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すかいらーくが導入したネコ型ロボットが愛されている理由とは?従業員も認めた性能のスゴさに迫る

  • 2022年11月10日
  • Walkerplus

最近SNSで話題になっている「ネコ型ロボット」をご存知だろうか?これは国民的アニメに登場する青いタヌキではなく、顔がネコで胴体に複数のおぼんをつけた“配膳ロボット”だ。TwitterやInstagramでは「ファミレスに来たらネコが料理を運んできて驚いた」「動いてないとき寝てるのがかわいい」など、ロボットが料理を配膳する姿が投稿されていて、なかには万単位の“いいね”がついていることも。

ガストやジョナサンなど数々のファミリーレストランを運営するすかいらーくホールディングス(以下、すかいらーく)では、2021年7月よりネコ型ロボットの導入を開始。料理の配膳だけではなく愛らしい表情やセリフが話題となっていて、わざわざロボットを見るために来店する人もいるのだとか。

今回はすかいらーくでネコ型ロボット導入責任者を務める営業政策グループ ロボット導入責任者の花元浩昭さんに、ネコ型ロボットを導入した背景や多くの人に愛されている理由などを聞いた。

■セリフのレパートリーは30種類以上!撫ですぎると怒られる?
ネコ型ロボットの名前は「BellaBot」(ベラボット)。すかいらーくが運営するガスト・ジョナサン・しゃぶ葉・バーミヤンなどのファミレスで導入されている。すかいらーくがこのロボットを採用したのは、進化したIT技術を駆使して人々の生活をより良いものへと変えていくDX(デジタルトランスフォーメーション)化の一環だ。

「配膳ロボットを活用し、より良いサービスや従業員の働きやすい環境づくりに繋げたいと考え、店舗での実験から始めました。いろんなメーカーのロボットを試してみて、中国の企業であるPudu Roboticsが取り扱っているベラボットの性能が1番当社のサービスに合っていたため採用しました。あとは、かわいいネコのキャラクター性も大きかったです」

このネコ型ロボットは単純に料理を客席に運ぶだけではなく、「充電してにゃー!」「ご注文の料理を持ってきましたにゃん」など約30種類のセリフを話し、言葉に合わせて表情も変化する。さらに、耳やおでこを撫でると反応するのだとか。最初はご機嫌で「くすぐったいにゃ」「君の手はあったかいにゃ」「なでなでして」と笑顔で話すが、触りすぎると「しつこいにゃ」とご機嫌ななめになる。本物のネコのような性格も愛される理由の1つだ。

この珍しいネコ型ロボットを写真や動画に撮ってSNSにアップする人も多い。ガスト 西中島店ではロボットに「とんかつ」「ぷりん」と名札をつけていて、その様子をTwitterに投稿すると29万もの“いいね”がついたという。

「ベラボットは都心から順番に導入を進めています。地方の店舗に導入すると、お客様から『待ってました!』と言われることもあります。SNSやメディアにも取り上げられているので、彼らを楽しみにしている声も多くあり、とてもうれしく感じています」

ほかにもユーザーからはさまざまな反応が。とある学生5人組が来店した際、先にベラボットが3人分の料理を運び、その後に従業員が2人分を運んだところ、「え、私たちだけ人間なの?」と残念がったという。また、別の店では従業員がテーブルに料理を運ぶと、子供に「ロボットがいい!」と言われてベラボットに運び直してもらったことも。このように、べラボットはすでに従業員と同じくらい必要とされている。

■ベラボットを活用するためのプログラミングと独自の制度
ベラボットはかわいいだけではなく、もちろん優れた機能も備えている。秒速10〜120センチの間で走行スピードを変えることができるのが特徴で、遅すぎると料理が冷めてしまい、速すぎると汁物がこぼれてしまうので、実験を積み重ねてちょうどいい速度に設定しているという。また、既存のプログラムに独自のアレンジを加えたり店舗の特徴や業態ごとに設定を変えたりして、それぞれのお店で使いやすくするといった工夫がされている。

また、ベラボットには危険を察知する機能も。人や物に接触しないように3カ所につけられたセンサーで、床に落ちたゴミといった小さい障害物すらも避けることができる。客の邪魔にならないようにドリンクバーの前は通らないようにすることも可能で、人間もロボットも円滑に動けるようなプログラムが組まれている。

そしてすかいらーくが最も力を入れているのが、従業員への「インストラクター制度」だ。

「ベラボットを導入して、『はい使ってくださいね』と店に言っても最初はうまく使いこなせません。そこで使用開始時に必ず本部からインストラクターを派遣して、使い方や清掃方法などのトレーニングをするようにしています。17人のメンバーが日々全国の店舗に出向いてしっかりとフォローをしています」

すかいらーくは実証実験を何度も繰り返し、ベラボットのより良い活用方法について日々模索している。この姿勢は他社メーカーからも「ここまでやっている企業はほかに見たことがない」と言われるほどだ。この地道な努力が、べラボットが多くの人に愛されることに繋がったのだろう。このようにロボット活用に力を注ぐすかいらーくだが、実は導入当時の従業員の反応は今ひとつだったという。

「『ロボットなんて本当に役に立つの?』と半信半疑の従業員も多くいました。ベラボットは基本的に秒速60センチで動くように設定していて、これは人間のほぼ半分の速度なんです。そのため、『自分でやったほうが速い』と思う従業員もいました。それでも実際にベラボットが動いて働いているところを見ると、みんな目の色を変えてロボットを積極的に使うようになります。導入から1カ月で『ベラボットが来る前はどう働いていたか思い出せない』と言う店長もいるほどですよ」

■ベラボットの活躍で効率UP!客も従業員も快適な店を目指して
ベラボットの効果は数字にも表れている。導入前と後で比較したところ、回転率が7.5%アップ、従業員の歩行数は49%減、片付け時間は40%減となった。すかいらーくでは、2022年末までに2000店舗に3000台の導入を目標にしている。

「ベラボットの導入は人員削減が目的ではありません。作業量や回転率などの数字の改善ももちろん大事ですが、ロボットの働きで空いた時間を活用し、従業員がピークタイムの準備や清掃に時間を使えるようにすることが1番の目的です。従業員が働きやすい環境を整え、最終的にはお客様の満足度向上に繋げることを目標にしています」

さらに、大したことがない段差でもべラボットにとっては障害になるため、既存店では特殊なセメントを塗って対応したり、新店舗を作る際はロボットが走ることを前提とした店舗設計をしていく予定だ。段差をなくすことで客も従業員も、誰もが居心地の良い店内ができあがる。ベラボットは店内のバリアフリーにも一役買っているのだ。

「お客様に気持ちよく足を運んでもらいたい」というすかいらーくの思いから始まったネコ型ロボットの導入。今後世間に浸透していくであろう、べラボットの活躍から目が離せない。

取材=西脇章太(にげば企画)
文=中谷秋絵(にげば企画)

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