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「福田ビジョン」 詳細解説

読み:
ふくだびじょん
英名:
Fukuda Vision

福田総理は2008年6月9日、「『低炭素社会・日本』をめざして」と題する講演を東京の日本記者クラブで行った。その内容は、同年7月に開催された北海道洞爺湖サミット(G8)に向けた日本の地球温暖化対策の道筋を示すもので、「福田ビジョン」と呼ばれる。同ビジョンの中で福田総理は、地球温暖化問題を解決するために、低炭素エネルギーの導入など環境への対応を徹底した低炭素社会への転換の必要性を強調。「産業革命後につくりあげられた化石エネルギーへの依存を断ち切る」と明言し、世界全体での取り組みと日本国内の国民運動を同時に進めていくことが必要とした。また、低炭素社会実現への挑戦を、単なる負担ではなく、新たな経済成長の機会としてとらえるべきであると指摘。その実現のヒントとして、自然との共生を基礎とする日本の伝統や文化などをあげている。

焦点の温室効果ガス削減の長期目標については、「クールアース構想」にある、2050年までに世界全体でCO2排出量を半減することと、日本として、同年までに現状から60〜80%の削減を掲げることなどを確認した。また、今後10年から20年ほどの中期目標について、2020年までに現状から14%の削減(EUと同程度の削減レベル)という数値目標を掲げ、産業分野別に温室効果ガスの排出削減可能量を算出して、国全体の削減量を積み上げる「セクター別アプローチ」の適用によって実現を図るとした。一方、削減の基準年については、1990年にこだわることなく、日本の国別総量目標を2009年中に発表する考えを明らかにした。

同ビジョンの提案を受けた7月の北海道洞爺湖サミットでは、長期目標については、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%削減を達成する目標を、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の全締約国と共有し、採択することを求めることで合意した。また、中期目標については、全ての先進国間で排出量の絶対的削減を達成するため、野心的な中期国別総量目標を実施することで合意した。さらに、セクター別アプローチについては、中期目標策定と各国の排出削減を進める上で有用な手法との評価を得た。

同ビジョンでは、低炭素社会の実現に向けた具体的な政策として、1) 革新技術の開発と既存先進技術の普及、2) 国全体を低炭素化へ動かしていくための仕組み、3) 地方の活躍、4) 国民主役の低炭素化、の4つをあげている。このうち、国全体を低炭素化へ向けて動かすための仕組みとしてあげたのが、1) 排出量取引と2) 税制改革だ。福田総理は、前者の排出量取引について、EUで2005年から始まった域内排出量取引制度などの実績をあげ、日本でも効果的なルールを提案すべきであると指摘。2008年秋から、多くの業種・企業の参加を得て排出量取引の国内統合市場の実験を開始することを明らかにした。一方、後者の税制改革については、同年秋に始まる税制の抜本改革の検討の際に、低炭素化促進の観点から環境税をはじめとする税制のグリーン化に向けた議論を行うとした。

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