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「入梅(にゅうばい)」の頃に、おすすめの食べ物は?

  • 2025年6月11日
  • ウェザーニューズ

2025/06/11 05:15 ウェザーニュース

今年も梅雨の時季がやってきました。5月16日頃の九州南部を皮切りに、6月9日までに東海以西で梅雨入りが発表されています。

節分など季節の移り変わりを示す日を「雑節(ざっせつ)」と呼び、その一つに梅雨の始まりを知らせる「入梅(にゅうばい)」があります。今年は今日6月11日(水)が雑節の入梅です。


入梅の頃に美味しいといわれる、おすすめの食べ物にはどんなものがあるのでしょうか。歳時記×食文化研究所代表の北野智子さんに教えて頂きました。

梅の実が熟す頃に始まる「入梅」

まず、新暦の6月前後に続く長雨を梅雨、梅雨入りを入梅と、植物の梅にちなんで呼ぶのはなぜなのでしょうか。

「日本ではちょうど梅の実が熟し始める頃に雨季が始まるので、これを梅雨と呼ぶようになりました。

農家にとって梅雨入りを知ることは、田植えの時期を見極めるために大切です。そのため、江戸時代の暦学者が長い雨季の始まりの目安として、暦に『入梅』を設けたといわれています」(北野さん)

旧暦では入梅の日をどのように定めているのですか。

「二十四節気の一つに穀物の種をまく頃という意味の『芒種(ぼうしゅ)』が6月6日頃にあります。その直後の『壬(みずのえ=水の兄)』の日を入梅としました。太陽が黄経(おうけい)80°に達した時で、新暦では6月11日前後にあたります。

梅雨明けは『小暑(しょうしょ=7月7日頃)』直後の壬の日と定められていますが、もちろん実際の梅雨入りはその年の天候次第で変動します」(北野さん)

季節の移ろいを示す「梅暦」

梅にちなんだ気象を示す言葉は、梅雨のほかにもあるのでしょうか。

「日本には昔から、梅の開花から実が色づき、熟すまでの季節の移ろいを示す『梅暦(うめごよみ)』という、風情あふれる暦がありました。

梅は早春にいち早く春の到来を告げて咲くことから『春告草(はるつげぐさ)』とも呼ばれました。

そのうえで、まず旧暦12月(新暦1月)は梅が咲き始める月なので『梅初月(うめはつづき)』、2月は梅見をするので『梅見月(うめみづき)』、5月は『梅色月(うめいろづき)』といい、6月の入梅を迎えます」(北野さん)

「梅雨どきは梅の実が黄色くなる時季ですので、この頃の雨は『黄梅雨(きづゆ)』とも呼ばれます。

そのほか、梅雨入り前のぐずついた天気を『走り梅雨(はしりづゆ)』、新緑に降り注ぐ雨を『青梅雨(あおつゆ)』、梅雨明けに降る雨を『送り梅雨(おくりづゆ)』などとも称します。

日本人は古来、寒さの中に凛(りん)と咲く梅を愛でつつ春を待ちわび、雨の季節を迎え、夏の到来を知ったのです」(北野さん)

入梅の頃に旬を迎える食材は?

入梅の“行事食”といえる食べ物はありますか。

「入梅は行事ではないので、特別な祝い事に供される行事食といえるものは存在しません。ただし、入梅の頃に“梅雨の水を飲んで美味しくなる”といわれる食材が、いくつかあります。

その代表として大阪や京都など、関西地方で夏の食材として親しまれている鱧(ハモ)があります。鱧は梅雨の時季に産卵期を迎えるため、脂がのり始めて身も柔らかくなるからです」(北野さん)

魚ではほかに『入梅鰯』と呼ばれるマイワシや、『梅雨穴子』と呼ばれるアナゴに加えて、“鯛(タイ)に匹敵する”ともいわれる『梅雨いさき(イサキ)』も旬を迎えます。

入梅の頃はアジ、シマアジ、キス、スズキなども美味しくなります」(北野さん)

魚以外のおすすめの食べ物は。

「梅がらみでは、漬けた青梅を使った和菓子の琥珀羹(こはくかん)やゼリー、青梅シロップをかけた寒天やところてん、よく冷えた梅酒はおすすめといえるでしょう」(北野さん)

山葵や青紫蘇、生姜もおすすめ

梅雨の時季はジメジメとした日が続き、身体や胃腸の調子を崩しがちになったり、食欲も減退気味になったりします。食あたりも心配です。

「入梅の時節には、昔から“毒消し”といわれる食べ物がおすすめです。

先人たちは梅に加えて、山葵(ワサビ)、青紫蘇(アオジソ)、生姜(ショウガ)、青山椒(アオザンショウ)、茗荷(ミョウガ)など、自生または渡来の爽やかな香味や辛味、酸味をもった薬味を重宝してきました。

これら毒消しと呼ばれる食べ物は、解毒、殺菌、防腐、食欲増進、消化促進、整腸などの頼もしい味方になってくれました。

さらにこれらの食材は、ちょうど梅雨の時季を含む初夏から夏に、旬を迎えるものが多いのです」(北野さん)

北野さんも幼い頃、梅雨どきにお母さまから、刺身には山葵や青紫蘇、寿司には新生姜の酢漬けを添えて「毒消しに食べときや(食べておきなさいね)」と必ず言われていたそうです。

旬の魚や毒消しの薬味、爽やかな梅の味わいで、ジメジメした梅雨どきを美味しく快適に過ごしていきましょう。


参考資料
『和のしきたり 日本の暦と年中行事』(監修:新谷尚紀/日本文芸社)、『四季のことば辞典』(講談社辞典局編/講談社)、『美しい日本語の辞典』(小学館辞典編集部編/小学館)、『日本の七十二候を楽しむ―旧暦のある暮らし―』(白井明大著/東邦出版)

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