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「東京2020オリンピック・パラリンピック」をサポートしたヤマトHD、大会物流を通じて荷物の紛失は「ゼロ」

  • 2021年11月1日
  • Walkerplus

東京2020オリンピック・パラリンピックを支えたパートナー企業の“知られざる裏側”を紹介する特集『THE BACKGROUND TOKYO2020』。今回は東京2020オフィシャル荷物輸送サービスパートナーとしてサポートしたヤマトホールディングス(以下:ヤマトHD)を紹介。同社の東京オリンピック・パラリンピック推進室長、小林一夫氏に大会でどのような取り組みをしていたのか、どういったことに苦労したのか、話を聞いた。

東京2020オリンピック・パラリンピックをサポートした目的を小林さんに聞くと「我々ヤマトグループは、社会的インフラを担う企業として、これまで培ってきた物流ノウハウを活かし、安心・安全な大会物流に貢献し、企業ブランド価値向上につなげることが『スポンサーシップ』の重要な意義であったと考えています」と語る。

ヤマトは「宅急便」という広く知られたサービスを提供しているため、総合物流企業と言いながらも宅配便の会社というイメージが強いが、決して「宅急便」だけではないということを、このオリンピック・パラリンピックを通じて広く社会へ発信したいと考えたという。「大会物流を担い、“スポーツを通じて心身共に調和のとれた若者を育成すること、異なる国や地域の人と交流することで、互いを尊重し、偏見をなくすこと、スポーツを通じて世界平和を構築すること”という、オリンピズム(オリンピックの理念)に貢献したいと考え、参画いたしました。こういった大きなイベントで、『宅急便』という単独のサービスではなく、全体をコーディネートし、物流をトータル支援する担い手として参画するのは初めてのことでした」と小林さん。

これまでのロンドン大会、リオ大会など限られたエリアで開催された大会とは異なり、42カ所に点在する競技会場に分散し、複雑かつ、高度なロジスティクスが求められた東京2020オリンピック・パラリンピック。ヤマトHDは、大会に不可欠な機材、選手に必要な物品や手荷物などを大切に、正確に、そして円滑に運ぶ仕事を成し遂げた。「当社は、東京2020オリンピック・パラリンピックの荷物輸送サービスのオフィシャルパートナーとして、トラック事業社58社など、多くのパートナー企業の力をお借りしながら、大会運営に必要な物流全般を担いました。海外からの輸入される多くの物品の通関作業や、倉庫での物品保管、倉庫から全会場への競技器具の輸送と搬入出、備品・什器の設置、選手村の村内物流や空港から選手村、選手村から練習会場や本会場への選手の荷物配送まで、東京2020大会におけるサプライチェーンをトータルで支援し、選手および関係者の広範囲な物流ニーズにしっかりと応えることができたと考えています。」と大会を振り返った。「また、当社換算ですが、選手の手荷物は約10万1000個、競技物品は10トントラック換算で約1100台分、表彰台は全518ピース…など、大会を通して多くの物品を取り扱いました。車両台数は約1万1000台、社員とパートナー企業から約7700名の力を結集し、大会期間中の物流設計と実行を安心・安全に完遂できたと自負しています(※数字はヤマトHD調べ)」

今大会はコロナ禍での開催ということで華美なものを排除し、簡素化することとなった。大会の1年延長や無観客開催に伴うコスト削減、新型コロナ感染症対策を講じたオペレーションの両立など、大会運営は前例のないものに。
「このような条件下、安心・安全を遵守しながら全体最適による効率的な物流を実現するため、デジタルの力をフル活用いたしました。具体的には、まず計画フェーズにおいて、会場別・関係者別の物流ニーズを全て集約、独自に開発したシステムを用いて、物流設計をデジタルデータで可視化しました。可視化したデータに当社の物流ノウハウも加味して、大会関係者とワンチームとなり計画を立案。最も効率的な物流計画を緻密に設計しました。また、大会期間中は、リアルタイムで作業進捗が把握できる仕組みを導入し、パートナー企業を含む全ての関係者が、同一の情報をもとに対応できる体制を構築することで、迅速な情報共有を図り、大会物流を完遂することができました」とデジタル技術を用いながら、常にリスクを想定し、関係者とワンチームとなって対応できたことが大きな成功につながったと振り返る。

