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【漫画】お父さんは感情を押し殺して今日も頑張っている。欲求を可視化した「ヨッキューくん」に共感多数

  • 2022年4月18日
  • Walkerplus

人間のさまざまな“欲求”を可視化した漫画「ヨッキューくん」をInstagramで配信しているigaryonさん(@igaryon)。ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION 2019優秀賞など受賞歴のあるigaryonさんは、東京藝術大学 美術学部デザイン科卒。同大学の修了作品として誕生したのが「ヨッキューくん」で、卒業後も話の続きを更新し続けている。

欲求が目に見えることで、人は日々どれだけのことを考えているのか、改めて実感させられる内容で、ファンも増え続けている。今回はigaryonさんにインタビューし、「ヨッキューくん」が生まれたきっかけやこだわり、今後の目標などを聞いてみた。

■人によって欲求の優先度はバラバラ
――igaryonさんが漫画「ヨッキューくん」をInstagramに投稿し始めたきっかけを教えてください。

「2021年1月、東京藝術大学の修了制作展で発表したと同時に、Instagramに投稿しました。制作に取り掛かり始めた2020年4月頃は、展示が行われる2021年1月頃にはコロナウイルスによってどこまで世界が閉鎖的な環境になってしまうのか予想がつかなかったので、最初からネットでも発表しやすい平面作品を作ろうと決めていました。最悪展示が開催されずともダメージは少ないかなと。なので、2021年1月に何か作品を投稿することだけは決めていて、漫画ではない可能性もありました」

――「ヨッキューくん」はどのように誕生したのでしょうか?

「はじめは趣味として漫画を描いてみようと思いました。本当はバトル漫画を描きたかったのですがうまくいかず、特にキャラクター達に目的を持たせることに苦戦しました。どういう時に人は人を殴りたくなるのか?とか考えるために、毎日心理学について調べていました。そこで人の欲求について独自に言語化・細分化している学者達の記事に出会いました。デザインを考えていく上でも役に立つと思い、デザインと人の欲求の密接性を伝える作品を漫画で表現しようとなり、これまで学んだことの集大成になる作品が思いついた瞬間でした。漫画の話を進行していくキャラクターを欲求そのものにすることで、自然と目的が明快なキャラクターだらけの状況になってくれるので、個人的に苦手だった部分が解消され、物語も一気に描きやすくなりました」

――漫画を描くにあたって、こだわりや気を付けていることなどはありますか?

「大袈裟かもしれませんが、前提として僕の作品は誰かにとって精神的な支えになれたらいいなと思って制作しています。また人によって欲求の優先順位はバラバラだと思うので、誰かを否定してしまわぬよう、全ての欲求が対等の立場にいるという設定を崩さないようにしています。なので、作中では常に欲求達全員が自分が一番正しいと主張しています」

■人の数だけ「ヨッキューくん」がある
――「ヨッキューくん」の中でもigaryonさんが特に気に入っているものや、反響が大きかったお話はなんでしょうか?

「八話のお父さんの話『一日の終わり』が圧倒的に一番人気です。作者としても、描く前のイメージ段階から自信があった話なので、多くの方々に共感してもらえてとても光栄でした。絵面のインパクトと、いろいろな感情を押し殺して親としての責任を全うするお父さんの姿に共感を得られたのかと思います。また、六話の素潜りの話も好評です。裏話をすると、この話は一話のテスト前夜の話を描いた直後に絵柄の練習をするために生まれた話なんです。限られた時間の中でできるだけ多くの話を描き上げたいという強い思いがあり、海の中を描写していく作業を通して、『ヨッキューくん』の世界における描画表現のルールを確立させました」

――今後、「ヨッキューくん」をどのような作品にしていきたいかなど目標はありますか?

「いつか、さまざまな立場の人に『ヨッキューくん』の原作者になっていただけたらいいなと思っています。僕は『ヨッキューくん』をただ面白いだけじゃなく、教材的価値も持つ漫画にしたい。人の欲求についてできるだけ網羅的に描きたいですね。そうなってくると僕一人で描くには無理があり、例えばコンビニの店員さんはどんなことがストレスなのか、スポーツ選手は日々何を思っているのか、金持ちの家の子のコンプレックスって何なのか、分からないことが多すぎるのです。でも『ヨッキューくん』の設定はそれらを全て視覚化できる可能性を持っていて、さまざまな立場の人の一喜一憂、欲求を伝えることができるはずです」

――最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

「『ヨッキューくん』を読んでくださっているみなさま、いつも本当にありがとうございます。投稿頻度も低いし、話作りも素人で、絵には密度もない。自分で見ても悪いところだらけな未熟な漫画ですが、何か魅力を見出し、僕のアカウントをフォローしてくださっているみなさまには、頭が上がりません。2021年秋に『ヨッキューくん』の制作を再開してからは、人と会う時間、遊ぶ時間を可能な限り削り、デザイン業務以外の時間のほとんどを『ヨッキューくん』制作に費やしています。漫画作りと向き合っている時間こそが財産になると思って、今は続けられています。いつか本業のほうで培っている技術も踏襲させ、みなさまをもっと楽しませられるような作品を作りたいです。もしよろしければ、これからも応援していただけたら幸いです」

今後「ヨッキューくん」がどのように展開し、世界が広がっていくのか楽しみだ。

取材・文=重藤歩美(ウォーカープラス編集部)

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