サイト内
ウェブ

「キャップ・アンド・トレード」 詳細解説

読み:
きゃっぷ・あんど・とれーど
英名:
Cap-and-Trade

1997年12月に京都で開かれた「気候変動枠組条約第3回締結国会議」(COP3)では、先進国などに対して、CO2など6種の温室効果ガスを、2008〜2012年の第1約束期間に、1990年比で削減することを義務づけ、国ごとに法的拘束力のある削減目標を定めた(日本は6%、全体で5.2%の削減)。また、目標達成のために、1) 温室効果ガスの排出量取引(排出権取引)、2) クリーン開発メカニズム(CDM)、3) 共同実施(JI)などの「京都メカニズム」が導入された。このうち、排出権取引は、国や先進国の企業同士が、温室効果ガスの目標超過分または不足分を「排出権」として市場で取引する仕組みだ。

内閣府の報告によると、世界銀行がまとめた2006年の世界の排出権取引市場は、取引量でCO2換算16億トン、取引額では300億ドルを超えている。排出権取引には、大きく分けて1) キャップ・アンド・トレード方式と2) ベースライン・アンド・クレジット方式の2種類がある。キャップ・アンド・トレードは、あらかじめ温室効果ガスの排出枠に上限(キャップ)を設定し、排出枠を割り当てられた参加者間の自由な売買(トレード)を認める方法だ。先進国に温室効果ガスの排出量の上限を設定している京都議定書の枠組みの下では、キャップ・アンド・トレードによる排出権取引がなじみやすいといわれている。また、温室効果ガスの排出量を対象部門ごとに制限できる点や、市場メカニズムを活用して費用対効果の高い地球温暖化対策を実施できるなどの利点がある。一方のベースライン・アンド・クレジットは、温室効果ガスの排出削減プロジェクトなどを実施し、プロジェクトがなかった場合と比べた排出削減量をクレジットとして認定し、そのクレジットを取引する方法だ。CDMなどがベースライン・アンド・クレジットにあたる。

京都メカニズムのうち、EU域内排出権取引制度(EU−ETS)など各国で実施、検討されている制度の多くはキャップ・アンド・トレードで、排出権の多くは無償で配分される。また、キャップ・アンド・トレードについて情報共有や共同研究を進め、国際的な排出権市場の創設を目指す「国際カーボン・アクション・パートナーシップ」(ICAP)が、欧米の約20団体により2007年10月に設立された。米国では2006年、北東部7州が、キャップ・アンド・トレード方式の排出量削減プログラムの実施に向けた模範規定案に合意して話題となった。日本の環境省が2005年度に開始した「自主参加型国内排出量取引制度」も、キャップ・アンド・トレードにあたる。キャップ・アンド・トレードにおける排出枠の割り当てには、1) グランドファザリング(排出枠を過去の排出実績などに応じて無償で配分する方法)と、2) オークション(公開入札)、3) ベンチマーク(一定のエネルギー効率を前提として排出権を配分する方法)の主に3種類がある。

このように、欧米で先行して導入されているキャップ・アンド・トレードの効果に対して、日本の経済界からは疑問視する声が上がっている。実質的にエネルギー使用量を政府が決定・管理するもので、排出枠を公平に課すことが難しいというのが大きな理由だ。日本経団連は、すでに日本の産業界は自主的取り組みで地球温暖化対策について成果を上げてきたとして、キャップ・アンド・トレードの国内への導入に反対の姿勢を示している。一方、WWFなど、地球温暖化対策に取り組む環境NGO/NPOは、キャップ・アンド・トレードによる排出権取引と環境税などの環境政策を組み合わせることで、脱炭素社会へ移行を促すべきだと主張している。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。