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「生態系サービス」 詳細解説

読み:
せいたいけいさーびす
英名:
Ecosystem Services

生態系がもつ機能のうち、水や食料、気候の安定など、人間が生きていくために必要で役立つ自然の恩恵を、生態系サービスと呼ぶ。国連は、2001年から2005年まで実施した生態系に関する総合的評価である「ミレニアム生態系評価(MA)」の中で、人類に対する生態系の役割や貢献を生態系サービスと定義して評価を加えた(生態系サービス評価:ESR)。MAは、生態系の働きを、1) 食料や水、木材などの「供給的サービス」、2) 気候などの「調節的サービス」、3) レクリエーションなどの「文化的サービス」、4) 物質循環などの「基盤的サービス」、の4つに分類。これらをさらに24項目にわけて分析している。

MAの評価によると、過去50年間で1) 穀物、2) 家畜、3) 水産養殖、4) 気候調節の4項目の働きは促進されたものの、漁獲や木質燃料、遺伝資源、淡水、災害制御をはじめとする15項目で低下している。そして、生物多様性がそこなわれた結果、自然環境による生態系サービスの提供能力が減少しているとして、意志決定を行う場合に生態系サービスの価値を考慮することや、生態系への悪影響が少ない技術への投資などを各国政府に提案した。わが国は、2007年11月に閣議決定された第3次生物多様性国家戦略で、生態系サービスの評価を含めた、生物多様性の総合的な評価・分析を行うことを決めた。

2008年に神戸で行われたG8環境大臣会合で採択された「生物多様性のための行動の呼びかけ」には、2010年までに生物多様性の損失速度を減少させる「2010年目標」を達成するため、生物多様性と生態系サービスに関する科学的な情報を各国政府や国民に提供することを促進することなどが明記された。2010年目標は、2002年にハーグで行われた生物多様性条約第9回締約国会議(COP6)で採択され、ヨハネスブルグ・サミットの実施計画にも盛り込まれている。2010年は、国連が定めた「国際生物多様性年」でもある。同年に愛知県で開催されるCOP10は、生物多様性条約にとって大きな分岐点となる会議であり、生態系サービスが重要なテーマになることが予想される。

生態系サービスは、企業活動などビジネスの分野でも注目され始めている。企業の社会的責任(CSR)に基づく取り組みに加えて、生態系サービス評価(ESR)を指標として用いることで、自社の事業活動が生態系や自然に与える影響が明らかになる。また、生態系の維持や管理、再生に関するビジネスチャンスをつかむのに役立つ。世界資源研究所(WRI)は、企業が生態系サービスに関するリスクとチャンスを管理するための戦略を開発するガイドラインである「企業のための生態系サービス評価」を作成し、公表している。

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