ビジネス【福岡スタイル】春の”迷惑飛散”、7割は大陸から

  • qBiz 西日本新聞経済電子版
【福岡スタイル】春の”迷惑飛散”、7割は大陸から

「今日は飛散、すごいみたいですね」。春先に東京で誰かがこう言えば、暗黙の了解でスギ花粉の話が始まるだろう。

ところが、福岡市をはじめ九州に暮らす人たちが警戒する“迷惑飛散”は三つある。それは「花粉」「黄砂」「PM2・5(微小粒子状物質)」。熊本以南だと火山灰も加わる。

黄砂は、東アジアのゴビ砂漠などから強風で大気中に舞い上がる細かい砂だ。浮遊しながら大気汚染物質や微生物が混ざって、人の健康に影響を与えるとされる。国立環境研究所の調査によると、心臓病、脳卒中などの循環器疾患の救急搬送件数は、黄砂濃度が高い日は黄砂が来ない日に比べ21%も増えるという。

日本で黄砂の観測は3〜5月に集中する。福岡市街地が黄土色にかすんだら、それは黄砂だ。2011〜15年の5年間で気象庁が観測した日数は、東京が2日しかないのに福岡は31日もある。大陸に近いがゆえのデメリットだ。

■発がんリスクは最高レベル

PM2・5は大気中に浮遊する微粒子のうち、大きさが2・5マイクロメートル(毛髪の断面の30分の1)以下のものの総称。工場ばい煙や自動車排ガスの窒素酸化物、硫黄酸化物や、大気中でアンモニアが化学反応してできるものなど数百種類ある。細かい黄砂も含まれる。たばこの煙も立派なPM2・5だ。

粒子径が小さすぎるため、肺の奥まで入り込むのが一番やっかいなところ。ぜんそくや気管支炎など呼吸器系への影響が指摘されており、世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)は13年、PM2・5の発がんリスクを5段階の最高レベルに分類したと発表した。

国はPM2・5の環境基準を、1日平均値で大気1立方メートル当たり35マイクログラム以下(1年平均値は15マイクログラム以下)と決めた。都道府県が注意喚起を行う際の目安となる暫定指針値は70マイクログラム(以下、単位略)としている。

つまり、「今日は70を超える可能性がある」と福岡県が予測発表したら、健康な人でもできるだけ外出を減らし部屋の窓を閉じた方がよい、という意味だ。35超え(70以下)は「健康な人は神経質に身構えなくてもよいが、呼吸器系、循環器系、アレルギーの各疾患がある人は影響が出やすいから用心してほしい」(福岡市環境保全課)という指標となる。

■「海の向こう」では済まない

福岡市内でPM2・5のやや高い値が測定されるのは主に秋から春。特に濃度が高くなるのは黄砂飛来と重なる5月だ。

市民の問い合わせ急増を受け、市は毎日、PM2・5が35を超過するかどうかの予測情報をホームページ、防災メール(登録者のみ)、電話の自動応答で流している。ほとんどの自治体が国の指針に沿い「70超過」の予測発信で足並みをそろえる中、「呼吸器系などの病気がある人を対象」にした独自の対応だ。NHK福岡放送局は朝夕のテレビニュースや昼の気象情報で市の予測情報を欠かさず伝えている。空がもやっとしたら、あちらこちらで「今日もPMかな」の言葉が飛び交うくらい浸透している。

日平均35超えを計測した日数は年間27〜45日(11〜15年度、15年度は2月末まで)。70超えは過去5年間で5日あり、最高値は105・5(11年5月2日)。ちなみに、東京都内は測定開始以来、70超えは一度もない。

アメリカ環境保護庁は251以上を、「大いに危険」を上回る「緊急事態」レベルと分類している。中国・北京では100台はざらで、「400超え」も珍しくない。天安門広場がスモッグにかすみ全員マスク姿の映像に、もう驚かなくなった。
だが、それは九州だと「海の向こうの話」で済ませられない。

「越境大気汚染」を研究している海洋研究開発機構の金谷有剛氏は、PM2・5の成分解析などから、九州の年平均濃度の中国からの寄与率を61%、朝鮮半島からを10%と計算した。福岡市で計測されるPM2・5の7割が「大陸由来」なのである。参考までに関東の大陸由来は39%。

快適な福岡ライフだが、「空気」と「中国」の関係には敏感にならざるを得ないのだ。

※本コメント機能はFacebook Ireland Limited によって提供されており、この機能によって生じた損害に対して弊社は一切の責任を負いません。

ビジネス新着記事一覧

新着記事一覧

キーワードからさがす