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「エコツーリズム推進法」 詳細解説

読み:
えこつーりずむすいしんほう

エコツーリズムは、エコロジー(環境、生態学)とツーリズム(観光旅行)を組み合わせた造語だ。環境省の資料によると、国際的な自然保護機関であるIUCN(国際自然保護連合)は、エコツーリズムを「自然地域の中で観察し、研究し、楽しむ観光」と定義している。世界的な環境保護意識の高まりや、自然体験のニーズが増えるにつれて、目的地を通り過ぎるだけの観光や、大勢で観光地を大挙するいわゆるマスツーリズムを脱却し、環境に配慮しながら地域の自然や文化、人と触れ合うエコツアーを行う動きが広がった。それが理念として構築され、運動となったのがエコツーリズムだ。

エコツーリズムは、IUCNやWTO(世界観光機関)、UNEP(国連環境計画)などの国際機関や団体からも支持され、世界各国でエコツーリズムを推進する取り組みが官民あわせて行われている。わが国も、政府のエコツーリズム推進会議が2004年にまとめたエコツーリズム憲章やエコツーリズム推進マニュアルなどはあったが、法的な拘束力のある制度ではなかった。こうした中、エコツーリズム推進法(以下「推進法」)が議員立法として国会に出され、2007年6月20日に成立した。エコツーリズムを適切に推進するための総合的な枠組みを定めた法律だ。施行は2008年4月1日で、施行から5年で見直しを含めた検討が行われる。

推進法は、地域の自然環境の保全に配慮しながら、地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムを進めることを目的とした法律だ。そこではエコツーリズムを、観光旅行者が自然観光資源について知識のある人から案内や助言を受け、その保護に配慮しつつ自然観光資源と触れ合い、知識や理解を深めるための活動と定義。その上で、次の推進方策を定めている。1) 政府によるエコツーリズム基本方針策定、2) 地域の関係者によるエコツーリズム推進協議会設置、3) 地域のエコツーリズム推進方策の策定、4) 地域の自然観光資源の保全。これらを通じて、エコツーリズムを通じた自然環境の保全や、観光と地域の振興、環境教育の推進などを目指している。

このうち、基本方針は、エコツーリズムに関する政府の基本的な方針を示すもので、法律が施行される前に策定される予定だ。また、推進協議会は、エコツーリズムを行う市町村などが組織するもので、ガイドや旅行業者、NPO、住民などさまざまな関係者が参加して、エコツーリズム推進全体構想をつくる主体となる。全体構想は、政府の基本方針に即した地域ごとのエコツーリズムの進め方などを決めるもので、主務大臣(環境、国土交通、農林水産、文部科学)の認定を受けることで、許認可に関するさまざまな配慮がある。また、国は、認定を受けた市町村に対する広報支援を行うなど、地域のエコツーリズム実現に関する施策を展開することとなっている。

一方、市町村は、認定された全体構想に基づいて、特定自然観光資源を指定することができる。推進法の大きな特徴は、自然観光資源として、動植物の生息地などの自然環境だけでなく、自然環境と密接に関係する風俗慣習などの伝統的な生活文化も含めていることだ。なかでも、市町村が指定する特定自然観光資源は、観光旅行者の立ち入りなどによる損傷から保護を図るべきもので、それを汚損、損傷することは禁止され、罰則もある。また、自然環境を保全するため、利用者の数を制限することなどもできる。さらに、推進法は、観光旅行者に自然観光資源についての案内や助言を行うガイドなどの事業者を特定事業者として位置づけ、エコツーリズムに自主的、積極的に取り組むことや、観光振興に寄与することを求めているので、今後、ツアーガイドの役割がますます重要となる。

わが国には、エコツーリズムに早くから取り組んでいる知床や小笠原、西表などの地域がある一方で、推進法の施行を機にエコツーリズムの導入を検討している市町村も多い。それぞれの市町村が地域の資源や魅力を活かしたエコツーリズムを実現しようという機運が高まっている。

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