サイト内
ウェブ

「自然資本」 詳細解説

読み:
しぜんしほん
英名:
Natural capital

環境に優しく持続可能なグリーン経済を実現するには、再生可能エネルギーやエコカーなどの技術革新だけでなく、自然の恵みを評価して経済的価値に換算し、適切に管理していくことが必要だ。このように自然環境を、企業経営を支える資本としてとらえる考え方を「自然資本」という。自然資本は、企業情報開示の新たな枠組みである「統合報告」においても非財務情報のひとつに位置付けられ、CSR(企業の社会的責任)経営の新たな基軸になりつつある。

国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)の定義によると、自然資本は、土壌、大気、水、植物相、動物相など地球の自然財産から構成される。これらの要素から生み出される生態系サービスは、食物、繊維、水、健康、エネルギーなどあらゆる分野に及び、世界で年間何兆ドルもの価値につながっている。しかし、これらのサービスや自然資本のストックは、金融資本や社会資本に比べて正当に評価されず見過ごされてきた。自然資本の適切な評価は、人類がいかに自然の恩恵を受けているかを再認識する動きにつながる。

自然資本は、2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で公表された報告書「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)により注目された。また、2012年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「リオ+20」では、自然資本が主要なテーマとなった。UNEP FIの「自然資本宣言」もこの年に公表されている。同宣言には多くの金融機関が署名し、日本からは三井住友信託銀行が署名を行っている。

さらに、同年4月には「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)が設立された。IPBESは、生物多様性IPCCとも呼ばれており、事務局機能の一部は地球環境戦略研究機関(IGES)に設置されている。国内でも、ソニー、ネスレ、キリンホールディングス、積水化学など多くの企業が自然資本を適切に評価し、管理する取り組みを始めている。自然の価値と、自然資本に対する環境負荷を「見える化」して企業会計に取り込むことは、環境会計のトレンドとなりつつある。

一方、農林漁業者の中には、自然資本を活かした生物多様性保全について、さまざまなステークホルダーとの間で経済的な連携を構築しようという動きが見られる。農林水産省は2014年に、「自然資本を活かした農林水産業の手引き」を公表した。また、里山での生活を資本主義社会の欠陥を補うサブシステムととらえて、里山の活用を推奨する「里山資本主義」も、自然資本を重視した考え方として注目される。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。