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このアイス、なんて呼んでる?高知県発の「おっぱいアイス」が全国区になったワケ

  • 2023年1月17日
  • Walkerplus

“ゴム容器に入った楕円形のアイスクリーム”をご存知だろうか。「昔、駄菓子屋で食べていた味」と懐かしさを感じる人も多いかもしれない。最初は固まっていてなかなか出てこないのに最後は勢いよく飛び出してきて、あふれるアイスを慌てて食べた経験がある人もいると思う。

このアイスは「恐竜のたまご」「コロンブスのたまご」「たまごアイス」など、多数のメーカーからさまざまな名称で販売されており、なかでも「おっぱいアイス」とかなりインパクトのある名称で売り出しているのが、高知県にある久保田食品株式会社だ。最近では高知県民おなじみのロングセラー商品としてテレビで取り上げられたり、SNSで話題になるなど今や全国的知名度を得ているが、競合商品が多いなかでどのようにして「おっぱいアイス」を広めていったのだろうか。

今回は、高知県発のおっぱいアイスが全国でヒットした理由を探るべく、久保田食品株式会社(以下、久保田食品) 企画担当の北村智さんに、おっぱいアイスが全国区になったきっかけと高知県民に長く支持される理由を聞いた。

■平成とともに誕生!高知県民おなじみのおっぱいアイス
久保田食品は1959年に創業し、アイスの卸売りをしていた。当時はバイクで売り歩いていたという。そんななかで創業者が「自分たちでもアイスを作りたい」と思い立ち、1980年からアイスの製造を開始し、おっぱいアイスはその後に作られたそうだ。

「おっぱいアイスの起源について、残念ながら正確な資料があまり残っていないのですが、1989年(平成元年)に発売されたことはわかっています。しかし、なぜ『おっぱいアイス』というネーミングにしたのか、どのような経緯で販売に至ったのかはわかっていません」

当時は他社もこの形状のアイスを取り扱っていることから、久保田食品が元祖ではないことだけは確かなようだ。北村さんは「ルーツはわかりませんが、ゴム容器入りのアイスが安価で製造しやすかったのではないでしょうか」と推測する。

発売当初は高知県のみで販売されていたが、子供たちが気軽に買えるようにと低価格に設定したことで、高知県民の定番おやつとして浸透していった。その後、次第に販売の範囲を広げ、2000年頃から全国展開を開始し今に至る。ちなみに、食べている途中で容器が爆発して大惨事になった経験を持つ人もいるそうで、食べ方を北村さんに聞いたところ「破裂してしまうこともあるので、強く揉んだりしないでやさしく扱ってください」とのことだ。

■YouTubeやSNSで話題となり全国区に!呼び名論争も
現在、全国各地のメーカーがそれぞれの名称でゴム容器入りアイスを発売しているので、人によってイメージする商品名に違いがあるかもしれない。しかしインターネットで検索してみると、「おっぱいアイス」がゴム容器入りアイスの総称として呼ばれていることが多く、市場のなかでも突出した知名度の高さだ。ここまで広く知られることとなったきっかけは何だったのだろうか。

「20年ほど前までは高知だけで販売していたこともあり、全国的には知られていませんでした。しかしここ数年、高知県民おなじみのアイスとしてテレビでご紹介していただいたり、YouTuberの方々に取り上げていただいたことがきっかけで、SNSでもたびたび話題にあがるようになりました。そのほかいろいろなWEBメディアでおっぱいアイスの食レポ記事が配信されたりと、全国の方々に知っていただく機会が増えたのが大きかったですね。そしてこれらに関しては、ネーミングのインパクトと今のインターネット社会がかけ合わさって起こったムーブメントだと思っています」

また、SNS上では「このアイスをなんと呼ぶか」といった論争も生まれ、恐竜のたまごやたまごアイスといった声があるなかで、やはりおっぱいアイスの意見がひと際目立っている。家族や友人などに聞いてみたら、意外な回答が得られるかもしれない。

■今もたった1台の機械で製造!大量生産しない理由
誕生当初から30年以上たった今もなお、変わらない見た目で高知県を中心に根強い人気を得ているおっぱいアイスだが、実は中身については変化があったのだとか。

「昔は“ラクトアイス”という分類で製造し、価格もお子様が手に取りやすい低料金に設定して駄菓子として販売していました。発売当初はバニラ味だけではなくグレープ味や、3つつながったような形状の『アイスクリンボンボン』といったバリエーションもあったんですよ」

その後リニューアルを行い、乳脂肪分が多いアイスミルクに変更し、無添加・バニラビーンズ入りのより中身にこだわった商品へと生まれ変わった。現在はアイスミルクの分類である「おっぱいアイス ミルク」のみを販売している。そして見た目と同じく誕生当初から変化していないのが、アイスの“製造方法”だ。

「今も1台の機械だけで作っていまして、人がゴムを機械に差し込んでからアイスを注入しているので、半分手作りみたいなものですね。大量生産をしない理由としては、“お客様においしい味を変わらず提供していきたい”という思いからです。ただ留め具に関しては昔は金具でしたが、今はプラスチックになっていますね」

■「添加物不使用のシンプルな味を届けたい」
久保田食品にはおっぱいアイス以外にも数々の商品があり、なかでも楽天市場で販売されている、昔ながらのアイスを詰め合わせた「高知の昭和レトロアイスセット」が人気だ。「主に高知県出身で県外在住の方や、昨今のレトロブームをきっかけに興味を持っていただいた方がご購入くださってますね」と北村さん。ほかの商品を購入し、子供用としておっぱいアイスを購入する人もいるそうで、幅広いユーザーに愛されていることがうかがえる。

「弊社では無添加にこだわった商品づくりをしています。私たちの柱は『無添加で素材にこだわった商品』と『お子様向け』の2つです。健康を気にされる方からも『子供に安心して食べさせられる』と、幅広い年代の方から支持されています。とは言え、全国的にはまだまだブランドの知名度が高いとは言えません。より多くの方に知っていただけるよう、これからも広報活動に力を入れていきたいと思っています」

“食べた後に喉が渇かない、毎日食べても飽きないおいしさ”をコンセプトに、長く親しまれてきた久保田食品。昔食べていた人はもちろん、初めて食べる人も、その自然で素朴なおっぱいアイスの味わいに、ひと口、またひと口とやみつきになること間違いなしだ。

取材・文=中谷秋絵(にげば企画)

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