社会人として働き始めると「自分は何のために働いているのか」疑問に思うこともあるだろう。モニターを30時間も見続けて、徹夜で足はパンパン、肩はガチガチに凝っている。残業は100時間を超えるけれど、仕事は終わらない。帰宅後セルフケアをする気力もなく、肌はボロボロ、化粧のノリは最悪。重い体を引きずって、翌日もまた同じ道を歩いている。そんな疲れた女に優しくしてくれる既婚者を描いたヤチナツ(@11yc4)さんの『20時からの報告会』より「ボロボロの自分って全然かわいくない」をお届けする。
ヤチナツさんは、現在、くらげバンチにて『女性に風俗って必要ですか？～アラサー独女の再就職先が女性向け風俗店の裏方だった件～』が人気連載中。第1巻も発売となった。また、AMで連載中の「もしも世界に『レンアイ』がなかったら」も注目が集まっている。
■仕事も恋も全然うまくいかない時、空回りしてる自分を支えてくれる人が欲しい
ナマモノの恋愛をしている人にグッと刺さるヤチナツさんの『20時からの報告会』。リアルな恋愛模様を描くことになったきっかけを聞いてみたところ「社会人2年目くらいに彼氏が欲しくて、むやみに動き回っている時に溜まったストレスの発散と、発見を共有したかったために描き始めました」と、語る。
主人公のこはるは、恋に奔放。思ったままに一直線の性格だが、新社会人の頃は珍しく弱っていた。今回が彼女の大きな挫折、ターニングポイントになったのかヤチナツさんに聞くと「あんまりそういう風には考えてませんでした…。漫画の登場人物として、というより1人の女性のこの期間にあった出来事として描いてます。ターニングポイントや挫折だとしても、彼女は忘れちゃって、いつか次の辛いことに出会う、の繰り返しだと思います」(ヤチナツさん)
仕事も恋も壁にぶち当たり、どうすることもできなくなったこはるの姿は、実にリアル。「あんまり良くないですが、新卒の女子は5人集まると3人は不倫しているので(私調べ)、ネタには事欠きませんでした。女子会で得られる情報を組み合わせて、いつもの報告会のエピソードと同じように作った話です」と、ヤチナツさん。リアル報告会をもとに創作されているあたり、人間らしい泥臭さもあり、きれいごとではない結末もある。
■仕事もうまくいかない。付き合っている人は、朝までいてくれない既婚者
就職した職場が思っていたのと違う、というのはよくある話。「21時までって言ったんじゃん」「それ終わったらデザイン案10個出して」「修正もきてるから対応してね」先輩から矢継ぎ早に指示を受ける、こはる。指示通りに仕事をこなすことで毎日手一杯の日々。もっと面白い仕事につけたらよかったのに。この仕事を好きになれたらよかったのに、今はただ「辛い」しかない。
一体、何のために働いているのか？疲労困憊の中「辞めたい」というワードが頭の中をぐるぐる回る。働く目的が見出せないから仕事が嫌なのか、それとも自分に才能がなく職場があっていないのか…辞めたい理由を探しても、うまい言葉は見つからない。そんなモヤモヤした気持ちを抱えたこはるに優しくしてくれるのが、同じ職場の駒場さんだ。
彼は仕事の愚痴を聞いてくれたり、癒やしてくれる存在。しかし、妻子持ちだった。家族が寝た後にこっそり帰宅したい駒場は、弱ったこはるの心を癒やし、適度な「温もり」を与えてくれる。数時間後に彼が自宅へ帰るとわかっていても、その場の優しさや温もりに溺れたかった。そうして、いつの間にか抜け出せない関係になってしまった。
友達には「駒場」はやめろ、と何度も注意を受けた。しかし、仕事が忙しくて出会いがない。すると「元カレとヨリを戻すのはどう？」と、アドバイスを受ける。
元カレの西永と会って現状を報告すると、説教される。現状を変えたい、どうにかしたいと思っているが、どうすればいいのか具体的な方法は誰も教えてはくれない。流されてどうにもできないこはるは、1人壁にぶち当たっていた。
その思いを駒場に伝えると「俺、もうここにはこない」と、駒場に別れを告げられる。こはるはただ、他愛のないことを話せる相手が欲しいだけ。夜、自分の居場所に戻らない人が欲しいだけ。それなのに、駒場にすがってしまう。
本作『20時過ぎの報告会』は、付き合い始めたばかりの彼に嫌われたくなくて「わがままを言えない女の子」や本音を言えず、相手を優先してしまう「考え方が2番目」など、女性の共感を集める恋愛を描いている。現在もヤチナツさんのブログで公開されているので、気になる人はぜひチェックしてみて欲しい。
■取材協力：ヤチナツ(@11yc4)
