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海野和男のデジタル昆虫記

田村栄 昆虫の生態

田村栄 昆虫の生態
2007年12月14日


 戦後の昆虫写真の元祖は田村栄さんだろう。1951年発売の写真集「昆虫の生態」にはクロシジミの幼虫とアリ、カリバチの生活など、当時としては画期的な写真が多数掲載されている。ちなみに定価1500円とある。その8年後の田淵行男の「高山蝶」よりも物価を考えれば高かったのかもしれない。
 ライカにビゾフレックスという組み合わせで撮影された写真群は、たった今撮影された写真のように鮮明で、内容も現代の昆虫写真家が撮影しているものに勝るとも劣らない。決して昆虫撮影には向いていないと思われる、このような機材で、よくここまでの撮影ができたものだと思う。フイルムは感度が低く、ストロボなどというものもない時代である。
 もう10年近く前だろうか、田村さんとはSSPの講演会で一度ご一緒した、というよりも田村さんに当時の話をお聞きしたいと企画した講演会だった。
 田村栄さんは2003年に他界された。なくなる直前に、小学館の週刊日本の天然記念物に田村さんのことを書いた。
 先日ニッコールクラブの撮影会で田村さんの娘婿の方にお会いした。田村さん一家は、田村さんの父親が写真好きで、それが田村栄を写真の世界に導いたと言うことだが、娘さんの連れ合いの方も写真をやっておられるのである。
 当時はまだ戦後で、物資の乏しい時代である。巻末には撮影のヒントや、機材について解説がある。
 「使用フイルムや現像液を大体決めておくことが写真の常識といえるのだが、戦後のわが国の状態では、「手に入るものは何でも」ということにならないわけには行かない。最近では印画紙に関するかぎり、このような事情はほとんど解消されているが、感光度の点、粒状の点などから、フイルムではまだなんとしても外国製品を使わなければ35mm判のよさを十分に生かすことはむずかしい。」
 と書かれている。巻末の詳しい撮影技法は、ぼくより先輩の昆虫写真家たちに大きな影響を与えたと思う。この本がなければ、その後の昆虫写真の発展は相当に送れたのではないかと思う。

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