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非常食の定番「カンパン」の起源は奈良時代にアリ?ヒットの理由を聞いてみた

  • 2022年5月24日
  • Walkerplus

予期せぬ災害がいつどこで発生してもおかしくない今、もしもの時に備えて非常食を常備している人も多いはず。長期保存ができる定番の缶詰やインスタント食品に加え、忘れてはいけないのが「カンパン」。やさしい甘さと口どけの良い食感、そして何より種類によっては5年間も保存がきく利便性の高さもあって、昔から非常食の定番となっている。

今回は発売から85年を数えるカンパンについて、ロングセラー商品となった理由や非常食としての魅力などを発売元の三立製菓株式会社 望月沙枝子さんに聞いた。

■カンパンの歴史は“奈良時代のインスタント食品”?
カンパンの起源を紐解くと、その歴史は奈良時代にまでさかのぼる。当時、普段の食事とは別に、調理せずに食べられる「乾飯」(ほしい)が登場。これは蒸したお米を乾燥させたものにお湯を注ぐだけで食べられ、つまり現在のインスタント食品とも言える。後に携帯用食品として普及し、江戸後期頃にはパンを焼いたカンパンに近い状態になっていたという。

そのなかで、当時は金平糖の製造をしていた三立製菓株式会社がカンパンを手掛けるようになったのは、会社からの発案ではなかったそう。

「カンパンの製造をスタートさせたのは、軍からの指令が最初です。当社のほかにも製造を引き受けた企業もありましたが、指令を受ける前からカンパン製造の技術を整え製造に取り掛かっていたので、いち早く合格し軍に納品したと聞いています」

幸先のいいスタートを切った三立製菓株式会社のカンパンは、戦後復興の波に乗り、順調に生産を伸ばしていった。

■最初のヒットはカンパンではなく、今も愛されるあのお菓子
発売から順調に売上を伸ばしていたカンパンだが、実は時代を反映するような大ヒット商品ではなかった。息が長く、少しずつ世間に知られるようになった、言わば数年かけてヒットチャートに登場した山下達郎の「クリスマス・イブ」(1983年にリリースされ、1988年から毎年ヒットチャートに登場する)のような存在だ。では、三立製菓にとっての最初のヒット商品とは何だったのか。

「1965年に発売された『源氏パイ』です。当時はまだ洋風のパイに馴染みのない時代で、日本の方により親しみをもっていただくため和風の名前をつけました。『パイ自体を初めて食べたのがこの商品だった』という方もたくさんいらっしゃったほどです」

ちなみに、その前年の1964年には今も人気が高い「チョコバット」が発売されている。こちらも数年をかけて子供たちの間で徐々に知られていき、今では定番お菓子に仲間入りを果たしたロングセラー商品だ。

■“揺るぎない味”がヒットの秘密!
時代が求める味はどんどん変化していく。さまざまな食品メーカーの話によると、時代を追うごとに“濃い味”が求められるようになっているため、食感を強めて食べ応えを加えたり、塩味や甘味などを際立たせたりしながら時代に合わしていくのが必要になるという。やはり、カンパンも時代ごとに味わいは変化しているのか?

「基本的な配合は変わらず、時代に合わせて食感や風味を改良しています。世代が上の人にとっては変わらないおいしさで、若い世代にとってはやさしい味わいを感じていただけると思いますね」

基本的な味わいを変えないことが、世代を越えたヒットの理由。偶然か必然か、徐々にファンを増やしてきたからこそ成し得た結果だと言えるだろう。

■楽しみ方は無限大!まさかのアレンジレシピも充実
1972年には長期保存ができる缶入りタイプが登場し、非常食としても注目を集めたカンパン。とはいえ、望月さんは「今も非常食ではなく日常で楽しむお菓子としての需要のほうが高い」と話す。

「シェアで言うと、日頃のおやつとして楽しむお客様のシェアのほうが大きいですね。よく『味気がない』と言われますが、実際に食べてみるとほのかな甘みと香ばしいゴマの風味がとてもおいしい。小さなお子様からご高齢の方まで幅広く食べていただける味だと思います」

また、もしもの時にも役立つアレンジレシピも数多い。ケチャップやマヨネーズにディップしてもよし、サバ缶に乗せて食べるもよし、レトルトカレーに合わせるもよしで、やさしい味わいであるため、どの食材にも合わせやすい。

筆者もこの話を聞いて、いろいろな食べ方を試してみた。基本的に洋食であればなんでも合うが、意外だったのがレトルトのお粥。不思議とクリーミーな甘さがふんわりと口に広がり、とろみも増して新たなおいしさに気づくことができた。ぜひお試しあれ。

“もしも”の時だけではなく、“いつも”の時にも愛されているカンパン。望月さんは今後の展開について、「小さなお子様にも楽しんでいただけるように、かわいい形をした商品も検討中です」と話してくれた。今後もやさしい味を変えることなく、世代を越えて愛されていくのだろう。

取材・文=橋本未来

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