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「闇落ち」したトマトが人気者に!誕生の舞台裏とおいしいトマトの見分け方を紹介

  • 2021年10月13日
  • Walkerplus

一見すると、怖い見た目だが実はとっても甘くておいしい、「闇落ちトマト」がSNSで大きな話題に。仕掛け人は、新潟県にあるフルーツトマト専門の「SOGA FARM(曽我農園)」の代表・曽我新一さん。コロナ禍の逆境を乗り越えるため、あえて厳しい環境で育てた新ブランド「越冬フルーツトマト」を打ち出し売り上げを回復させるも、一定数生まれる見た目が悪く規格外品として市場に出せないトマトたち。これを救うため、ユニークな名称で打ち出すやいなや一気に人気トマトに。今回は、この「闇落ちトマト」の舞台裏、そしてこれからの秋トマトのシーズンに向けておいしいトマトの見分け方をプロに教えてもらった。

■見た目が悪くても、おいしく食べられる。新潟の冬を越し、甘さを極めたフルーツトマト
――「闇落ちトマト」は、どういったきっかけで生まれたのでしょうか?

「私たちの農園では、今年から『越冬フルーツトマト』という新しいブランドでフルーツトマトを販売していて。これというのが、コロナ渦で出荷数も減り難しい状況になった時に、なんとかしなければと地元・新潟にゆかりのあるデザイナーさんに依頼してリブランディングしたトマトになります。品種等は、これまで作ってきたトマトと同じなんですけど、今まで以上においしくするためにより過酷なストレスを与えて非常に甘くなるように育てているんですね」

――ストレスが加わると甘くなるのですね。

「そうなんです。水分を吸わせずにストレスをかけて甘くしていることに加えて、文字通り『冬を越して』甘さを極めているんです。新潟の立地を生かして、本来はトマトに向かない冬の厳しい寒さの中でギリギリの生育温度を保ちながら育てているので、ぎっしりと実の詰まったトマトになります。しかし、そうして負荷をかけると、どうしても表面の一部が黒く変色した『尻腐れ』といわれる規格外品が出てきます。今まではジュースやケチャップといった加工品の原料にしていたのですが、コロナ禍であまりに多くのトマトが残ってしまい在庫を抱えるわけにもいかず、そのまま生で売ってみたのがきっかけです」

――ネーミングはどういった由来で?

「その見た目から、並外れた素質があるのにダークサイドに落ちた『スター・ウォーズ』のアナキン・スカイウォーカーにちなんで名付けてみました。すると、SNSで想像を超えるほどの反響をいただいて。自社の直売所のみでの販売だったのですがたくさん方々に買っていただけて。対応しきれないほどのお問い合わせもいただけたほどの好評となりました」

――ネーミングのユニークさだけでなく、フードロスの観点でも素敵なアイディアですね。黒くなっていても、味には変わりがないのでしょうか?

「水を与えないことで生育に必要なカルシウムが吸えなくなり、黒いかさぶたのような見た目になるのですが、腐っているわけではないので切り落としていただければ美味しく食べていただけます。味も作っているほかのトマトと同等の甘さか、それ以上の甘さになるものもありますよ」

――冬を越して春にシーズンを迎える「越冬フルーツトマト」と「闇落ちトマト」は、現在は販売終了となっていますが、これを使ったジュースなどは購入できるのですね。

「『越冬フルーツトマト』『闇落ちトマト』は来年の5月頃にまた販売できたらと思っていますが、加工品は通年で販売しています。ケチャップの原料も同じフルーツトマトになるので、普通のケチャップとは一線を隠すほどの旨味と甘味が強いのが特徴です。また、ジュースもフルーツトマト100%で、塩分も保存料も使っていないのでとても甘いジュースになっているので、次のシーズンまではこれらの加工品でぜひ味わってみていただきたいですね」

――「闇落ちトマト」のほかにも、面白い形のトマトもSNSで日々発信されていますよね。

「味には変わりはないんだけど、どうしても普通のルートの出荷では取り扱ってもらえないものが一定数出てくるんですよね。今まではできるだけ直売所で販売していたんですけど、限界があったのでこれからはネットでも販売していけるのかどうかを試行錯誤しているところです。スーパーには並んでいませんが、こういう変わった形の野菜もたくさんあって、破棄しなければならないこともあると知っていただけるひとつのきっかけになればという思いもあります」

――また、奥様がインスタグラムでトマトをまるごと美味しく味わえるレシピを公開されていますが、おすすめの食べ方は?

「フルーツトマトは、味が凝縮して甘いのでそのまま生で食べていただくのが一番です。より楽しんでいただくとすると、オリーブオイルとモッツアレラチーズにバジルを加えたカプレーゼがおすすめですね。春のシーズンが終わってスーパーなどに並ぶトマトは、味が薄いものが多いのですが、塩昆布やポン酢、ごま油など塩分のあるものと一緒に食べていただくとおいしくいただけます。トマトの状態に合わせて、ひと工夫いただくだけでおいしさが際立つと思います。ちなみに、生で食べるより加熱した方がリコピンの吸収率が高くなるといわれています。越冬トマトは糖質が高く、非常に赤くなるのでリコピンの量も普通のトマトより多くなっています」

――これからトマトの秋シーズンを迎えますが、おいしいトマトはどうやって見分けるとよいですか?

「まず、トマトは夏野菜のイメージがあるかと思いますが、おいしくなる時期は春の4〜6月、そしてこれからの秋の11月・12月なんですね。温度差が大きいほど、ストレスがかかりおいしくなる条件が整うからです。見分け方としては、持っていただいた時に小ぶりなのに重いものが、密度が高い証拠なのでおいしいトマトといえます。大きい方がよいと思われがちですが、大きいとそれだけゼリー状の水気が多くて糖度が低くなるからです。あとは品種にもよりますが、スターマークというお尻の方から放射状の筋が出ているものはおいしくいトマトです。維管束という組織がストレスによって細分化してスジに見えるので、より負荷がかかった甘いトマトであることが多いですよ」

――非常にためになる知識をありがとうございます!最後に、曽我農園さんとして今後の展望についてお聞かせください。

「大前提として、お客様に喜んでいただけるおいしいトマトを作るという品質面をしっかりと落とさず高めていきたいです。その上で、今後は『闇落ちトマト』などの規格外品を直売所だけではなく、インターネット販売でも楽しんでいただけるように挑戦していきたいなと。現在は生産者というよりも経営者として若い世代に任せているので、就農率が減ってきている中でクオリティを落とさず技術を移転して、しっかりと収益の上がる農業をつくっていきたいという思いもあります。また、農福連携として障がいを持った方々に収穫に携わっていただく取り組みなども続けていきたいです。そして、海外への輸出にも挑戦していきたいなと思っています」

――新潟から海を越え、国外にフルーツトマトを。

「香港であったりシンガポール、フランス、ドイツにアメリカのセレブ層などへの輸出にチャレンジしていたのですが、新型コロナ渦の影響もありうまくいかず…。海外は日本と違って、トマトを生で食べる文化があまりなく日本独特の作り方で甘くしたフルーツトマトは珍しいので、これをつかったジュースや加工品も含めて価値をしっかりと伝えていきたいです。なにより、うちの若手や障がいを持った方々に関わっていただいた自慢のトマトが、世界で活躍してもらえたらうれしいなと思います」

取材・文=大西健斗

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