しかし、直前までオリンピック中止論などがあり、緻密に作り上げた物流計画が崩れてしまうということはなかったのだろうか。小林さんは、コロナ禍により新たな業務が追加され、柔軟な対応が求められたのは事実だったという。例えば「通常、入国される選手は、事前合宿をするホストタウンに受け入れられるのですが、今回は防疫上の措置として、各チームが入国をギリギリのタイミングに設定したため、ピーク時には膨大な数になった選手の荷物を羽田空港・成田空港で一気に迎え入れ、配送しなければならなくなりました。しかもこれらの情報は各国選手入国の5日前に知らされることになりました。オペレーションを3日で設計するという緊急対応にはなりましたが、結果的にはしっかりと請け負えたと思っています」

そんな過密スケジュールでの作業の中でも、励みになる言葉も聞こえてきたという。「過去の大会を知る方から、競技備品や選手の携行品については『今大会、日本国内では紛失したものが全くなかった』『安心・安全な物流』『さすがヤマトさん』と嬉しい言葉を頂戴しました」と小林さんの頬が緩む。

大会期間中のニュースで、「クロネコヤマト」のユニホーム姿のスタッフが「無駄のない動きで手際良く表彰台の設営をしている」という様子が取り上げられ、話題になった。今大会のためにテキパキと動くための特別な訓練などはあったのだろうか。小林さんによると「オフィス移転サービスなど、引っ越し事業を手掛けていたヤマトホームコンビニエンスというグループ会社は物品を運んだり移動させたりということに長けています。業務で培った日頃の“鍛錬”が結果に表れたのだと思います。報道された『クロネコヤマト』のユニホーム姿のスタッフは、ヤマトの正社員です。主に宅急便事業に携わっている全国のスタッフを動員し、それぞれの会場に配置しました。彼らは、ヤマトホームコンビニエンスのリーダーの指示のもと、実に迅速に動いてくれました。なかには、自ら挙手して応援にきてくれたスタッフもいました。なお、それでも人材が不足する場所では、外部からの派遣社員にご協力をいただきました」と日々の仕事で培った丁寧な仕事があったからこそだと語る。

ヤマトHDは、2015年8月に東京2020大会のスポンサーおよびコントラクターに決定し、機運醸成に向けて、2019年6月14日から9月8日までの期間「応援メッセージ募集キャンペーン」を展開。
これは、「2020年の東京を、応援であふれるTOKYOにしよう」を合言葉にしたキャンペーンで、日本全国の小・中学生から東京2020大会に参加するアスリートへ、応援メッセージを募集するというもの。当初の予想を大きく超え、なんと約14万点ものメッセージが集まったという。夏休みの課題として取り組んだ学校もあったようだ。「このキャンペーンでは、約14万点ものメッセージから14作品を選定しましたが、その作業量は想定以上でした。でも齋藤孝氏(明治大学教授)や寺川綾氏(スポーツキャスター)といった審査員の皆さんのご尽力によって、金・銀・銅賞が選ばれました。そして応援メッセージは、英文にも翻訳されて、710台のトラックや、2000台の集配台車に掲出され、東京の街を走り回りました。多くの方にご覧いただけたと思います」

この応援メッセージは、晴海選手村内の荷受けカウンターにも掲出され、大会期間中に同カウンターを訪れた3000名近くの世界中のアスリートたちの目に留まった。そして、多くのアスリートが、日本の子供たちへお返しのメッセージを書き込んでくれるというサプライズもあったという。「アスリートには、選手村にいる間リラックスしていただきたいと考え、荷受けカウンター内にフォトスポットを作ったり、スタッフが手作りの折り紙をプレゼントしたり、楽しい空間を演出できたと思います。心を込めてキャンペーンに応募して下さった子供たち、そして東京2020大会に集ったアスリートの皆さま、本当にありがとうございました」まさに、サポートする企業、大会に参加するアスリート、応援する人たちが一つに繋がったエピソードである。

今大会には約2000名の社員が関わった。社員からは「こういった貴重な経験を自分の職場で生かしたい」「オリンピックを通じて、異国の方々と交流でき、異なる考え方を知ることができた」「さらなるサービス向上につなげたい」「一生に1度のことなので、この会社に入って良かった」といった声が寄せられているという。総合“物流”企業として“物”を運ぶだけでなく、送る人、受け取る人、そしてそれをつなげる人の“想い”を運ぶ、新しい“交流”を創り出す企業として、ヤマトHDが改めて認知された大会になったといえるだろう。


素材提供:ヤマトホールディングス

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