
発行部数330万部を突破した泉朝樹さんによるホラーコメディ漫画『見える子ちゃん』を中村義洋監督が実写映画化。本作で映画オリジナルキャラクターの権藤昭生を演じたのは、ドラマ『御上先生』や映画『【推しの子】-The Final Act-』、『マンガ家、堀マモル』などで注目を集めている山下幸輝さん。
ホラーコメディ作品に初挑戦した山下さんが、演じた役柄についてや自身に起きた恐怖体験、さらに最近刺激を受けたアーティストなどを語ってくれた。
映画『見える子ちゃん』で生徒会長役を演じた山下幸輝 / 撮影=三橋優美子
■“お芝居が好き”という熱量が伝わる現場でしたし「みなさんからたくさん刺激を受けました」
――本作の原作や台本を読まれた時の感想を教えていただけますか?
【山下幸輝】怖くもあり笑える場面もあっておもしろいのはもちろんですが、驚きの展開もあるので、読んでいてワクワクしました。伏線がいろいろなところに散りばめてあるのもいいなと思いました。
――山下さんが演じた権藤昭生は、原菜乃華さん演じる女子高生の主人公のみこに霊が見えていることにいち早く気づく生徒会長で、映画オリジナルのキャラクターですね。
【山下幸輝】オリジナルのキャラクターだからこそ、“どう演じようか”と考えるのはすごく楽しかったです。
【写真】学ラン姿の権藤昭生(山下幸輝)とユリア(なえなの) / (C) 2025『見える子ちゃん』製作委員会
――昭生のビジュアルやキャラクター面はどのように作っていかれましたか?
【山下幸輝】本読みの時に、監督から「昭生は昔の俳優っぽい雰囲気を醸し出していて、少しナルシストっぽくもあり、癖の強いキャラクターに見えるように演じてほしい」とリクエストをいただいたので、その言葉を軸に役作りしていきました。撮影が始まってからは、セリフの間に気をつけたり、昔の俳優さんっぽい言い回しになるように意識しながら演じていました。
――役作りの参考にご覧になったドラマや映画があれば教えていただけますか?
【山下幸輝】木村拓哉さん主演のドラマ『ロンバケ』(ロングバケーション)を観て研究しました。木村さん演じる瀬名のセリフがちょっとクサいところが新鮮でかっこいいなと感じましたし、あの役を自然に演じてらっしゃるのがすごいなとあらためて思いました。いつか瀬名のような役を演じてみたいです。
――同世代の共演者の方々とお芝居をする中で、刺激を受けた部分があれば教えてください。
【山下幸輝】原さんやハナ役の久間田琳加さん、ユリア役のなえなのさんを見ていて、“お芝居を楽しむことがいい表現に繋がるんだ”ということに気づかされました。キャストのみなさんから“お芝居が好き”という熱量が伝わる現場でしたし、みなさんからたくさん刺激を受けました。
――現場ではみなさんとどんな話で盛り上がりましたか?
【山下幸輝】雑談が多くて、お芝居の話はほとんどしなかったです。エンドロールでダンスを踊るシーンがあるのですが、僕は昔からダンスをやっているので、ダンスシーンの撮影時にみんなから「ダンスやってるんですか?」と聞かれることもありましたね。そのあともダンスの話題ですごく盛り上がったのが印象に残っています。
■ホラー映画が苦手で「“現場で心霊現象が起きたら嫌だな…”と余計な想像をしてしまって(笑)」
――中村義洋監督の『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』はとても怖いホラー映画でしたが、本作も霊が登場するシーンはとても不気味で背筋が凍りました。山下さんはホラーコメディ作品に挑戦するのは本作が初めてですよね。
【山下幸輝】初めてです。実はホラー映画が苦手なので、どんな撮影になるのかすごく不安だったんです。“現場で心霊現象が起きたら嫌だな…”と余計な想像をしてしまって(笑)。でも、いざ撮影が始まったらまったく怖いことはなく、活気溢れる明るい現場で安心しました。
――霊が登場するシーンの撮影は照明を作り込んだり特殊メイクをした霊役の俳優さんがいたり、“怖いな…”と感じる瞬間もあったのでは?
【山下幸輝】霊が登場するシーンはそんなに怖さは感じなかったのですが、文化祭でおばけ屋敷の中にいるシーンでは若干空気がスっとしていたというか、少し寒気がして怖かったです(笑)。
――怖いシーンの撮影を経験したことでホラー映画を克服できたという俳優さんもいますが、山下さんはいかがですか?
【山下幸輝】本作はホラーコメディなので、今度はホラー映画に挑戦してみたいです。ただ、ホラー作品を観るのはまだ無理かもしれません。撮影の裏側を見ていない作品はちょっと怖いので、自分が参加したホラー映画以外は観られないと思います(笑)。
――子どもの頃や学生時代に心霊系の怖い経験をしたことはありますか?
