「1000万円以上貯めている人」は、“何もかも完璧にしている人”だと思ってはいないでしょうか。貯めベタさんから「自分は家計簿をつけられないから貯蓄は無理」と諦めの声も聞かれますが、実は完璧でなくてOKなんです。
■貯蓄上手な人は、意外と“完璧”ではなかった
“貯蓄ベタさん”の話を聞きますと、“貯蓄上手な人”は「家計簿をしっかりつけている」「口座残高やお財布の中身を常に把握している」「無駄な出費は絶対にしない」という具合に、お金に完璧なタイプに見えるようです。
ところが、私は「1000万円以上貯めている人」など、多くの貯蓄上手な人を取材してきましたが、実は貯蓄上手な人は“完璧を目指していない”ことがわかりました。
押さえるところは押さえつつ、自分ができないことは適当、ざっくり……そのように、完璧を目指していないからこそ、長年の貯蓄に成功しているようです。
■立派な朝食を作れないからといって、食べるのを諦める人はいない
ここで、「朝食をつくること」でたとえてみましょう。焼き魚やほうれん草のおひたし、出汁巻き卵などがずらりと並ぶような“和定食”は魅力的ですよね。でも忙しい人が、そのような朝食を毎日作るのは大変です(少なくとも、私にはできません……)。
でも、できないからといって「朝食は諦めて、食べずに出かける!」なんてことにはならないもの。
「前夜の残ったお味噌汁を温め、炊いたご飯、納豆プラスアルファのおかずでカンタン和定食にする」と考える人もいれば、「朝食はスピード重視。トーストかシリアルでパパッと済ませて、ランチや夕食で食事をゆっくり楽しむ」と考える人もいることでしょう。
これは、貯蓄の考え方でも同じです。「家計簿がしっかりつけられない」「銀行口座を確認するのが苦手」「つい無駄な買い物をしてしまう」。だから「自分は貯蓄ができない人」と早急に諦めたらもったいない。いきなり“完璧”を目指さず、自分に合ったやり方を見つけていくことが貯蓄の秘訣なのです。
■「絶対に○○する」というスタンスは、失敗のもと
では、1000万円以上の貯蓄がある人は、どのようなスタンスなのでしょうか。
例えば、「(節約のために)毎日自炊する!」と決めている人ばかりではありません。外出で疲れたり、ずっと家にいたとしてもストレスが溜まったりすることもあり、「今日は家で料理できないな……」と感じることもあるでしょう。
そんなときは、おかずだけ買って帰り、家にストックしてある冷凍ご飯と一緒に食べたり、「今日は災害用にストックしているカップラーメン!(賞味期限がそろそろだし)」と思いきり簡単にすませたり。肩の力を抜いて、ほどほどのがんばりが続けられるように行動しているのです。
“絶対に”などと思っているとストレスが溜まり、「自炊なんて、無理!」ということになりますものね。これは、家計簿のケースでも同様です。
忙しいのに、1円単位で毎日すべての出費を手書きでつけている人には、めったに出会いません。「流動費(月によって出費の変動があるもの。食費や外食費、交際費、日用品代など)だけスマホの家計簿アプリでつける」「レシートを取っておき、週末にチェックする」というくらいの人も多くいます。
なかには「家計簿を全くつけていない」という人も。お給料が入ったらすぐに貯蓄を別の口座に移す仕組み(財形貯蓄など)をつくっていて、手元にあるお金をすべて使っても貯蓄は確保され、出費の内訳を見なくてもいいというのが理由です。
もし、貯蓄0円から超短期間で100万円貯めたい場合は、ストイックに節約したり、出費や貯蓄と向き合ったりすることでも、目標額が少額で短期間であれば貯められるかもしれません。短い距離なら、息を止めても走ることができるのと似ています。
一方で、“貯蓄1000万円以上”となると、長期間にわたります。息を止めて“完璧”を目指しつづけていたら、どこかで挫折してしまいます。
貯蓄上手への道は、“完璧”を目指さないこと。ぜひ「ほどほど」の感覚で、少しずつできることから始めてみてください。
文:西山 美紀(ファイナンシャルプランナー)
出版社に勤務し、編集・マーケティングに携わった後、フリーライターとして独立。女性誌やビジネス誌などで、貯蓄法や子育てにかかるお金の貯め方などをテーマに取材し、原稿・コラム執筆などを行っている。
西山 美紀(ファイナンシャルプランナー)