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味付け海苔の「味」は地域で違う?東日本は「焼き海苔」、西日本は「味付け海苔」が主流なワケ

  • 2022年8月2日
  • Walkerplus

普段、一体どんな「海苔」を食べているだろうか。おにぎりやお寿司など米を主食とする日本人にとってはすごく身近な食材で、一般的に東日本では「焼き海苔」、西日本では「味付け海苔」が主流だという。関西出身の編集部員も、“海苔”といえば味付け海苔を真っ先に思い浮かべ、子供の頃から焼き海苔を食べる機会は少なかったと話す。

しかし、ひとえに“海苔”といっても地域によって違いがあり、「焼き海苔」「味付け海苔」以外にいろんな種類があるそう。さらに海苔文化は、日本全国のどこにでもある“あの場所”にも広まっているという。

そこで今回は「白子のり」を製造している株式会社白子 経営統括部 営業推進課の村上将義さんに、海苔にある地域性について話を聞いた。

■東西で食べられる海苔が異なる理由とは?
現在のように海苔が食べられるようになったのは、江戸時代の中期。将軍に新鮮な海苔を献上するため、品川や大森を中心とする東京湾での養殖が始まり、関東に広まったことがきっかけだという。

「千葉県産の海苔は江戸時代から『上総海苔』または『江戸前海苔』として人気が高く、香りの点では全国一と言われるほどです。また、高級品は磯の風味やうま味成分がしっかりあるので、味を付けなくても素材の味だけで十分においしいんですよね。そのため、海苔の産地や発祥である東日本では『焼き海苔』が主流になっています」

一方で、西日本の海苔文化の始まりについては諸説ある。1869年(明治2年)に明治天皇が京都へ行幸される際の土産として、山本海苔店(現 株式会社 山本海苔店)が「味付け海苔」を開発したのが有力な説だという。これが今日、関西で味付け海苔が好まれている理由だ。その後、九州等で海苔の産地が生まれ、西日本の海苔文化は発展していった。

そして現在、海苔が作られている地域は大きく東日本、瀬戸内、九州の3つに分類される。なかでも九州は全国の海苔の生産量のうち、なんと60%以上も占める日本有数の一大産地。

「九州は最高級品の佐賀・福岡・熊本で作られる『有明産』をはじめ、多くの産地があります。そして当社でも『有明産』を謳った商品を数多く取り揃えています。商品パッケージをよく見ると産地が記載してありますので、一度ご覧になってみてください」

また、製造元の拠点によって売れる海苔に違いがあり、株式会社白子の場合は関東に本社があるため焼き海苔のほうが売れ行きが良いという、文化の根強さを感じられる傾向もあるそう。

■味付け海苔の“味”にも地域差が?その秘密は“醤油文化”にあり!
味付け海苔といえばどんな“味”を思い浮かべるだろうか。「いや、味付け海苔は味付け海苔でしょ?」と思うかもしれないが、もしかするとあなたがいつも食べている味付け海苔は、その地域でしか売られていない可能性もあるのだ。

「味の種類は、主に各地域の『醤油文化』に由来しています。例えば北海道では『はぼまい昆布醤油』を使った味付け海苔がありますね。ちなみに当社でも『はぼまい昆布しょうゆ味のり』を全国で販売していますが、購入されるのは北海道の方がほとんどなので、実質エリア限定の商品となってしまっています(笑)」

ほかにも、以前ブームを巻き起こした九州発祥の『あごだし醤油』を使ったものや、株式会社白子の商品ではないが、広島では名産である『牡蠣醤油』を使用した味付け海苔もあるんだとか。

「関西は味付け海苔の文化が盛んでして、いろんな地域の味付け海苔が食べられているという少し特殊な文化があります。さらに地域だけに留まらずメーカーによっても味に違いがあって、当社では『白子味のり』という独自の海苔があります」

海苔の産地である地域は新鮮な海苔が採れるため、焼き海苔の文化が根強いが、その一方で味付け海苔の文化も発達し、親しまれている。ちなみに昔販売されていた味付け海苔は、上質ではない焼き海苔に味を付けた商品が多かったが、最近では質に関係なく味付けされているものが多いという。

そしてこうした海苔文化は、誰もががよく知る“あの場所”にも波及しているのだ。

■海苔文化はコンビニおにぎりにも!
コンビニに売っている「手巻きおにぎり」。米と海苔の間が包装フィルムで仕切られており、食べる際には湿気がなくパリッとした食感が楽しめる。そんなコンビニの定番商品だが、実はここにも地域性が反映されているという。

「焼き海苔が主流の東日本ではコンビニのおにぎりの海苔に味が付いていないことがほとんどですが、西日本では味が付いていることが多いですね。なので触った時はちょっとベタっとしますが…(笑)。ぜひ一度、ご自宅の近くにあるコンビニのおにぎりを買って確かめてみてください。三重県など東西の境目に住んでいる人であれば、それでどちらに分類されているかが判明すると思います」

またコンビニでは、海苔がしっとりとしている「直巻きのおにぎり」も販売されているが、手巻きと直巻きに使用される海苔にはそれぞれ違いがあるのだ。

「『手巻きおにぎり』に使用されるようなパリッとした海苔は、主に『有明産』が使用されています。しかし海苔自体は柔らかいので湿気に弱く、直巻きにすると破れてしまうことがあります。逆に千葉県産や伊勢志摩産、瀬戸内海産などの海苔は湿気に強く、適度な硬さがあり破れにくいので、『直巻きおにぎり』にぴったりなんです」

■家飲み需要で「韓国海苔」が大人気に!?
海苔といえば国産だけでなく、おつまみとしても好まれる「韓国海苔」を忘れてはいけない。塩とゴマ油の相性がとても良く、単品でも十分に楽しめるのが大きな魅力だが、コロナ禍による家飲み需要の増加で売上が大きく伸長したそう。しかしメーカーの間では、毎年韓国海苔をめぐってある熾烈な競争が行われているのだとか。

「韓国と日本には輸入割当がありまして、韓国海苔も毎年輸入できる枠が決まっています。近年、少しずつ枠が増えているのですが、前年に追加で輸入する際は大人気でいつも抽選になります。40社ほど応募して当選するのはわずか3社ほどという、まさに激戦区。ちなみに当社が前回当選したのは3年前です(笑)」

ちなみに卓上タイプの味付け海苔も、以前から毎度包装を開けなくても食べられる手軽さで人気があったが、家飲み需要によってこちらも売上が増加しているそうだ。

「小さい頃に食べていた海苔を大人になっても食べている人が多く、ほかの地域のものはなかなか食べる機会がないみたいです。一方で、卓上海苔や韓国海苔のように地域関係なく、ある種スナック感覚で食べられる商品が増えてきました」

今や地域限定の商品もECサイトで販売されるようになり、いつどこにいても食べたい海苔が簡単に手に入る時代になった。これを機に、一度あなたの出身地域以外の海苔も食べてみてはいかがだろうか。身近な食材だけに、新たな味がより新鮮に感じられるかもしれない。

取材・文=西脇章太

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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