【山下幸輝】経験はないのですが、おじいちゃんが怖い話が好きで、小さい頃に怪談話をたくさん聞かされていたんです。その影響なのか、怖がりになりました。
――大人になってからも怖い体験はしていないですか?
【山下幸輝】最近ありました。事務所で一人ボイストレーニングをしていた時に、壁にかかっていた時計の針が突然ぶわーっと高速で回りはじめたんです。防音室だったので外の音がまったく聞こえず、めちゃくちゃ怖かったのですぐに部屋を出て。そのあとWILD BLUE(山下が所属するグループ)のメンバーと一緒にその部屋に戻ったら時計の針は回っていなかったので驚きましたし、すごく怖い体験でした。
――みこのように霊が見えるようになったらどうしますか?
【山下幸輝】霊が見えていることを周りの人たちにバレたくないので、みこと同じように見えても(霊を)無視すると思います。見えていることが周りにバレたら“やっぱり自分だけに見えているのか…”と実感してしまうじゃないですか。それが嫌なので全力で無視を貫きます(笑)。
――劇中ではハナに霊が近付こうとするシーンがありました。もしも霊が山下さんの友達に危害を加えようとしたらどうしますか?
【山下幸輝】ものすごく怖いですけど……本当に危ない状況だったら片手で目を隠して霊が見えないようにして、もう片方の手で全力で戦います(笑)。

■最近のお気に入りはDISH//さんの曲「いつか曲をカバーしたい」
――エンドロールはさすがのダンススキルでかっこよかったです。ダンスシーンの撮影はいかがでしたか?
【山下幸輝】ダンスっていろいろなスタイルがあるのですが、エンドロールで踊っているのはわりと昔のダンスだったんです。それでM.C.ハマー(90年代に活躍したラッパー&ミュージシャン)をはじめ90年代に流行ったアーティストのミュージックビデオやライブ映像を見て研究してから撮影に挑みました。
――M.C.ハマーが人気だった時代は山下さんの生まれるずっと前ですが、映像をご覧になってみていかがでしたか?
【山下幸輝】単純に“かっこいいな”、“おもろいな”と思いました。M.C.ハマーはダンス中に横へ移動する横歩きが話題になったそうですが、ああいう動きは意外と日本人はできないと思うんです。だからすごいなと感心しながら観ていました。マイケル・ジャクソンの映像も今回あらためて見直したのですが、マイケルのダンスは踊りやすくて、パキッとした動きがかっこよくキマるのがいいなと思いました。あれは真似したくなりますね。
――山下さんはWILD BLUEのメンバーとしても活動されていますが、最近刺激を受けたアーティストやおすすめのアーティストを教えていただけますか?
【山下幸輝】最近のお気に入りはDISH//さんの曲で、よく聞いています。なんとなく自分の声質や歌い方がバンドサウンドに合う気がしているので、いつかDISH//さんの曲をカバーできたらいいなと。ボーカルの北村匠海さんは俳優としても活躍されているので、歌の表現力が圧倒的で歌詞もスッと入ってくるんです。僕もいつか北村さんのように歌えたらいいなと思っています。
――話は変わりますが、今年の3月に最終回を迎えたドラマ『御上先生』が大変好評でした。山下さんにとっても大切な作品の一つになったかと思いますが、当時の撮影を振り返ってみて印象的だったことを教えていただけますか?
【山下幸輝】このドラマでは教科書検定やヤングケアラー、貧困といったさまざまなテーマを扱っていましたが、僕自身は冬木竜一郎という役を通して「金融」や「投資」について学ぶことができました。ビジネスプロジェクトコンクールでプレゼンするシーンはすごく演じがいがありましたし、視聴者の方からも「プレゼンシーンよかった」というコメントが上がっていてうれしかったですね。
いち視聴者としては勉強になるドラマでしたし、俳優としてはお芝居を楽しむことができた作品でした。
――今後お仕事やプライベートで挑戦してみたいことを教えていただけますか?
【山下幸輝】富士山に登ってみたいです。山登りの装備を準備する時間も楽しそうですし、ゆっくりと何日もかけて登ったら気持ちがいいだろうなぁって。富士山の山頂まで行って腕を伸ばして、「あーーーー!」と思い切り叫ぶのが今後の人生の目標の一つ。いつか実現させたいです。
映画『見える子ちゃん』の場面写真 / (C) 2025『見える子ちゃん』製作委員会
取材・文=奥村百恵
◆スタイリスト:ダヨシ
◆ヘアメイク:新地琢磨(Sui)
(C) 2025『見える子ちゃん』製作委員会
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