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コーヒーで旅する日本/九州編|コーヒーには真摯に、時に遊び心をプラスして。「リトルスタンド」のトレンドを追わない姿勢

  • 2023年5月15日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第70回は福岡市・大名にある「リトルスタンド 大名店」。店の入れ替わりが頻繁で、年々訪れる客層も変わる大名という街で、2014年から親しまれるコーヒースタンドだ。もともとは「リトルハニー」というハニー珈琲の暖簾分けのような形で開業し、その当時から店を任され、今も店主として店に立つのが野方寿倫さん。ハニー珈琲の井崎克英代表の「トレンドに惑わされることなく、自身のオリジナリティをしっかり持っている」という言葉通り、そういったスタンスだからこそ、“新しく店ができては一年足らずで閉店し”というケースが多い大名エリアで丸9年愛される店づくりができているのだろう。2021年に屋号を改め、新たなスタートを切った「リトルスタンド」の魅力に迫る。

Profile|野方寿倫(のがた・としみち)
1982(昭和57)年、福岡県福岡市生まれ。福岡市・清川にあったハニー珈琲で2005年ごろに働き始めたのがコーヒーの入口。ハニー珈琲で日々を過ごす中で、「おいしいコーヒーとは」ということを多く学んだ野方さんは真面目な性格も評価され、2014年「リトルハニー 大名店」を任される。それから一人で店を切り盛りし、コーヒー以外のオリジナルドリンクなども積極的に開発。2021年4月、屋号を「リトルスタンド」に改める。現在、大名店を野方さんが、室見店を奥さんが営んでいる。

■若者の街で丸9年
福岡市・大名の車が通れない細い路地の一角。一帯のテナントは訪れる度に変わっていることもしばしばで、「このあたりは本当に店の入れ替わりが早い」という言葉を多くの人から耳にするほどだ。そんな場所で2014年から続くコーヒースタンドが今回紹介する「リトルスタンド 大名店」。大名エリアで買い物したり、食事を楽しんだりしたことがある人なら必ず一度は目にしたことがあるはず。天気が良い日は店前のテーブルでのんびりドリンクを楽しむ人が多く、大名のとりわけこの細路地の日常の風景の一つになっている。

もともとは「リトルハニー」という屋号で7年ほど営業していたことから、そちらが馴染みが強い人も多いだろう。「リトルハニー」はハニー珈琲の暖簾分けような店で、もちろんドリンクの主役はハニー珈琲が焙煎したコーヒー。それは屋号を改めた今も変わらないが、店主の野方寿倫さんはコーヒーにプラスしてオリジナリティあふれるメニューを多く展開し、逆にそんなドリンクメニューに魅了され、ファンになったという常連も多い。
「ハニー珈琲さん直営の『リトルハニー』は博多にもあるため、そちらと混同されることもあったり。そんな経緯もあって、ハニー珈琲の井崎代表とも相談して、屋号を『リトルスタンド』に変えました。名前は変わってもやっていることは大きく変わっていませんよ」と笑う野方さん。
■コーヒーはシンプルに、ほかは自分らしさを
実際に訪れてみるとわかるが、「リトルスタンド 大名店」はとにかく小さな店だ。店に入れるのは1人がちょうどいい。2人も入ればカウンター前は身動きがとれないほどで、ゆえに利用はテイクアウトオンリー。天気が良ければ店前のテーブルやイスでドリンクを楽しんでもらうというのが基本のスタイルになっている。

そんな同店のコーヒーメニューはフレンチプレスで抽出するホットのプレスコーヒー(450円〜)、アイスプレスコーヒー(500円〜)が基本。ホット、アイスともにブレンドかシングルオリジンがセレクトできるのは、コーヒー好きにとってはうれしいポイント。ほか、エスプレッソを温かいミルクで割るコルタード(500円)、フラットホワイト(550円)、カフェラテ(550円)などエスプレッソをベースとしたドリンクも多彩に用意している。

もちろん使用しているコーヒー豆はすべてハニー珈琲のものだ。
野方さんは「僕に『おいしいコーヒーとは』ということを教えてくれたのがハニー珈琲さん。ですのでハニーさんのコーヒーには絶対的な信頼を置いていますし、抽出方法にフレンチプレスを採用しているのも、井崎さんの教えから。コーヒーに関しては僕がなにかをいじるとか、アレンジするとかいうことはあまりしたくないと思っています」と話す。
そんな野方さんはコーヒー以外のドリンクやフードに自身のオリジナリティをプラスする。その代表格が同店で人気No.1のドリンク、バリチャイ(680円)だ。

メニュー名はそのドリンクを飲んだ常連が「これ、ばりばりチャイですね」と言ったことが由来だそう。ちなみに「ばりばり」は福岡の方言で「とても」の意味。
見た目にもかわいいバリチャイは下はチャイラテ、上にチャイクリームがのるというアレンジドリンク。チャイラテには甘さを加えず、チャイクリームの方に少し加糖し、一緒に飲むと絶妙なバランスだ。最初は限定メニューだったが、あまりに好評だったことから定番化し、今では人気No.1ドリンクだそうだ。

■大名散策のお供に
野方さんのオリジナリティはドリンクのみならず、スイーツにもキラリと光る。名前もキュートなワッフルぼうや(1枚190円)は一般的にイメージするベルギーワッフルではなく、オランダ発祥の薄いタイプのストロープワッフルに分類されるもの。その見た目の薄さからライトな菓子と思いきや、食べてみると中にキャラメルシロップがサンドされていて、意外と満足感があるから驚かされる。
「ベルギーワッフルの方が浸透していますが、僕はどうも人と同じことをするのが苦手な性格で(笑)。それに個人的にもコーヒーにはストロープワッフルの方が合うと思っているんです。ワッフルは妻が店に立つ室見店で毎日手焼きしていますよ」と野方さん。
コーヒーのお供の菓子といったさりげない部分にも野方さんらしさが光るから、9年もの間トレンドに左右されず、大名という街で多くの人に愛されてきたのだろう。

大名を散策する際はぜひ「リトルスタンド」に立ち寄ってほしい。ドリンクやフードを楽しむのはもちろん、地域の情報通のような存在にもなっている野方さんとの会話もきっとおもしろいはず。大名エリアめぐりの際にふらりと訪れたい一店だ。

■野方さんレコメンドのコーヒーショップは「And Barissier」
「長崎市の浜の町アーケードそばにある『And Barissier』。店主の井手さんはもともと福岡のコーヒーショップで働かれていて、よくお客さんとして当店にも来てくれていたんです。最初は店の人とお客さんという間柄でしたが、今では僕にとって友人のようにいろいろ話せる存在。長崎市に開いた店は居心地がとても良いカフェ。おいしいコーヒーとスイーツを一緒に楽しんでほしいです」(野方さん)

【リトルスタンド 大名店のコーヒーデータ】
●焙煎機/なし
●抽出/フレンチプレス、エスプレッソマシン(LA MARZOCCO Linea)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/250グラム1944円〜




取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

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