持ちをぶつけてしまうといった傾向がある場合。あるいは、相手が気になる気持ちに歯止めがきかなくなり、返信がなくても一日に数十通ものメールを送ったり、電話をかけたりせずにいられない。

特定の相手に限らず、誰かに愛されているという実感がないと不安でたまらなくなり、破局した後は相手を選ばずに恋愛関係を求めようとしてしまう……といった状態の場合、日常生活にも当人の人生にも、大きな支障が出てきてしまうと思います。

相手からやめるよう頼まれたり、後になって自分で後悔するような行動を放置していると、問題が深刻化し、「恋愛依存」と形容されるような状態になってしまう可能性もあります。その前に、恋愛依存的な芽に気付くことが、後々の大きな問題に対する適切な対処の最初のポイントになることは、ぜひ頭に入れておいてください。

■恋愛依存症の原因でもある「ドーパミン」とは
そもそも依存症は、精神疾患の基本的なカテゴリーの一つです。

アルコール依存症、ギャンブル依存症などの代表的な依存症の他にも、依存症の原因になり得る問題はいくつかあります。買い物依存症やゲーム依存症なども、依存症として対処される問題です。このように依存症の種類は様々ですが、実はどの依存症にも「ドーパミン」と呼ばれる脳内物質が関わっています。

ドーパミンは、脳内の「神経伝達物質」と呼ばれるものの一つです。神経伝達という言葉が表す通り、神経細胞間の情報伝達を担っています。ドーパミンがどのように依存症に関わっているかは、この物質がどのような際に機能するものかを知っておくと分かりやすいでしょう。

依存症で依存の対象となる物や行為は、それが何であれ、それによって気持ちがスカッとする、あるいは憂うつな気持ちが軽くなるなど、何らかの「快」の気持ちが伴います。

通常、その「快」の気持ちはその場限りの一時的なものですが、同じ気持ちを求めて、また同じ行為をしたくなることがあります。この気持ちが自分でもコントロールできなくなってしまうのが、依存症の基本的な問題です。

具体的には、ギャンブル依存症の場合、大勝ちしてそれまでの日常で経験したことがないような高揚感を感じたことが依存のきっかけになってしまうことは少なくありません。ギャンブルであれアルコールであれ、高揚感を感じているとき、脳内で大量に分泌されるのが「ドーパミン」です。

再び同じような高揚感を味わいたいと思うことは、再びドーパミンの大量分泌を求めている状態だということもできます。見方を変えれば、ギャンブル依存症の場合でも、当人が本当に求めているのはギャンブルという行為自体ではなく、この脳内のドーパミンの大量分泌ともいえる面があるのです。

■恋愛依存症でドーパミンが分泌されるわけ
もしいわゆる恋愛依存症というような状態になっている場合、当人は恋愛中のどこかしらのタイミングで、気持ちが軽くなったり、強く高揚したりという状態を実感しているはずです。

では、いったい恋愛の何が原因でそうなるのか? 言葉を変えれば、恋愛において何がドーパミンを大量に分泌させるのかを知ることも大切です。

同じような恋愛依存的な状態であっても、ドーパミンが大量分泌されるきっかけは、人によってかなり違うものです。

例えば、恋愛の始まりに相手に初めて出会ったときの「理想の相手をついに見つけた!」という強い気持ちのときめきで、ドーパミンが大量分泌された人もいるかもしれません。また、相手と親密な時間を過ごして日ごろの嫌なことを全く忘れているようなときに、ドーパミンが大量分泌される人もいるでしょう。

あるいは、「あなたなしでは生きていけない」といったような相手からの言葉やしぐさで、それまで低かった自意識や自己肯定感が高まり、気持ちの高揚でドーパミンが大量分泌されることもあります。

このように一言で恋愛依存といっても、恋愛において何に「快」を強く感じているのかがはっきりすれば、それが生み出す可能性のある問題のタイプと対処法も分かってきます。

たとえば、出会ったときの恋愛において最も高揚感が高いという人は、同じような「快」を求めて、まだ会ったことのない理想の誰かをいわば無意識のうちに強く求め続けてしまうことがあるかもしれません。

あるいは、自分が必要だと相手に伝えられることで高揚感が強まる場合、常に同じような言葉を強く求めてしまうため、相手がそのような言葉を言わない状態が続くと、気持ちが不安定になってしまったりもします。

実際は、こうした問題が日常生活に影響を与えるほど深刻化することは少ないものですが、それでも恋愛に関して自分は何を求めているのか、どこで気持ちが強く高揚するのかをあらためて考えてみると、それまで気付かなかった自分の意外な一面を知ることができるかもしれません。

■恋愛依存症の克服方法・治療法
一般にも広く知られてきていますが、依存症の治療は、その依存の対象自体を完全に断ち、それなしで毎日をしっかり送れる、新しい自分にチェンジしていくプロセスです。

たとえばアルコール依存症の場合は、断酒です。ほんのわずかでもアルコールが体に入ると飲酒行為に全く自制がきかなくなってしまうため、とにかくアルコールを断ち続けることが、治療のゴールと一般にみなされています。

ギャンブル依存症の場合も同様で、一度でもギャンブルを再開してしまうとやはり自制できなくなってしまうため、ギャンブルを断ち続けることが治療のゴールです。

では、恋愛依存症の場合も同じように対処すればよいのでしょうか? 恋愛すると問題が生じるなら、人を好きになることを避け、恋愛を断ち続けることが克服法だといえば、ほとんどの方が「それは違う」と思われるはずです。

なぜなら、恋愛そのものは多くの人の人生にとって必要不可欠ともいえる性質のものであり、それがなくても生きていける「アルコール」や「ギャンブル」とは明らかに違うものだからです。

それゆえ、恋愛依存の場合は、依存の対象となる恋愛を避けるのではなく、恋愛中に問題行動が深刻化してしまわないように工夫し続けることが基本的な対処法になるといえます。

克服法・対処法としては、他の依存症治療よりも、過食症などの摂食障害に近い面があるともいえるでしょう。「食べること」も日常に密接で、人が生きていく上で必要不可欠なものであり、断つことは不可能なものなので、対処を工夫することが基本的なアプローチになります。

では、具体的にはどのような工夫をしていけばよいのでしょうか? まずは先述した通り、漠然と「恋愛」と捉えるのではなく、自分が恋愛のどのタイミングで何に対して「快」を感じるのかをはっきりさせると、それが見えてくるかもしれません。

例えば、相手から「あなたなしでは〜〜」といった言葉をかけられることで気持ちが高揚するとわかったなら、相手からどうやってそのような言葉を引き出し続けるかに執着するのではなく、そのような言葉で高揚する根本的な原因、つまり、ここで言うなら、普段の低い状態の自意識や自己肯定感に対して、どのように適切に対処していくかを考えることが、遠回りのようでも、事態に対する最善の対処法になりえるといえます。

以上、恋愛依存症の原因と対処法・克服法について詳しく解説しました。

最後に繰り返しになりますが、恋愛依存症を脱するためには、まず自分の中にある原因を知ることが大切です。恋愛時の何で気持ちが昂揚するか、言い方を変えればドーパミンが大量分泌されるのかという面から考えてみると、意外な気付きと、克服の糸口が見つかるかもしれません。

中嶋 泰憲(医師)

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