事業を通じて社会的な課題を解決しようとする「ソーシャルビジネス」が盛んになる一方で、消費者の間にも、オーガニックやフェアトレード、ロハスなど、地球や社会にやさしい消費行動をとる動きが見られるようになっている。こうした中、「エシカル」(ethical)という言葉が、海外や日本の企業関係者や先進的な消費者の間で、環境や社会への配慮を表す新たな概念として注目されている。環境に配慮した消費行動のことを、エシカルコンシューマリズムと呼ぶ。また、CSRやコーズマーケティングの視点から、エシカルを重視する企業は多い。
エシカルはもともと、「倫理的」や「道徳的」などの意味をもつ英語だ。欧米では1980年代から、地球環境の有限性や、人権や労働などの面から企業活動をチェックして商品やサービスを購入・利用する消費行動に通底する理念として認識されていた。英国では1990年代後半に、当時のブレア首相がエシカル政策に力を入れると明言し、フェアトレードなどの市場を押し上げた。日本では、2009年の「アースデイ東京」が「Go! Ethical」をテーマに行われた。2011年には、日本初のエシカルファッションメディアである「ETHICAL FASHION JAPAN」がスタートした。
米国のシンクタンクであるエシスフィア・インスティテュートは、世界で最もエシカルな企業を毎年選出し、公表している。日本からはこれまでに、花王、資生堂、リコー、日本郵船などが選ばれている。エシカルを事業活動の基軸として、地域や社会に貢献しようという企業もある。東京に本店を置くジュエリーブランドの「HASUNA」は、エシカルジュエリーを扱う専門ブランドとして、資源の保護や自然環境の保全に配慮した事業を展開している。
2014年2月に北海道札幌市で開催された「グリーナーウィーク」では、日本で初めてエシカルに関する国際シンポジウムや展示会、ファッションショーなどが行われた。埼玉県さいたま市の商業施設「ルミネ大宮」は、2014年6月に「エシカル」について考えるキャンペーンを行った。一方、国際青年環境NGO のA SEED JAPANは、鉱物資源などを利用するメーカーに対してエシカルな金属調達を求めるキャンペーン活動を展開している。
地方自治体の間にも、エシカルを市民の消費行動を変えるきっかけとして活用する動きが見られる。京都府は、2014年3月に策定した消費者教育推進計画に、消費者市民社会の構築に向けた気運を盛り上げる施策の一環として、「エシカルコンシューマープロジェクト」を実施すると明記した。また、静岡県は、エシカル消費に対応した個々の店舗を登録して、地域商業の活性化を図る制度を設けている。