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Q. シャンプーの「経皮毒」は子宮に溜まり危険? 不妊症リスクが心配です【薬学部教授が回答】

  • 2024年6月19日
  • All About

「経皮毒」というものは科学的に実在するのでしょうか? 「経皮毒は子宮に蓄積する」「化学物質が経皮毒になり、不妊症になる」といった情報は本当なのか、わかりやすく回答します。
■Q. 経皮毒が子宮に溜まって、不妊症になったのかもしれません。どうすれば解毒できますか?
Q. 「不妊治療中です。先日友達から、市販のシャンプーなどに含まれている化学物質が『経皮毒』として子宮に溜まることや、それが原因で妊娠しにくいんじゃないかといったことを言われました。

髪や頭皮に使う成分が子宮まで到達して、毒素が溜まってしまうことは本当にありますか? 子宮に溜まってしまった毒素は解毒できますか? 最初はウソだと思いましたが、ただの貼り薬の湿布の成分なども体に浸透して影響すると知って、とても不安になっています」

■A. 経皮毒というものは科学的に存在しません。だまされないでください
結論から申し上げると、「経皮毒」などというものは科学的に存在しません。誰かが勝手に作った造語であり、学術用語としても存在しません。非科学的な説明でおどされて、何らかの製品を買わされそうになったりはしていませんか? だまされないように注意しましょう。

まず確認しておきたいのは、私たちの体の皮膚は分厚い組織の層でできていて、頭皮も含めて「強靭なバリア」の役目を果たしている、ということです。皮膚はそうそう簡単に物を通してはくれません。たとえば、手のひらに細菌やウイルスが付着しても、それらが皮膚に浸み込んで、体内に入って感染することはありません。

感染予防のために手指を洗うのは、汚れた手で食品を持って食べてしまったり、他の部位のように皮膚で覆われていない目や鼻の粘膜を触ってしまったりすることによる感染を防ぐためです。

薬の中には、「湿布」のように皮膚に貼り付けることで成分が吸収されて、効果を発揮するように作られているものもあります。しかし薬の有効成分である化合物の分子サイズは、非常に小さなものです。かつ、油脂になじみやすい脂溶性のものにすることで、ごく一部を皮下まで浸透させることを可能にしています。

ただし、同じような性質をもった化合物を作ったとしても、どれもが皮膚から吸収されるわけではありません。薬を作る過程では、皮膚からの吸収率を高めるために、特別な添加物を使用するなどの工夫がされています。

もし皮膚に貼るだけでどんな薬の成分でも効果を発揮できるなら、非常に便利なことですし、すべての薬は貼り薬になっているでしょう。しかしわざわざ皮膚を通過させて体内に届かせることができる薬は、きわめてまれです。だからこそ、ほとんどの薬が内服もしくは注射で用いられているのです。

また、ご質問にあるように、シャンプーなどの成分が皮膚を通って体内に入り子宮だけに溜まるということは科学的に考えられません。それを裏付ける証拠などもありません。不妊などで悩んでいる方の不安をあおろうとして、あることないことが吹聴されているにすぎません。

聞くところによると、人工合成された成分を含んだ製品は毒であると説明する一方で、天然成分を含んだシャンプーや化粧品を勧めてくる事業者もいるようです。おそらく「人工添加物は毒、天然成分は体にやさしい」という漠然としたイメージを悪用した商法なのでしょう。

しかし、「天然成分なら安心・安全」という考えもまた、それ自体が大きな間違いです。そもそも自然界には、毒や未知の成分がたくさん存在しています。先人たちがそうした危険なものを避けられるように、素材を選び、適切な取り扱い法を考えてきてくれたからこそ、今の私たちが比較的安心して自然のものを利用できているだけです。

もし無知なまま自然のものを利用したら、命を落とすこともあると心得るべきです。毎年食中毒で亡くなる方が後を絶ちませんし、最近の機能性表示食品で多くの被害者を出した成分も細菌由来の「天然成分」と伝えられています。

その一方で、人工添加物は、あらかじめ安全性試験が行われています。一定の規格や基準が定められたうえで、使用が認められていますので、わからないことが多い天然素材よりも、よほど安全で、健康被害につながる可能性は限りなく低いと考えるべきです。

悩みを抱えている時に、それを解決するような方法が提示されると、「そうなのかな」と信じてしまいそうになるのは、自然な心理ですが、疑うことをやめてはいけません。残念ながら、悩みを抱えている人に対して、お金儲けの目的で非科学的な製品を売る商法は、いつの時代にも存在しています。その罠にはまらないようにしましょう。

▼阿部 和穂プロフィール薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。

阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)

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