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「名古屋議定書」 詳細解説

読み:
なごやぎていしょ
英名:
Nagoya Protocol

2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(COP10)には、179の締約国や国際機関、NGO/NPOなどから約1万3000人の関係者が参加。遺伝資源の採取・利用と利益の公正な配分(ABS)に関する取り決めの「名古屋議定書」と、2011年以降の新たな戦略計画の「愛知目標(愛知ターゲット)」が採択されるなど、生物多様性を守るための国際的な約束が多く交わされた。ABSについては2006年にブラジルで開かれたCOP8で、遅くともCOP10までに国際的な枠組みの策定交渉を完了することが決まり、話し合いが続いていた。

COP10では、開発途上国が多い遺伝資源の提供国と、医薬品などのバイオ産業に利用する先進国の意見が対立し、議論は平行線をたどった。提供国側は、利益配分の対象を議定書が発効する以前にまでさかのぼる「遡及適用」や、遺伝資源を加工した「派生物」を対象に含めることなどを主張したが、利用国側は負担の軽減を求め続け、閣僚級会議でも合意を得られなかった。しかし、議長国である日本が提案した調整案を双方が受け入れ、最終日の30日未明に議定書が採択された。

名古屋議定書では結局、遡及適用や派生物などは利益配分の対象から外されたが、ワクチン開発に不可欠なウイルスをはじめとする病原体については、先進国が率先利用することが認められた。もちろんこの場合も、企業などは適切な利益配分を行う。また、途上国への多国間資金援助の枠組みが設けられることとなった。名古屋議定書の主な内容は次のとおり(政府公表資料よりばっすい)。

1) 遺伝資源の利用により生じた利益を公正に配分することで、生物多様性の保全と持続可能な利用に役立てる
2) 議定書は、生物多様性条約の範囲の遺伝資源と関連する伝統的知識、それらの利用により生じる利益に適用する
3) 遺伝資源と関連する伝統的知識の利用によって生じる利益は、相互合意条件に基づき公正に配分される。また、締約国は必要な立法・行政・政策上の措置を取る
4) 遺伝資源の利用などについて事前の同意を求める締約国は、ABSに関する要求の法的確実性や明確性、透明性を確保するため、立法・行政・政策上の措置を取る
5) 非商業目的の研究や緊急事態について配慮する
6) 遺伝資源が国境を超えて移動するのに事前同意を得られない場合、締約国はABSを実現するための多国間による仕組みを検討する
7) 締約国は、自国で利用される遺伝資源が他国の法規制に基づく事前同意に従って採取・利用されるための措置を取る
8) 締約国は、遺伝資源の利用などを監視するためのチェックポイントを1つ以上指定する
9) その他

名古屋議定書は、50以上の国・地域が批准して90日後に発効する。日本も早期に批准する見込みだが、CBD自体に参加していない米国には適用されないなど課題はある。COP/MOP6とCOP11は2011年10月にインドで開催される。

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